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”終末”Ⅰ

「で…こっからがダンジョン攻略って訳かよ」


視界が再び戻った場所…。それは新しく始まったダンジョン。


【終末】…攻略難易度SSS


さっきまでのダンジョンは…【終末】を終わらせるに相応しいか…の試練だった訳だ。


分岐…だろうな。多分資格が無いものは…通常のダンジョン攻略…って感じに。


「空が…赤黒い」


記憶で見た通り空は赤黒く変色していた。空に浮かぶ黒い粒…なんだあれは?


「もしかして…」


その黒い粒が…尋常じゃない速度で突っ込んでくる。


ー----------------------------------


終末のガーゴイル LV350 終末の刻に地獄から現れる悪魔。人の弱みを覗き見る。


ー----------------------------------


あれ全部が…こいつかよ。流石に相手してらんねぇぞ!!


数は百や千なんかじゃない。空が黒いのは全部コイツだ。終末と呼ぶに相応しい光景だな。


「ギャギャッ!!」


人間ほどの知性は無いのか…喋る訳では無いみたいだ。だが…弱みを見られるとなると…警戒は必要だ。


ここは一旦退こう…。こいつ等はまだ俺に気が付いている訳では無い。ここは一旦安全そうな場所に避難し…計画を立てる必要がありそうだ。



「あの量は流石に無理だな…」


確かに広域殲滅スキルがあるが…それでどうにかなる話では無い。空を埋め尽くすほどあの化け物がうじゃうじゃしているんだ。


「何か攻略の手掛かりを探さないとな…」


多分ボスは背徳の悪魔…アステマだろう。ならば…そいつが居る場所を探す必要がある。


見た筈だ…俺は…あの記憶を。


聖女として生まれ…そして神を憎み人を憎み死んでいって彼女の記憶を。何故ここがダンジョンとして現れた?…それはこの憎しみを連鎖を終わらせるため…じゃないか?


「村に向かおう」


俺の見た記憶…村の牧師として潜入し…そして終末を引き起こした。ならば…村に行けば何か分かるかも知れない。


が…村の方向が分からない問題点をどうするか…。


「思い出せ…あの記憶を」


収穫祭の最中…そらが赤黒く変色したあの時を…。さっき見た空は…南の方から黒い悪魔の大群がやって来た。大群の方へと進めば…自ずと村は見つかる筈だ。


「イグナリア…悪魔の大群はどうすれば良い」


『どわぁあ!!ちょっとここどこ!?』


記憶の中…それともダンジョンか?分岐ではあるが…果たしてここをダンジョンと称していい物だろうか。


「分からん」


『ここ…別の世界から断絶されてる…』


精霊にしか分からない事もあるだろう。俺にその違いは分からないが…確かにダンジョンとかとはまた違う…そんな気がするんだ。


「もしかして…俺が異世界に転移したとかな...それは無いか」


『帳…多分それは正しいわ』


マジか…ここは記憶で見た時の…異世界ってことかよ!?


「急ぐか…」


俺の予想が正しければ…まだあの少女たちは生きている。あの時男の使った大魔術…もしかしたら、俺をここに連れてこさせる為の…魔術だったのかもな。


『帳…この世界に…安寧を』


「あぁ…こんな憎しみの連鎖は俺が断ち切ってやる」




悪魔の軍勢をかき分けながら進んできた。思ったよりも村は早く見つかったのは良かった。


だが…記憶で見た村とはかけ離れた様相に…少しのショックを受けてしまう。


「”ウケイレロ…神ヲ”」


狂気に魅せられた村人はまだ居る。ならば…向かうべきは教会。あの男が最後に護った子供たちを…見捨てる訳にはいかない。


『帳…っ!あっちに教会があったわ!!』


「“生も死…汝は神に愛された”」


「”愛と死…それは果てなき偶像”」


こいつ等の言っている事に意味は無い。ただ狂気に魅せられ…おかしくなっているだけ。


だが…悪魔は弱みに付け込む…。この狂気も…村人の心の底で何か思う事が…あったのかも知れない。


「これが…教会か」


あの記憶の時から特に変わりはない。ここには狂乱者たちも近寄っては居ないみたいだ。あの男が何か細工を仕掛けていたのかも知れない。


「開けてくれ!!助けに来た!!」


中に向かって問いかける。だが…返事は無い。確か…中には三人の子供が居た筈だ。


警戒している可能性がある。だが…どうする。俺の声を知っている奴は居ないだろう。逆の立場で俺も扉を開けるとは思えない。


「イグナリア…中に入れそうか?」


『時間さえあれば…でも少し複雑そうね』


結界の類が張られてそうか…ならば…俺は先にアステマの位置を探そう。ここからそう遠くない筈だ。


「グギッ…グギャ!!!」


準備運動には丁度良さそうだな。


「行くぜ悪魔…【光輝】の力を見せてやるよ…」


ミゼリア=ナハトを脱ぎ去り…臨戦態勢に移る。武器は使わない。あの時の”セラ”の力…あれは安易に使うべきでは無い。ならば…素手で行くしか。


「【身体強化煌】…【光輝共鳴】」


「……アナタヲ…ウマナケレバヨカッタ」


…ッ!?


「はぁっ…や、辞めてくれ…」


脳が黒く染まる。あの時の記憶…あの悪夢…忘れていたあの現実ゆめが…。


「アナタノセイデ…ワタシタチハ…」


「辞めてくれ…その声は…」


『帳ッ!!!しっかりして!!貴方は貴方…過去に何があったかは知らない!』


脳が闇に支配される。あの時の事は忘れた筈だった。いや…思い出そうとしなかっただけ。本当はずっと覚えていたんだろう。辛いだけ...何の役にも立たない事。


「あぁ!あぁ!やめろ…あの人は…もう死んだんだ!!!」


『帳ッ!!!』


イ、イグナリア…。そうだ…今の俺にはイグナリアが、雫ちゃんが…そして唯利さんも居る。俺には大切な人が出来たんだ…。過去じゃない…未来を見ろ。


「イ、イグナリア…俺の魔力を全部持って行け…」


『え...っ!?で、でも帳が!!』


「良いから…俺の魔力を喰え!!」


『そういう事なら…っ!!』


体内から魔力が急激に減っていく感覚。精霊にもキャパシティは有る。この量全てを喰らうイグナリアは…とんでもない精霊になるかも知れないな。


ちっ…精神に何か別の存在が居る。これが悪魔の正体か。


「イグナリア。俺の事…頼んだぜ」


『任せなさい!私は精霊王になる精霊なんだから!!』


イグナリアの情熱の赤が迸っている。これならば…大丈夫そうだな。頼んだぜ、イグナリア。

結婚式に行ってたんですが...テーブルマナーを勉強して臨みましたが...箸が出てきました。勿論箸で食べました。

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