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冬の雨

その後どう家に帰ったかは定かではないが、気づいたら家の門の前に立っていた。

土砂降りでぬれた制服のワイシャツが肌に張り付く不快感も

感覚もないほど冷えたからだも

もうどうでもよかった。

頭は彼女に拒絶されたことへのショックで何も考えられなかった。

様々な感情が混在して、“彼女”に置いて行かれた時の気持ち、とは全く異なる絶望が僕の周りを覆っていた。

玄関の前で家に入らず、何も考えず、小一時間ただただ立ち尽くしていた。

すると玄関の扉が急に開いた。そこには僕の帰りを心配した母親が驚いた顔で立っていた。

母親は僕を家に入れ、風呂に入るように促した。

温かいシャワーを浴びると冷えた体がじんわりと温められるのを感じた。そして湯船に入ると、寒さからの解放と心地よさが心を少しだけ楽にしてくれる。

だが身体の反応が誤魔化してくれていたついさっきの出来事を思い出してしまう。

頭には彼女との最悪な最後が何度も何度も思い出される。

もう何もわからない。

彼女のことを両親にも話すことができず、疲弊した体をベットに預けた時、不意に涙が溢れた。

こぼれ出した感情を止められず、誰にも声を聴かれないように枕に頭を埋めて、泣き叫ぶ。

そうしているうちにいつのまにか眠りについていた。

 だるい体を起こし、時計の針を見ると朝の4時だった。寝ている両親を起こさないように、静かにリビングに出ると外には太陽が出ていない青白い空が広がっていた。

冷蔵庫のコーヒーと牛乳を適当に混ぜベランダに出る。カフェインで少し覚醒した頭で昨日のことを冷静に考える。彼女の言った僕の反応とは取り乱した姿のことだろうか。彼女と会えなくなることを悲しむよりも失うことへの恐怖があったと思いだす。失うとはどういうことなのだろうか、僕は彼女にとって仲のいい友人であり、会えなくなることで彼女と連絡を取ることはできるはずだ。なぜ僕は失うと考えたのだろう、彼女はよく言っていた“君は子供だと” 。

僕はいつの間にか彼女へ自分の意思決定を任せていたかのように思う。志望校や生き方など自分の道を自分で決めるのが大人ならば、僕は確かに子供なのだろう。そこまで考えたところで父親が起きて、ベランダに来た。

父親「早いな翔、昨日母さんから聞いたが何かあったのか。」

進藤「少しね、父さんは大人って何だと思う?」

父親「大人か…、オレが思うに大人っていうのは理想も現実も両方知っている人間だな。」

進藤「どういうこと?」

父親「例えば、俺は子供の頃消防士になりたかった、だが消防士には出動のたびに命をかける仕事だ。

その頃、彼女つまり今の母さんとの未来を考えた時サラリーマンになることを決めたんだ。つまり夢にも理想と現実があって、それをちゃんと理解している人間が大人だってことだ。現実に基づいて、未来を考えられるようになることが大事だぞ。」

父はそういうと寒い寒いと言いながら部屋に戻っていった。

僕と彼女は子供と大人、ただ一緒に決まった時間に話す友人同士であったはずだ。なのに彼女との関係を見間違えたから彼女は去って行ったのだろうと今更分かった。

僕は彼女に依存していたのだ。

その時、空では太陽が顔を覗かせていた。

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