模擬戦
「次!小鳥遊帳!佐藤啓二!」
来たか。あいつの思惑通りになっているのは少し癪だ。
スキルあり、武器有のガチマッチ。
「はっ!格上に歯向かったこと…公開させてやるよ」
本当に不味いことになった。こいつに良い様にされるのは癪だし…でもここで変に実力を晒して注目されるのも嫌だ。ってなると...良い様にやられる振りをしてどうにかこいつをボコボコに出来ないだろうか。
「両者準備が完了が出来次第始めるように」
「俺はいつでも行けるぜ!」
どうするか…取り敢えず武器は今”セラ”が修理中な為、素手で行くしかない。此奴相手なら何とかなるが…目立たずに倒す方法を考えなくてはいけない。
「こっちも大丈夫だ」
戦闘開始の合図。相手は斧を手に持っている。パワー型なのはその図体からも読み取れる情報だ。
「なら行かせて貰うぜ!!【身体強化】!!」
佐藤の肉体が魔力によるコーティングを受ける。その身体強化と恵まれた体格を生かした突進が向かってくる。
ドォン!!!!
大地が抉れるような踏み込みと共に振り下ろされる巨大な斧。佐藤の持つ斧が試合会場の地面を抉った。
周囲からは驚愕の声。それはこいつが強いから…という訳では無い。生身の人間に対して、本気で殺しにかかった攻撃をしたことが周囲からは以上に見えたのだろう。
「まだまだァ!!ちょこまかと逃げてんじゃねぇよ!!」
こんな大ぶりな攻撃を避けない方が可笑しいだろ…。ここまで大ぶりだと避けるのは簡単だ。こいつ…実は戦闘経験が薄いのか、雑魚狩りばっかしてたのか知らないが…戦い方が、下手だ。
「ちっ…ならしょうがねぇぜ…喰らいやがれ!!【震天】!!」
これは…斧と膂力を合わせた衝撃波か。だが、力を溜める時間がある。
「…派手な技だが、読みやすい」
【震天】の衝撃波が走る刹那──鉛直方向へと跳躍する。確かに…その地響きと衝撃波は並みの人間なら立っていられ無いだろう。だが、そのモーション時間は大きな隙となりうる。回避する時間、反撃する時間を与えてしまう…いわば諸刃の剣。
「なに…っ!?俺の【震天】を避けやがった!?」
間違いないな…雑魚狩りしかして無かったタイプだ。だが、それは正しくもある。ダンジョンでは格上のモンスターに挑んで帰ってこないシーカーも大勢いるからだ。
「視えたな…後はどう処理するか」
「まだだ!!【破砕】!!」
佐藤の斧が再び宙を舞う。
…なるほど。斧自身を投擲して相手を粉砕する技か。確かに…斧を投げ飛ばす膂力は素直に評価できるポイントだ。
だが…シーカーが簡単に武器を捨てるなんて…考えられないな。
「どぉおおりゃぁぁあああ!!!」
俺よりデカい斧が途轍も無い速度で迫ってくる。だが、遅い。あいつ等に比べ…あまりにも遅すぎる。その不可避の鎌を持ったグラディアス=インフェリオ、それに【王剣】。
そいつらに比べれば児戯の如き技に過ぎない。
だが…俺は俺の思惑がある。ここは利用させてもらうぞ。
「【身体強化煌】」
だが、出力は最小だ。ここで【光輝】の魔力を見せる訳にはいかない。普通の身体強化に見える様に細工を施す。
そして…佐藤の投げた斧が俺へと到達する。
「やったかっ!?…へへっ...ざまぁ見やがれってんだ!」
余りに小物な発現に少し笑ってしまいそうになるが…ここは耐だ。
(イグナリア、居るか?あいつの服の端…少し燃やしてきてくれ)
『はーい』
「そこまで!救護班を呼んできてくれ!」
教官が試合終了の宣言をする。
「雑魚が…調子に乗ってんじゃねぇよ」
去り際に一言また言われるが。奴の服の端が燃えている事に気が付く。
ナイスだイグナリア。
「大丈夫か小鳥遊!」
「大丈夫です。ギリギリのところで避けれましたが、吃驚して腰が抜けてました」
「そうか…なら良かった」
これで何とかこの場をやり過ごせそうだな。あいつが勝った気でいるのは癪だが…耐えるしかない。ここで俺の力が広まる事の方が今後厄介になるだろう。
「啓二さん!?服が燃えてるっす!!」
「なんだと!?おい、早く消せ!!」
遠くの方であいつ等の焦る声が聞こえる。
は…いい気味だぜ。
そんなこんなで模擬戦を乗り切ることが出来たのだった。
。
「帳さん!どうでしたか?何か…酷い事はされませんでしたか?」
「大丈夫でしたよ。それより、唯利さんの方はどうでした?」
「やはり…今高難易度ダンジョンでイレギュラーが発生してるみたいです」
やっぱか。”火山”みたいに犠牲者が出る前に片付いてくれたら良いんだが…。
「それに…高難易度ダンジョンに潜ったランニング上位のシーカー達がまだ帰ってきて無いと…」
「それは…不味いですね…。シーカー協会はどう言ってましたか?やっぱ暫くは潜るのは辞めた方が良いと?」
「はい。もしかしたら海外の犯罪シーカーグループの仕業かも知れないみたいです」
海外絡みか…。
「俺も気を付けないとですね…」
「そうですよ!帳さんは無茶バッカしてるんですから!」
ぐうの音も出ないです。”火山”の出来事も唯利さんは知っている。だからこそ、心配してくれているし、迷惑を掛ける訳にはいかない。
「海外のダンジョンでも同じ事が起こってる訳では無いんですか?」
「海外は普通みたいですね。日本の高難度でだけ、イレギュラーが発生していると…」
ふむ...。イレギュラーを狩に言っても良いが…この機会に海外のダンジョンに遠征するのも悪くない。その場合唯利さんも付いてくることになるが…どうだろう。
「唯利さん…海外に遠征しましょう」
今俺のしたい事…それはダンジョンに潜る事だ。
「急ですね…でも、行きましょう!帳さんの成長につながる第一歩です!」
良し!!海外のダンジョンも行ってみたかった。特にフランスにある”大海原”はいずれは潜りたいと思っていたんだ。
「よっしゃー!!ありがとうございます唯利さん!」
「全く…子供みたいですよ」
そんな訳で海外へのダンジョン遠征が決まったのであった。
佐藤君ステータスが低すぎて...上手く戦闘シーンが書けないよ!
佐藤君の出番が終わった訳ではありません!いずれどこかで出会う事になるでしょう...。
暫くダンジョン探索メインになります!




