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【夢、記憶、それとも現】Ⅲ

そして…時が流れた。どれくらいの時が過ぎたのか自分でも覚えていない。もう…何年”王”として君臨してきたのだろう。父上も母上もとっくに死んだ。


不死の王。何時からか、そう呼ばれてしまっていた。結婚もせず、子供も作らず…ずっと王として君臨していた俺を国民は皆気持ち悪がった。そりゃそうだ。何年経っても見た目も変わず、”王”なのだから。


「”王”はアーティファクトに代わってしまったんだわ…間違いない」


そう。俺の事をアーティファクトだと思う様になっていた。精霊の力により、寿命が延びた俺を人形と思い込んでしまっていた。


『ノクス…』


もう…疲れた…何もかも。怖いんだよ、お前と別れる事が。


『別れなんて…来ないわ。だって契約したじゃない』


契約したさ。国ももう別のモノに変わりつつある。”王権”じゃない。”民主主義”に。俺の存在は今の国民にとって不都合なんだよ。何百年、何千年と見守り、愛した国が変わりつつある。でもそれは良い事なんだ。


『じゃ、じゃあ私とひっそり暮らしましょっ!』


「キミにとって俺があと生きれる年月は欠伸程度のモノなのかも知れない」


自分で感じつつある、”限界”。何かが迫ってくるんだ。毎晩毎晩。もう十分生きた。死ぬことに対して恐怖は無いんだ。だけど...唯一ある恐怖…。それはキミと別れてしまう事なんだよ


『も、もっと力を付けましょう…そうすればもっと!』


そうじゃない。そうじゃ無いんだ。それは一時的な引き延ばしに過ぎない。本質はもっと残酷で、冷酷だ。だから、別れを惜しまない為、今と言う日を必死に…後悔無い様に生きて来た。


「キミはまだ先が、未来がある。だから…契約を破棄させてくれ」


『いやよっ!!私は…貴方じゃなきゃ…生きて行けないの』


こういう所はいつも強情なんだ。もう何千年と過ごしてきたからね。それは分かる。だからこそ、別れが俺たちに必要なんだ。


「今日が祝いの日になるよう…努力してきた。だから…キミも今日をが祝いの日になるように…これから過ごしていくんだ」


『いや…いやっ!』


ここまで子供の様に癇癪を起すのは初めて見たかもしれない。喧嘩だってしたことはあった。でも、いつもキミが大人の対応をしてくれていた。だからこそ…意外だ。


「せめて…死ぬところをキミに見られたくは無いから。《ヴァルディス》…頼んだよ」


この国の象徴たる”兵器”。【王剣】と融合を果たした《ヴァルディス》だ。これまで戦争をコイツ一人で何とかしてきた。それくらいのアーティファクト。


「”””契約ノ糸ヲ断切シマス”””」


『いやっ!!!やめて…《ヴァルディス》!!!!』


音は無かった。


静寂…あるいは孤独。また一人となってしまった男の涙だけが…この世界を照らしていた。





「この国って元は”王様”が居たんだろ?どんな人だったのかな~」


「人形みたいに見た目も変わらない人だって言ってた!」


「うぇ~気持ちわりぃ!」


子供の無邪気な笑い声。この国は”王”から解き放たれ、民主主義の国家となった。そして…歴史から抹消された王…その存在を覚えている物はこの世にはもう存在しなくなっていた。


『ノクス…私は貴方が…』


一時も忘れたことは無い…愛しのあの人。もう顔を見なくなってどれほどの時が経ったのか。


ただただ月が光り、太陽が昇る日々の繰り返し。


「なあ聞いたかよ。あの森で変な墓みたいなんが見つかったらしいぜ!」


「え~やだ怖いよ」


「何言ってんだ!今度肝試しに行くぞ!」


お墓…罰当たりな人の子。まだ倫理観が育ってないから仕方ないとも言えるけど。


「噂によるとこの国に居た王様の墓だって!」


え…。それってもしかして…っ!


そう思うと居ても経っても居られなかった。身体が勝手に動く。また…あの人に会えるかも知れない。ただそれだけが私の無限の原動力となった。

短かったですが...一旦ここで区切ります

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