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カルナディアの勇者ガヤオは、仲間のネココと共にサイクロプスと戦っていた。
敵の大きな棍棒攻撃をかわしつつ、ガヤオの剣とネココの弓矢でダメージを与える。
「よし! そろそろ、とどめだ!」
ガヤオが叫んだ瞬間。
身体が半透明になってきた。
ミョーン感覚がやってくる。
「こ、このタイミング!?」
「ガヤオさん、あとは任せるッス!」
ネココが半笑いで敬礼した。
「ぬぐぐ…」
歯噛みしながら、ガヤオは別世界に転移する。
見晴らしの良い道の真ん中だ。
「お! 来た来た!」
後ろから、若い男の声が聞こえた。
振り向くと和風の軽装鎧を着て、頭に桃の絵を描いた鉢巻きを巻いた青年が立っている。
背中に「日本一」と書いた幟を差していた。
彼の後ろには、犬と猿と雉が控えている。
「オレ、桃太郎。よろしくー!」
満面の笑みで、桃太郎が右手を差し出す。
「俺はガヤオ」
ガヤオは握手に応じた。
「イエーイ!」
桃太郎がテンションアップする。
「じゃあ、ガヤ、これ食べて!」
桃太郎が腰の小袋から団子を1個出して、渡してくる。
「ガヤって…何これ?」
ガヤオは団子を貰い、戸惑った。
「きび団子。まあ、チームに入る儀式的な? 食べて」
桃太郎は、キラキラ光る瞳で見つめてくる。
「そ、そうか」
ガヤオは、きび団子を食べた。
美味い。
「これでガヤも、チーム鬼退治の一員じゃーん!」
桃太郎が肩を組んできた。
「鬼退治?」
「そう! これから鬼ヶ島に渡って、宝を取り戻すから! ガヤもサポート、よろしくー!」
「ワンワン!」
「キキー!」
「ケーン!」
犬と猿と雉が興奮しだす。
「なるほど…分かった」
とりあえず助っ人が終わらないと帰れない。
ガヤオは桃太郎とお供たちといっしょに、船着き場に向かった。
右手のリードを犬に引っ張られ、左手を猿と繋ぎ、肩に雉を乗せた状態で船に乗る。
出港して10分ほどで、鬼の顔の形をした島に着いた。
桃太郎を先頭に歩きだせば、草むらから大きな赤鬼が出てくる。
ガヤオが戦っていたサイクロプスよりは小さいが、筋肉隆々だ。
「出たー! 鬼ー!」
桃太郎の叫びにガヤオはスモールシールドを構え、長剣を抜いた。
「任せろ!」
「ガヤ! 何やってんの!? ストップ、ストップ!」
桃太郎に咎められる。
「え? 鬼退治だろ?」
「ダメダメ! 暴力はダメっしょ! 最近は、すぐに問題になっちゃうから!」
鬼もコクコクと頷いている。
「え…でも、宝を取り戻すんじゃ?」
「こういう時は相撲! 相撲で決着つけんの!」
「…スモウ?」
ガヤオが剣を鞘に戻すと、猿が枝を拾って、地面に大きな丸を描いた。




