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「よっしゃー!」
桃太郎が鎧を脱ぎ、ふんどし一丁になる。
そして、円の中央に、がに股で座った。
その正面に、鬼が同じように構える。
(何これ?)
ガヤオが首をひねっていると、2人は両手を地面に付けた。
顔を上げ、にらみ合う。
いつの間にか行司の格好をした猿が「キキー!」と叫ぶ。
「おおおりゃあぁぁぁーッ!」
気合と共に立った桃太郎が、同時に動いた赤鬼と、ものすごい勢いでぶつかる。
桃太郎は相手の虎柄パンツを、鬼は桃太郎のふんどしを両手で掴み、互いに逞しい胸を合わせて押し合った。
(これがスモウ!?)
ルールは分からないが、格闘技の一種のようだ。
やはり、ひと回り大柄な赤鬼のパワーが上なのか、桃太郎は円の際まで押し込まれる。
桃太郎が「ぬおぉぉっ」と表情を歪めた。
(あれ? あの線から出ちゃダメなのか?)
「おおぉぉぉーッ!」
桃太郎のこめかみに太い血管が浮かび、全身の筋肉が盛り上がる。
「どりゃあぁぁーッ!」
雄叫びと共に桃太郎は上体をひねり、相手を円の外に投げ飛ばした。
赤鬼が転がって止まる。
猿が「キキー!」と、軍配を桃太郎に上げた。
「ふぅぅぅ」
桃太郎が額の汗を拭い、ガヤオの傍に来る。
「危なかったー! 土俵際でガヤが『桃っち! 今までの過酷な修行を思い出せ!』って言ってくれたから、ギリギリ勝てたー!」
「いや、そんなこと全然、言ってないけど!」
「またまたー! 照れなくてもいいっしょ!」
桃太郎が、プププと笑う。
釈然とはしないが、とにかく桃太郎は鬼に勝った。
宝を取り戻した一行は、船まで戻る。
するとミョーン感覚が、やって来た。
「お! 帰れるぞ!」
身体も半透明になってくる。
「サンキュー、ガヤ!」
桃太郎が手を振る。
「ああ、元気でな!」
ガヤオも手を振り返した。
元の世界に戻る。
そこではネココが、大勢の村人たちに胴上げされていた。
「ど、どうなってんだ、これ?」
「あ! ガヤオさん!」
胴上げから下りたネココが駆けてくる。
「サイクロプスをアタシが倒したから、もう英雄扱いッスよ!」
「え!? いや、あのサイクロプス、もう1回攻撃したら倒せるとこだったじゃん! ほとんど俺がダメージ与えたのに!」
「いただきッス!」
ネココが人差し指と中指を伸ばした敬礼ポーズで、パチッとウインクする。
「くー! 腹立つ!」
「あれ? ガヤオさん、そちらの方は…彼女ッスか?」
「え?」
ガヤオが隣を見ると、1匹の猿が居た。
ガヤオのマントの端を掴んでいる。
「えー!? こいつ、桃太郎の猿じゃん! ついて来ちゃったのか!? てか、彼女じゃねぇーわ!」
「キキー!」
「彼女が怒ってるみたいな顔すな!」
こうしてガヤオとネココは、今日もカルナディアの平和を守っている。
おわり
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