僕の“青い”春
彼女が出て行った店内で独り、彼女が買ったものだという認識が薄くなったカフェオレを一層不味くさせた。暇さえあればつけているイヤホンもつけず、彼女の言ったことを考えても何も理解ができない。文字が頭の中をぐるぐると回って、落ち着かない。彼女を追いかけるべきだったのかもしれないと、今更ながら思いつくも、手遅れだと同時に理解する。
とりあえず店を出るため、飲みかけのカフェラテを捨て、店を後にし予備校に戻る。
いつもの席に座り、参考書を開き、文字の羅列を頭に入力し自分の言葉に変換し解読し出力するという勉強という名の作業、だが彼女の言葉が頭を回っているためうまくできない。壁に貼ってある【受験まであと〇〇日】という張り紙を横目に、自分に言い訳をして荷物をまとめた。
自室に戻っても心の霧は晴れずにそこにある。気分転換に掃除でもしようとクローゼットを開けると、“あの頃”のものが多くあり、すぐに閉じる。ベッドに寝転がり、スマホを開く気力も起きずに眠りについた。
彼女にあったせいか、昔の夢を見た。あの頃の僕と彼女はすべてがうまくいっていたと感じるほど、希望や楽しさに満ちていた。僕らは何度も学校で表彰されていたし、何度か大きな賞ももらっていた。世界の中心にいると信じて疑わなかった。
だが高校二年生の春、突然彼女は姿を消した。少なくとも僕の認識では、何の前触れもなかった。全国コンクールの出場をあきらめざるを得なく、彼女も失ったことで、心の中は深い底なし沼に沈んだようになり、頭の中ではうまく考えがまとまらない状態が何か月も続いた。だが心を失ったとしても、生活は待ってくれなかった。
教師からの出席日数が足りないという連絡でやっと僕は高校に再び通うようになった。だが世界は僕を拒絶していた。
『学校の名前に泥を塗った男』や『桐崎さんを学校から追い出した最低の男』など
僕は否定する元気もなく、逃げ場所に勉強を求めた。
同年代と話すのが苦手になったのはこのころだっただろうか。
学校が終わった瞬間、逃げるように教室から出て
誰も見知った人がいない場所を探し
いつしか隣町の図書館まで行くようになっていた。そうやって夜遅くまで時間をつぶし、家族とも話すことなく、眠りにつくそんな生活を過ごしていると、いつしか北の大地では初めての雪が降っていた。
そんな時期だった、あの人に出会ったのは。




