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”背徳の教会”Ⅳ

「【光輝の斬輪】」


はじけ飛ぶ屍の残骸。この階層は知性無きアンデッドが無数に襲い掛かってくるフロア…知性が無いため相手取るのは簡単だが…如何せん数が多い。


ー----------------------------------


狂乱の屍人 LV200 背徳の悪魔により再びこの地に呼び戻されたアンデッド。元は聖職者だったため【聖】の魔力を有する。


ー----------------------------------


胸糞わりぃ事させやがるな。このアンデッドの厄介な所は回復魔法を使う事だ。アンデッドが回復するのか疑問だが…実際目の前で回復魔法を使われたんだよな。浄化しちまうだろ…と思うが、普通に回復してんだよな。


だからこそ…一撃で蹴散らす必要がある。実際俺の持ちうる火力で一撃仕留める事は出来る。【光輝の斬輪】の殲滅力でどうにかなっているが、魔力の消費が気になる所ではある。魔力回復のポーションもあるが…回復量何て微々たるものだ。


対して強くないモンスターな為経験値も少ない…。本当に胸糞悪いだけのダンジョン攻略だ…気が滅入る。


「ドロップアイテムも無いんだよな」


許すまじ…背徳の悪魔。



「【ライトニングショット】」


キリが無いわね…。何なのよこのゾンビたち…経験値も無ければドロップも無い。早くこの階層から出たいけど…次の階層に繋がるゲートも見つからないし…あーもう!!ムカついてきた!!


さっきの階層も一本道だけの意味わからない階層だったし…何なのよこのダンジョン。


「ウォ…グェ」


それに臭い!死臭が我慢できない位鼻に突く。今までいろんなダンジョンを攻略してきたが、ここまで不快なダンジョンもなかなか無い。


「【ライトニングショット】!!!!」


八つ当たり。いつもよりずっと威力が高くなってしまう。魔力の消費は…今は考えないでおこう。


「回復魔法も…ホントむかつく!」


アンデッドのクセに回復魔法何て使ってさ。今までのダンジョンはアンデッドが魔法を使うなんて事無かったのに。それに…結構硬い。一撃で仕留めるには…【雷帝】を解放しなきゃ行けなさそう。今日は既に一回【雷帝】を解放させている。ここで【雷帝】を使う事…それは後一回しか【雷帝】が使えなくなるという事だ。【雷帝】は自分が知りうる中で最強のスキルだけど…回数制限があるのが弱点なのよね。


「キミは…【雷帝】か」


「だれっ!?」


背後からの声。この私が気配を見つけられなかった!?今日だけで二回だ...。やっぱ最新のダンジョンには強いシーカーが集まるのだろうか。


「驚かせてすまないね【雷帝】。俺は”ハーミット”…しがないシーカーさ」


そんな訳ない…。何だろうこの感覚…全てを見透かされている様な感覚だ。男の印象はぱっとしない一般人。それがどこか不気味だ。武器も持っていない…装備も付けていない。ただただ私服でダンジョンをうろついている…。そんな人間が果たして普通だと言えるだろうか?私はそうは思わない。


「動かないで…撃たれたく無かったら」


「おや…警戒されてしまったみたいだ。安心してくれ…俺は人間に危害を加えることは無いよ」


「そんな事言われて警戒しないと思う?」


「そうか…ならば仕方ないね。俺は先に行かせて貰うよ」


「動かないで。そんな軽装でここまで来れたって事?どうやって」


なんなのこの男は…。ハーミットって言ってたわよね…。隠者……存在を隠すスキルでも持っているのだろうか。


「愚問だね。それを教える義理が君にあると?」


それはそうだ。本来手の内を晒す必要なんて全くない。だが…この男の底知れなさ…少しでも情報を引き出しておくのが良い。


「笑わせないで。【雷帝】の事知ってるんでしょ?なら早く吐きなさい」


脅し、本来こういう事は許される事では無い。自身の力を誇示し、弱者に命令する。クズのやる事だ。だが…こいつは弱者ではない。異端…はっきり言えば気味が悪い。


「気味が悪いかい?名前も名乗ったのにね」


ちっ…。さっきの男と言い気配を消すスキルでも持っているの?あり得ないわ…電気にすら引っかからないなんて…あり得ない。


「貴方は…味方?それとも…敵?」


「今はまだ…敵では無いよ」


”今はまだ”…ね。何故だろうか…この男はいずれ自分の前に立ちはだかる…そんな気がしてならない。


「なっ…消えた!?」


音もなく…何も言わずに消え去ってしまった。急いで索敵を試みるが…その希望も虚しく何も感知する事が出来なかった。


全く気付けなかった。この私が…


「このダンジョンもそうだけど…一体何が起こってると言うの…?」


それはこの先に待つ最悪に今はまだ気が付いていない事が唯一の幸いだろう。彼女に待ち受ける困難…それは生きる意味をも失いかねない最悪の”夢”。

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