第21話 仏パンチ【Buddha】
大威徳明王は逃走するメフィストに額の白毫から光線を発射。遠くに見える小さな影が倒れ伏したのを確認。大威徳明王は六本ある腕の一つで胸を撫で下ろす。その戦いを見守っていた五大悟天はデーヴァのその法力の凄まじさに改めて驚く。
「デーヴァ様が勝ちおった……あの醜悪な怪物3匹を相手にしながら、少しもピンチに陥ることなく」
「あんなに強かったなんて……。デーヴァ様がいればこの地上から悪魔を滅殺仕切ることも夢じゃない」
「しかし、大丈夫なのか? ヒムサーの例もある。奴は、【化身】を使った後発狂してもう戻らなかった。哀れに思ったデーヴァ様が介錯を務めたが――――あの時のデーヴァ様は泣いておられたな」
「【化身】は自らを依り代として仏をこの世に降臨させる仏塔の禁断秘術。だが、仏の清すぎる神気は不浄の生物である人には猛毒である。あれ程長く【化身】されては、生き仏陀デーヴァ様と言えど耐えられないのではあるまいか」
「まさか、デーヴァ様自らがこの闘いに赴いたのは我らを【化身】から守るため――――」
「ありえる。デーヴァ様は優しいお方だから。だとすれば――――」
レジーナ・チャンドラが胸を押さえて涙ぐむ。他の五大悟天もそれぞれが感極まる思いを抱いた。
その時戦況がまた動いた。大威徳明王がメフィストを地面に組み伏せ、6本の腕でタコ殴りにし始めたのだ。虫の息と化し、もはやただピクピクと痙攣するのみのメフィスト。何もしなくてもあと幾時かすれば臨終のときを迎えるだろう。そして地獄に堕ちる。その死にかけのメフィストの肉体をしかしただひと時でも速やかにこの世から浄滅せしめるため大威徳明王は白毫に仏力を集中し極大の仏光を放たんとする。しかしふいにその集中を止め、遥か足元の地上に注意を移す。
「(む?)」
「焔山さん……」
大威徳明王が見下ろすその先。そこに、聖女が悪魔憑の亡骸に寄り添い手を握るという、仏の常識ではありえない光景が繰り広げられていた――――。




