【忘れられた王の墓】Ⅱ
「”””命ノ残響──完全消去ヘ移行スル”””」
何かヤバい…っ!俺の第六感が今すぐここから離れろと命令を下す。
だが...逃げる暇はなさそうだ…。ならば一つ。護るしかない。
「間に合え!!!【月輝盾花】!!!」
ルナリアの魔力が流れ込むと同時に、背後の【月環】が淡く脈動する。
輪の構造が一瞬、無数の花弁状に分割されたかと思うと──
キィィン……カシン……
【月環】が半透明の”銀色の花”を描き、俺の前面に”花弁状”の防壁を展開する。
粒子が交差し、盾環の中心からは”月光”のような優しい光が溢れ出す。
「”””【断罪】”””」
《デス=ザ=リーパー》の無機質な声が響く。それは死神の宣告か、はたまた天からの裁きか。
【死 】の魔力が上空に集中し始める。その異様な光景は暗黒の太陽が出来たと錯覚するほど…。
その太陽が秘める魔力量は想像を絶する程だと言うのは、見るだけで分かると言うモノ。
「俺を中心に囲う様に展開だ!最大出力、出し惜しみしない!!」
この攻撃に出し惜しみは無しだ。その瞬間に生を絶たれる可能性がある。
【月輝盾花】の花弁が俺の周囲を覆う様に配置される。ルナリアもイグナリアもこの範囲に閉じ込める。今この場で一番生存確率高い場所。
「”””【断罪】ノ時──世界ヲ無二”””」
そうして…【死】が降り注がれる。
世界から音が無くなり、【死】の波動が螺旋状に放たれる。触れたものは一瞬にして命の灯を失い、魂すらも掻き消される。
【死】の波動が”銀色の花弁”に衝突し、悲鳴のような金属音が響く。
──ギィィィィィンッ!!
歯を食いしばり、円環の律動を感じ取る。【月環】の”脈動”と、己の鼓動を重ねるようにして、共鳴を強める。
──ガコン…ガコン…ガコン…
【月環】の輝きが一段と強まり、何度か回転する。花弁の一枚一枚に新たな“繊細な模様”が浮かび上がる。それは月の満ち欠け──”月相”を象った紋章。魔力の律動がさらに整い、【月輝】の力が“守護”へと最適化されていく。
死の波動が直撃するたび、花弁が一枚、二枚と砕けていくが──砕けた瞬間に、【月環】がそれを再生する。そして…再生するたびにその花弁がさらに強固となって、【死】の波動を食い止める。
そして…【死の波動】が完全に止まる。
「防ぎ切ったか…とんでもねぇ技使いやがって」
多分だが、あの 【死】の波動に当たった瞬間に【死】の”干渉”が働く。そうなれば俺の”干渉”で否定しなければ…【死】が確定する。此奴の攻撃は何一つ当たってはいけないのだ。
「お前の核、捉えた」
【ルナティック・アイ】により《デス=ザ=リーパー》のコア部分。動力源とでも言うべきところは見つけている。
龍剣”セラ”に魔力を纏わせる。戦えば戦う程強くなる性質をもった剣。
龍剣”セラ”…護りよし、攻めよしの圧倒的性能を誇る武器。
その”セラ”に【灼銀】の魔力を流し込む。
さぁ…二回戦としゃれこもう。
「ここからは乱打戦だ!」
《デス=ザ=リーパー》…確かに物凄い性能をしたアーティファクトだ。だが、生物では無い。
グラディアス=インフェリオみたいに戦うごとに強くなっていく化け物では無い。それにあの時と違い…俺には新しい力、武器、仲間が出来た。ならば勝てない道理はないだろ?
──ドンッ!!!
