”セラ”の修復
「これがノクスの使ってた錬金道具か」
ノクスが言っていた錬金道具…多分この埃を被っている道具たちがその錬金道具なんだろう。
どれどれ…俺のお眼鏡に適うお宝かな?
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《ノクスの錬金道具一式》・・・錬金の王であったノクスの用いた錬金道具一式。埃を被っていようが性能自体は衰えていない最高の錬金道具。グレードSSS
【アーティファクト作成、ポーション作成、エンチャント】においてボーナスが付与される。
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おぉう…。グレードが最高のSSSみたいだな。これでポーション作成に取り掛かる事が出来る…。まさかポーションの素材を集めに行ったら錬金道具まで手に入るとは思わなかったな。
『ありがとう…イグナリアと帳。ノクスと共に果てるつもりだったけど…彼の願い通り、もう少し生きてみる事にする』
「なら良かった。何時でも頼ってくれ…主にイグナリアが解決する」
『え!?私っ!?な、なんで急に私が!?』
『あら、それは心強い…。期待してますイグナリア』
『えぇえ!私ですか!?』
「ほら、観念しろ。俺の魔力吸って良いからさ」
『グぬぬ......それを言われると何も言い返せない…』
「錬金道具も手に入った事だし…頼んだぜイグナリア」
錬金はこいつに全てを任せよう。精霊だしな。俺よりかは上手に作れるだろ。
「じゃあルナリア、元気でな。偶にイグナリアと遊んでやってくれ」
『あらあら...イグナリアは寂しがりやなのね』
お前程でもないと思うけど…。
『あら何かしら?』
「いえなんでも」
さぁ…隠しフロアも攻略したことだ。このダンジョンにもう用は無いかな。
「戻るか…少し疲れたしな」
”森”の探索はこれにて終了だな。まさか隠しフロアを攻略することになるとは思わなかったが…良い結果になれば全てよしだ。
「帰るか…行くぞイグナリア」
『うんっ!それじゃルナ様もお元気で!』
『それじゃあね。本当にありがとう』
こうして二人の物語続きが紡がれたのだった。
。
。
。
「お帰りなさい帳さん!”森”はどうでしたか?」
うぅんいつ見ても唯利さんは美しいなぁ。
「”森”の隠しフロアを攻略してきました。多分…最初で最後です」
もうアーティファクトも居ない。ルナリアが静かに過ごす場所だ。概要は控えておこう。
「えっ!?またですか…これはいよいよ隠していられませんね…」
「やっぱランキングも上がりますか?」
「そうですね…今の帳さんのランキングが…大体100万くらいなので…上がるでしょうね…」
俺よっわ…。シーカーが一体どれほど居るのか把握してないが…絶対低い事に変わりは無さそうだ。
「そんなに上がらないことを祈っておきます…」
「大丈夫ですよ!上位1%とかでもない限り多分…」
少し自信が無さそうだ。日本ではそこまでランキング競争が激しく無いとはいえ…急にランキングが上がったら変に注目される可能性もある。それは嫌だしなぁ。
「そうでした…またライセンスの更新があるんですけど…大丈夫そうですか?」
うわぁ…マジか。ライセンス更新って言うと…また変な模擬戦とかさせられたり、シーカーの何たるかを説き伏せられる奴だ。そうか…もう一年経ってたのか…。
「もしかして…東京…ですか」
「はい…今回も東京になります。私も付いて行くので一緒に講習を受けましょう」
それって!?つまり東京にデートってこと!?唯利さんと二人きりで!?
おいおいおいおい!!それってつまりそういう事だよなぁ!!
「今一気に憂鬱じゃなくなりました」
「えっ!?な、なんでだろう…」
「よっしゃー!!ナイスだライセンス更新!」
「ま、まあその気なら良かったんでしょうか?」
唯利さんがポカンとしながら呟く。
。
「はい。一応ステータスはこんな感じになってます」
「こ、これは…凄まじいですね。やはり黄金郷の時点で?」
それもあるが…強敵との闘いによって覚醒したと言った方が正しいか。要はこの力も使いよう。後遺症があるかも知れない【光輝の欠片】と【光輝なる果実】を使って魔力の回路を無理やり構築するのも…俺だけじゃなく誰もが出来る事かも知れない。
「このステータスなら…上位どころか最上位なんじゃないでしょうか…」
そうなるよなぁ…。まあランキングが上がるのはこの際許容しよう。ただ、隠しフロアの情報だけは出したくない。
「では…一応このように申請しておきます」
「分かりました。所で…ポーションの素材を死ぬほど持って帰って来たんで買取お願いします!」
後は素材をある程度換金する位だな。自分たちに必要な分は確保してある。イグナリアに後は全て任せるだけ。
「お!ありがたいです!それでは早速…買取の方に移りましょう」
。
「買取強化って…すげぇ…」
どれだけ需要が上がっているんだ…。通常の5倍ほどの値段で売ることが出来た。これで暫くはお金に困ることは無い筈だ。
「ガン爺!居るかガン爺!」
取り敢えずガン爺の所に来た。と言うのも…【王剣】との鍔競り合いで”セラ”が砕けたからだ。
最終的には”セラ”が上回ったものの…【王剣】の強さはホンモノだった。流石は国宝…宝物庫に眠っていた剣だ。
「なんだ坊主。ってお前!その剣…」
「すまん!無茶な使い方しちまった…申しわけない」
「それはお前の勝手だがよ…これ程の剣が…一体何があったんだ」
【王剣】のこと、隠しフロアの事をガン爺に伝える。
「なるほどな…そりゃ仕方のねぇもんだ。ただ、素材が無い以上元の姿には戻らねぇ…それでも良いのか?」
そうだよな…。もうあの”灼銀”に輝く”セラ”は見れないのかも知れない。
だが、”セラ”に護られた命…せめて元の姿は無理でも…剣としてまた使ってやりたいと言う気持ちがある。
「ああ…”セラ”を使い続けたい…こいつに護られた命だから」
「生半可な素材じゃ砕け散るぞ?それでもか?」
「あぁ…素材ならある」
ここで使うか…カマキリ君の素材を。今まで戦った中で一番の好敵手だった。意思を持ち、成長する姿は正に人間だった。
ガン爺に今ある素材全てを見せる。この中から”セラ”に適うモノがあれば…再び”セラ”を使う事が出来る。
「これは…今はまだとっておいた方が良いか。なら……これだな」
ガン爺が手に取ったもの。
グラディアス=インフェリオのドロップアイテム《断哭の羽刃》と赫輝灼炎鳥の《赫輝なる蒼核》だ。
「こいつらが…”セラ”に…」
「俺が視た感じだと…この二つは相性がいい。反発し合わない素材だ」
ガン爺が言うならそうなんだろう。
「ガン爺に任せるよ。”セラ”の能力がどうなるかは分からないけど…ガン爺なら最高の武器が打てる…そう信じている」
「俺は俺の仕事をするだけだ。ま、気長に待って置け」
そう言って奥に籠ってしまった。
今日は取り敢えず帰ろう。もうすぐライセンス更新だ。その用意もろもろしなければならない事がある。