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開きかけの花びら

その日からその人と公園で話すようになった。

その人「……でそのおじさんがおつり返す時毎回私の手握ってくるんだよねー。」

進藤「ちょっと気持ち悪いですね。」

その人「店長に言っても何にもしてくれないんだよねー。」

その人「あ、翔君タバコ吸ってもいい。」

進藤「許可とる前に火をつけてるでしょ、あなた」

進藤「ていうかお姉さんって名前なんですか。」

その人「ん、私?私は香奈ちゃんだよ。」

進藤「香奈さんは大学生なんですか?」

香奈「そうだよ、私はね〇〇大学の法学部だよ。」

彼女は誇るような顔でそういった。

進藤「すごいじゃないですか、ならなんでたばこなんて吸ってるんですか?」

香奈「それはね、秘密。」

その人はそう明るく言ったが、表情の裏に潜んでいた暗い気持ちを僕は感じ、これ以上聞かないことにした。

こうして彼女と過ごす時間は月日がたち、月明かりが照らす夜から夕暮れ時へと変わっていった。

彼女のおかげかはわからないが、だんだんと人に心を許せるようになった。

彼女の『人間を表すのは言葉だけではない』という言葉が僕の閉ざされてた世界をこじ開けた。

少数だが、あの出来事以降も話しかけてくれていたクラスメイトの酒井隆二と特に仲良くなれた。

酒井「進藤って元々そんなに賢くなかったのに、今や学年一位を争う成績にどうなったんだよ。」

進藤「やることがないから勉強してるだけだよ。」

酒井「すげーな、素直に尊敬だわ。」

進藤「ありがとう。」

酒井「素直に返すなよ、照れくさいだろ。」

と何でもない会話をできるほどになっていた。

今まで拒絶し、避け続けていた家族にも向き合わなければと思い、久しぶりに一緒に夕食を取るために早く帰ることをかなさんに伝えた。

家族に話があるとだけSNSで伝えて、高校を後にしそのまま家に帰る。明るいうちに帰るなんていつぶりかもわからない。扉を開けると、おそらく玄関でずっと僕を待っていたように見えた母親が怒りや心配や困惑や安堵が入り乱れたような顔で僕を見つめていた。

進藤「ただいま。」

母親「おかえりなさい。」

そういうと母親は優しく笑った。

久しぶりに僕ら家族は言葉を交わした。

何処の家庭でもやっているごく普通の会話だった。

だがそれができるようになるまで長い時間が、僕には必要だったのだとようやく気づき、不意に涙が頬を伝った。

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