黄金ダンジョン隠しフロアⅠ
「す、すごいな…この鍵ずっと光り輝いてらぁ」
取り敢えず黄金ダンジョンに戻って来た。
”黄金の鍵”・・・彼の黄金へ繋ぐための鍵。封印されし場所で使う事で道は切り開かれる。
多分封印されし場所はこのダンジョンのどこかだと思うが…。
ボス部屋に向かおう。
「うん?こんなのあったっけか?」
ボス部屋までの道。何か壁に文字が書いてあった。
幽閉されし王。真の名をエルドラド。七王にして龍種の頂点に立ちし者。
「龍種の王…もしかして龍王って事か?」
そんなのが隠しフロアのボスだとしたら勝ち目なんて無い。今からでも引き返すのが正解か?
「いや…唯利さんが言ってくれた。俺は…諦めたくない」
それは勇気か、それとも無謀か。本当にヤバそうならば引き返そう。
「なっ!?これがボス部屋!?」
ボス部屋まで到達した…しかし、そこには俺の知っているボス部屋は存在しなかった。
有るのは扉。ボス部屋があった場所には扉がぽつんと無造作に立っているだけだった。
と、取り敢えず鑑定だ。
”黄金への道筋”・・・彼の王へと導く扉。封印の穢れ。黄金の道・難易度SSS
「やっぱ鍵…だよな」
扉を開けるのに必要なモノはある。後は…勇気だけ。この先へ挑むと言う勇気だけだ。
行こう。ここで止まって居たらいつまでたっても隠しフロアに行ける事なんて無いかもしれない!
黄金の鍵を扉に差し込む。形状はガン爺が作ったので合っていなかったが…鍵穴に近づけると自動で形が調節された。
「どんな魔法だ?形状変化の魔法…いや、それも違うな」
そもそもこの扉…実体がない。
「ふぅ...行くか」
鍵を回す。カチャり…。鍵が開く音。
キキィ…。
扉を開ける。その瞬間視界がぐらりと歪み始めた…。
。
。
。
「うっ…何が起こった!?」
眼を開けるとそこは知らない所であった。鍵を開けた瞬間に転移魔法が発動したのだろうか?
だとすると…変える方法が無い。あたりを見回しても扉は見当たらない。閉じ込められた…。
「鍵も…無いな」
消耗品だったのか、鍵はアイテム一覧にもなかった。
「参ったな…。出られないとなると…ここを攻略するか、死ぬかかよ…」
ごめん…唯利さん。俺はもしかしたら…。
「いや、違う。何を考えてんだ、馬鹿野郎」
取り敢えず進もう。何か手がかりがあるかも知れない。
暫く進んだだろうか、しかし特に変化は見当たらない。一本道な為迷うなんてことは無いんだが。こうも景色が変わらないと少し不安になってくるな。
「スライムか?」
目の前に見慣れたスライムが出現する。勿論光り輝いた姿だ。
「お前はもう敵じゃない」
そう言ってスライムに肉薄する。一閃…いつもならこれで終わる戦闘だった。
「なっ!?か、硬い!!」
プラチナソードにアップグレードしたと言うのに刃が全く通らなかった。
こいつは普通のスライムじゃない…。何か、何かおかしい!
クソっ!?どうする?スライムがこっちを向き始めた。
「おいおい…スライムなんて一番低ランクのモンスターだろ…」
鑑定
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光輝のスライム lv350 彼の王に至る道に出現するスライム。
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は?
驚愕、あるいは絶望。
「れ、レベル350…どういう事だよ…」
元のダンジョンの難易度と比べ物にならない物になっている。
まて、焦るな。レベルが全てでは無い。高難易度ダンジョンには低レベルの脅威的な魔物も居ると聞く。その逆かも知れない。
ピチョン…ピチョン。
一旦退散だ。慎重に…慎重に行こう。
。
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小鳥遊帳 人間 20歳 lv4
体力:125
魔力:40
筋力:35
敏捷:25
知力:50
運 :3,500
スキル一覧
鑑定lv3、古代語lv3、剣術lv2、慎重lv1
称号一覧
黄金の鍵を手に入れし者、黄金へ至る者-NEW!
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新しい称号に黄金へ至る者が追加されていた。
”黄金へ至る者”・・・黄金への道を切り開いた者に与えられし称号。黄金への道に居る場合”運”に補正がかかる。
運のステータスが壊れたのはこの称号のせいか…。にしてもここでしか発揮しない称号みたいだな。
どうにか有効活用できないだろうか…。あのスライムをどうするのか作戦を考えよう。
そもそも運のステータスが何に影響しているのか、割と不明だ。
アイテムドロップなどに影響する事は解っているが…。
そういえば…過去に潜ったダンジョンで魔法のスクロールが出たことがあったな…。
「麻痺のスクロール…?」
麻痺のスクロール・・・対象に麻痺を付与する。(消耗品)
使いどころは考えなきゃだな…。
「攻撃が通らないと意味ないからな…」
だが…確か、ごくまれに守備力を無視した攻撃…クリティカルが出る事があると聞く。それを上手く活用できれば…もしかしたら。
「運がとんでもない事になっている内に試しておきたいな…」
麻痺のスクロール…麻痺は対象を数十分の間動けなくさせる状態異常だ。勿論モンスターごとに耐性値が違う為、麻痺が全く効かない相手だっている。
光輝スライムに麻痺が通るなら、その間にクリティカルの発動率を調べよう。倒せそうにないなら麻痺の間に先に進めばいい。
今はこれしか出来ない。
行こう。麻痺のスクロールは一つしかないが…出し惜しみをする相手ではない。
。
「戻って来たぜ…相変わらず…通せんぼってか」
道のど真ん中に光り輝くスライムが立ちはだかっていた。
「スクロール!!」
俺がそう叫ぶと光輝スライムが痺れたように動かなくなった。
「今のうち…!」
スライムに向かって剣で何回も切りつける。
「しっ!しっ!」
「”ぴ”ぎ”ぃ”ぃ”」
偶にだが、スライムの表面が豆腐のように柔らかくなる時がある。多分これがクリティカルなんだろう。
「うおぉぉぉ!!!!!!!!!」
手を休めない。今ある限るの力全てを出し切る!
バシュ、バシュ、バシュ。クリティカルの音が心地良い。体感だが、四回に一度くらいにクリティカルが発動している。運に補正がかかってなかったと考えると寒気がする。
「”ぎ”ぃ”ぃ”!!!」
何分斬り続けただろう。十分?いやそれ以上かもしれない。光輝スライムは麻痺耐性が高く無いのだろう。思った以上に麻痺が続いている。
「はぁっ…はぁっ...」
嘘だろ?もう何回クリティカルを出したと思っているんだ!?
まだだ、最高効率で斬れるようにしよう。まだ、麻痺が続く限り倒せるかもしれない!
「はぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
極限まで無駄を省いた剣戟。一方的に斬りつける。剣術のレベルが上がっているのか、段々斬りつける回数が増えていく。
「頼む!!終わってくれぇぇえ!!!」
動けないスライムに情けないが、これで行けなかった俺は多分ここから生きて出られない。
「はぁぁあ!!!」
「”ぴ”ぃ”ぎ”ぎ”ぎ”」
パリン…。光輝スライムが光の粒子になる。
「はぁっ…はぁっ...」
やったのか…?既に俺の腕は疲労で痙攣している。限界を超えて斬り続けていた為、相当負荷がかかっていたらしい。