【忘れられた王の墓】Ⅲ
新しく進化した剣。その美しい刀身は世界の全てを反射する。
その刀身に流れる波紋は正に”龍”に相応しい。
「これが…”セラ”か」
どこかイグナリアの魔力に似た波動を感じる。”赫”…イグナリアも、セラも同じ”赫”の魔力。厳密には少し違うが…本質はどこか似ている。イグナリアは”情熱の赫火”、セラは”誓約の赫”。
準備は整った。後は俺の出せる力を出すだけだ。
「行くぜ……これが、俺の”今”の全力だ」
灼銀の魔力が、再び身体を駆ける。それは【光輝】でもなく、【月輝】でもない、【赫銀】。
手に持つ剣の質量が変わったことを、身体がはっきりと感じ取っていた。
──重くもない。
──軽くもない。
──だが、確かにそこに”誓いの重み”がある。
「【赫龍月光・終の刃】」
【イグ二ス・フォウル】により装甲が徐々に溶かされている《デス=ザ=リーパー》。その核に”セラ”と俺の奥義が炸裂する。
森羅万象を引き裂き、”赫”により浄化される。その一太刀は今出せる俺の限界。…いや到達点と言って良い。俺とセラ、そしてルナリア。それぞれが出せる最大火力を凝縮した一太刀。
”セラ”の刀身と全てを引き裂く鎌が喰らい合い、互いの魔力が空間を歪ませる。
地面が砕け、空気が裂け、時間が軋んだような錯覚すら生まれる。
【死】と【赫銀】の間に、沈黙の数秒――
それを打ち破ったの【赫銀】の輝き。
「人形なんかに負ける道理はねぇ!!!!」
【赫銀】の刃が《デス=ザ=リーパー》の核を捉える。
”””ズガァアアアァァァァァァッ!!!!!!”””
その巨躯を、【赫銀】の輝きの中へと呑み込んだ。
コア…いや《デス=ザ=リーパー》は【赫銀】の魔力によりこの世界から浄化されたのだった。
『帳つよいっ!!あんな化け物に勝つなんて…流石私に契約者!』
「お前らのおかげだ。俺だけの力じゃ厳しかった」
想像以上にこいつらの力が強かった。ただそれだけ。”セラ”もイグナリアもルナリアも。
共存しうる3つの魔力。【光輝】、【月輝】、【炎】。そして”セラ”とルナリアの【赫銀】。
『あの人の造ったアーティファクト…ありがとう。あの人を護ってくれてありがとう』
既に消滅したアーティファクトに向かい弔いの言葉を投げかける。
『ごめんなさい。進みましょうか』
この先。どんな敵が待ち受けているのだろう。
だが…この力があればどうにでもなると、そう感じてしまう。
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《破損したコア》・・・自動人形を作成する際に心臓部分となる部品。破損しているため、使い道は無い。
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ドロップアイテムは…しょっぱいな。それよりこんな物を造れたって…どんな人だったんだ。
『彼は…錬金王国の王様でしたから…物造りは得意でした』
錬金術なる物があったんだな。手が器用そうなこった。
『ポーション作りも錬金術の一つだよ?』
え?そうなの…。
『普通に考えて瞬時に回復する水なんて世界に存在して言い訳無いじゃない』
ぐぬぬ…言われてみればそうだが…。
『彼は特別だった。錬金術においては前に出る者は何人たりとも居なかった』
凄かったんだな。だが、何時しか寿命が来た。そうして契約した精霊を解放し自分は世界から居なくなってしまったと。
『人はいつか死ぬ。どれだけ私たちと契約しても…いずれは朽ち果てていく』
悲しんだ顔。長い間一人だったんだよな…。その人が好きだったからこそ…悲しむ。
『悲しい…そうじゃないの。私はもう彼の名前すら思い出せない…それが悔しくて、惨めで…』
名前を思い出せない位時間が経った。その長い間の無念を俺は知ることが出来ないが…その無念を晴らすのを手伝う事は出来る。
『彼と最後まで一緒に果てたかった。私の願いは只それだけだったの』
それはエゴなんだ。ルナリアを大切に思っているからこそ、裏切り、一人で朽ちて行った。
その思いを無下にはしたく無い。だが、ルナリアの気持ちも十分理解できる。だからこそ、この話の続きを紡ぎたくなる。
『ピぇ...』
「何泣いてんだお前は」
イグナリアが顔をボロボロにして泣いていた。精霊同士だからこそ思う所があるのだろう。
ただ、そうだよな…俺達にもいつか”別れ”は来るんだよな。
何年後か何百年後か分からない。だが、人である以上別れは来る。だが、それを憂いてもどうする事も出来ない。だからこそ、今を一生懸命生きて、悔いなく別れたい。それが人に出来る最高の別れだ。
だから、先を急ごう。この話の続きを紡ぐために…!
暫くこの隠しフロアにお付き合いください...。ルナリアと、彼の最後の物語。見届けてやってくださいm(__)m




