別れ
僕は大学受験に向けて、本格的に準備を始めることとなった。第一志望の大学はかなさんと同じ大学にすることにした。この頃の僕はかなさんに惹かれてはいたが恋愛感情などの類ではなく、尊敬や恩義やあこがれや肉欲といったどちらかというと依存的なものであったのだと思う。今思えば、彼女はそういったことを察していたように、僕の依存的な言葉、例えるならなりたいものや好きなものや好きなタイプなどの発言に対してはのらりくらり躱されていた。
忘れもしない、2022年の11月31日、世間はハロウィンでにぎわっており、コスプレをした男女やけだるそうにとりあえずつけている店員など浮かれた雰囲気だった。そんな雰囲気に僕も当てられたのか、彼女がコスプレしてる姿を見ようと駅前のコンビニに入った。だがそこにかなさんの姿はなく、少しがっかりしながらもいつもの時間になるまで図書館で勉強した。
いつもより早めに公園に着き、温かいカフェオレを買い、いつものベンチに向かった。いつも遅れてくるはずの彼女が先にベンチでタバコを吸っていた。
進藤「早いですね、かなさん。」
香奈「少しいろいろあってね。」
進藤「何かあったんですか?僕にできることがあれば何でも相談してください。」
といつもと異なる彼女の姿に心配を隠しきれず、少し声が大きくなる。
香奈「君のほうが忙しいだろ、子供は目の前のことに集中するものだよ。」
進藤「また子ども扱いですか、あと二年もすれば20歳なんですけど。」
香奈「年を取れば大人になれるわけじゃないんだよ、君も、私も、おそらく人はみんな。」
香奈「君とはもう一年の付き合いだし、君にとって不義理なことをするつもりはないから伝えておこう。
私は明日からここには来られない。」
何を言われたか理解できず、言葉が出てこない。なぜ、どうして。
それよりなによりも
進藤「どうして急に?明日ってどういうことですか。」
香奈「急じゃないよ、一か月ぐらい前から決めていたことだ。」
進藤「ならなんで言ってくれなかったんですか?」
彼女を責めたいわけではないのに、思わず問い詰めてしまう。
彼女は言葉を慎重に選ぶため、数秒の沈黙の後
香奈「君のそういう反応が答えだ。」
といった。僕は何かたまらない気持ちになり、彼女に言う。
進藤「わかんないですよ。あなたの言葉が…その意味が、その気持ちが!」
香奈「………私が君を気にかけたのは、私の弟に君が似ていたからだ。それ以上でもそれ以下でもない。」
香奈「バイバイ、少年。」
とそれだけ言って去っていた彼女の後ろ姿に、責める言葉を投げかけ、彼女の姿が見えなくなるまでそこから動けず立ち尽くしていた。