爆発的な踏み込み。地が砕け、銀月の残像が世界に残される。
視界が霞のように揺れ、次の瞬間には《デス=ザ=リーパー》が目前。
相手が動いたのではなく、俺が動いた。そのステータスと身体強化、それにルナリアの魔力もろもろが合わさって途轍もないステータス補正が得られている。
一太刀──二太刀──三太刀。
ただの連撃ではない。一撃ごとに剣に“赫”が蓄積していく。まるで戦闘そのものを糧にしているかのように。どれほど斬れば”赫”が最大になるのかは分からない。が…分からないなら”次の段階”まで斬り続ければ良い。
コアまで刃は届かない。だが、斬り続ける。どれだけ弾かれようと、俺は斬り続けるだけだ。
「”””損傷ヲ確認。修復システム稼働──修復完了”””」
再生が早い...。あのコアを壊さないと無尽蔵の魔力によりダメージが瞬時に回復されてしまう。
「”””【天裁】”””」
やばいっ!!!
【断罪】の時と似た感じの波動…また来る…っ!
「【月輝盾花】展開!!」
白銀の光が咲き乱れ、花弁の形をしたシールドが周囲に浮かび上がる。
「”””神ノ裁キ”””」
《デス=ザ=リーパー》が手に持つ死神の鎌を一閃。
だが、その斬撃には【死】の魔力が濃密に纏わりついている。
「護りきれ!!」
飛んでくる【死】の斬撃に【月輝盾花】を合わせる。
──ギィィンッ!!!
死神の鎌が盾花に激突。
銀色の火花が夜空に散り、【月輝盾花】が粉々に砕けちる。だが、砕け散っても再生されていく。
「っ…!再生が間に合わない……!」
【死】の斬撃に当たるたびに砕け散る花弁。だが...このまま護っているだけじゃこいつに勝つことは出来ない。
「それでいい……。俺も、削っていくからな……!」
目の前で散っていく銀月の花弁を横目に、攻撃を始める。
儚く散る銀月の花弁、しかし、その先には”赫く”舞う斬撃。
「っ!避けきれないよなっ!!だが...っ!!」
そして銀月の花弁を裂きながら【死】斬撃が到達する。
…だが、その威力は既に脅威ではなくなった。銀月の花弁…【月輝盾花】があいての【死】の魔力を最大限削ぎ取ってくれている。要するにデカい鎌から放たれるただの斬撃になった。
”なら…生身でも受けれるよな?”
そして...斬撃が俺の体に飛んでくる。
「ぐおっ!!!!!!!」
力なく壁に叩きつけられるが…死んでは無い。【死】の魔力を削ぎ取ったおかげで何とかなったみたいだ。
「はっ!!来たぜ来たぜ…俺の体力は残り45%だ」
それが意味することは。
【熾哭の誓約】…戦闘中、体力が50%以下になると自動的に剣身が赫く輝き、攻撃力と敏捷が20%上昇する”セラ”の持つスキル。それが発動するって事だ。
叩きつけられた身体を起こす。身体機能が上昇している…はっきりと感じる。
それに…”セラ”刀身も更に輝きを増している。
「こっからは俺のターンだ!!」
20%の上昇。…それはステータスが大きいほど恩恵がある。俺のステータスは既に人間離れしているだろう。
”赫”の反撃が今始まる。
「うおらぁぁあああ!!!」
お前は只の人形だ。プログラムされたコードに従うだけの人形なんだよ。
”赫”が爆ぜ、【月輝】が暗闇を照らす。【死】の魔力を上書きするように、”銀”が、”赫”が、”黄金”が空間を支配する。
そして…来たっ!
”赫”に染まった剣が、強い輝きを帯び始める。”赫”が最大まで蓄積した証だろう。
「待ってたぜ!!この時を!」
”セラ”に溜まった”赫”を解放する。戦えば戦う程強くなる剣。
「進化しろ!”セラ”ぁぁあああ!!!」
その呼びかけに呼応するように、”赫”が世界を染めた。
天裁は鎌を薙いでるイメージで。斬撃自体は横からなんですよね。だから防御行動をとりながら攻撃が出来るって感じです。これが真正面からの斬撃なら攻撃は出来ないですね。
まだまだ戦闘シーンが続くのでお楽しみください。




