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《月花蜜・ルナリア》

7階層。そろそろ”森霊”フロアに近づいてきた。


「ここは毒持ちのモンスターが多いらしいな」


蛇型、毛虫型、ムカデ型の魔物。


「そろそろ試し斬りするか」


《熾哭龍剣セラ=レグルス=ラクリマ》。多分世界で見てもトップクラスの宝剣。


そりゃまだ報告の少ない龍種の素材だ。それも結晶化した特別な素材。


「長くお世話になるぜセラ!」


名前長いし…セラで良いか。多分熾天使のセラフィムから来てるのかな?まあそんなことは何だって良いか。


「お...あいつは」


ー-----------------------------------


《ドクムグリ》 lv 41 ・・・奥歯に猛毒を有する毒蛇。視界の悪い所から奇襲する。


ー-----------------------------------


少し弱いが…まあ切れ味とか調べるには丁度良いか。


「行くぜセラ」


《ドクムグリ》がこちらに感づく前に斬る。


「これは…凄い」


なんの抵抗もなく真っ二つになった。それにこの剣は”赫”の魔力を帯びている。蛇が一瞬で粒子になったが…多分回復阻害の能力もあるな。


これは…龍に相応しい剣だ。



ー-----------------------------------


《血毒腺》・・・この毒に犯されると全身の至る所から出血する。致死性の毒。レア度3


《腐蝕毒液》・・・腐食効果の強い毒。この毒が触れたものは徐々に溶けていく。レア度3


《歪んだ毒牙》・・・古の民も狩に利用した毒牙。その毒牙から出る毒は神経を犯す麻痺毒。レア度3


《優雅な舌》・・・ポイズントードが毎日手入れする舌。調合することで媚薬にもなる。レア度3


《死毒の芽》・・・猛毒の植物の新芽。この植物の毒はあらゆるアルカロイドより強力と言われる程。レア度4


《ノクタリアの雫》・・・夜の”森”から採れる樹液。ポーションの素材として非常に優秀。レア度4


《セイレーンの蜜露》・・・この蜜を生成する草は夜になると人魚のごとく歌いだす。レア度4


《龍胆》・・・竜胆が龍脈のエネルギーを吸って成長した物。様々な調薬に使用される。レア度5


ー-----------------------------------


や、ヤバい。採取が楽しくて丸一日採取してしまった…。


このフロアで採れる素材の最高レアリティは5だが…非常に用途の多い素材だ。《ノクタリアの雫》は夜限定って事もあってなかなか量を確保するのが難しい。このフロア全体歩き回って何とか複数個採ることが出来た。


「イグナリア居るか?」


『………なによ』


ふっ…お前はいつも俺と一緒に居るんだな。愛い奴め。


「精霊ってポーション作れたりしないの?」


なんか精霊のイメージとしてポーションを作ったり、植物の成長を促進させたりするイメージがあるんだよな。


『作れないことないけど、道具がないもん』


「道具さえあれば良いんだな?最高級のモノを用意してやるよ。素材も全部な」


作ってくれるなら俺がダンジョンを攻略している間に作ってくれるんじゃないか?そうなれば効率も大幅に上昇する。なんか精霊が作るポーションの方が価値高そうだし…。


『まあ、そういう事なら…でも素材ちょっと貰ってもいい?色々試したくて』


「良いぜ。お前の好きなようにしな」


俺は頼む立場だ。一方的に利益を得るのは理不尽ってものだ。俺はイグナリアを最高の相棒だと思っている。だから搾取する側にはなりたくない。


『やったっ!じゃあ帳のポーチにある奴勝手に使うから!』


何故か知らんが、コイツ俺の【光輝なる袋】にアクセス出来るんだよな。まあ信頼してるし良いんだけど。


ってことでポーション作成に必要な道具が必要になったな。どこで売ってるのか知らないけど…どうにかなるだろう。と言うより、このダンジョンの宝箱から出る可能性もあるしな。


そんな訳でポーション作りはイグナリアに任せることになったのだった。




「ていっ…にしても俺が強すぎて戦いを愉しむって感じではなくなってきたな」


まあある程度は仕方ないが…。もう少し手ごたえのある敵が出てきてほしいと言う思いはある。


もう15階層だ。素材集めに来ただけだから良いんだけど…やっぱ男たるもの強い相手からのドロップアイテムにはロマンを感じる。


「あ、これが”森霊の石清水”か」


岩場から湧き出る清水。これが噂に聞く”森霊の石清水”だろう。


ー-----------------------------------


”森霊の石清水”・・・長い時間をかけて”森”が浄化した地下水。あらゆるポーションの材料となる神聖な清水。レア度5 グレード C


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ビンゴ!これがあればポーションの核は出来たと言っても過言ではない。これのベースに色々な材料を調合していく。


グレードがあるって事は…もしかしたら《紅蓮石》と同じでグレードが高いと名前も変わるって事だろう。グレードの高い”森霊の石清水”を探す旅が始まるな…。


「あれは…蝶か?」


”森霊の石清水”集めに夢中だったが…ある一点の周りを綺麗な蝶が飛び回っていた。情報データベースを全てみた訳では無いのでこのモンスターは初見だな。


ー-----------------------------------


妖翅蝶(アヤカシアゲハ)》 lv 65 ・・・綺麗な翅とは裏腹に、生えてる花の蜜を吸いつくす害虫。


ー-----------------------------------


ほえぇ…。これは狩っておいた方が良さそうだな。暫くはここで採取したい。こいつの存在は少し不都合だ。


「にしても数が多い。殲滅するか」


そう。”火山”でも殲滅する際に使った、【光輝の斬輪】。


「行くぜセラ」


セラを地面にぶっさす。俺の魔力が剣を伝い地面に流れていく。


そこからは蹂躙。黄金の光が《妖翅蝶》を悉く切り刻んでいく。綺麗に舞う《妖翅蝶》の翅。数秒後には一匹残らず光の粒子となった。


ー-----------------------------------


不気味な複眼・・・蟲型モンスターが落とす複眼。その眼は虚空を見つめており、少し不気味。レア度3


《月花蜜・ルナリア》・・・《妖翅蝶》が様々な蜜を貯め込んだもの。その中でも奇跡的に噛み合い、金色溢れる蜜となったもの。その確率は天文学的確率だと言う。レア度10


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あ、なんか凄そうなのがある。天文学的確率って事はもしかしたら凄いレアドロップ?


「イグナリア!これって凄い?」


『う~ん…起こさないでよ。………って《セレスティアの涙》!?』


「いや《月花蜜・ルナリア》だって。でもセレスティアってなんだ」


イグナリアの口からでた名前と少し違うが…。もしかしたら同じものだけど名称が違うって事かも知れない。


『あぁ…。びっくりしたぁっ!普通にレアアイテムだね。運がいいじゃない』


俺の運のステータスはイグナリアから貰った【指輪】のおかげで7000と言うとんでもない数値になってるからな。


「その《セレスティアの涙》って一体なんだ?これと何が違う?」


少し気になる。もしかしたらこのダンジョンで採れる可能性もある。知っておいて損は無いだろう。


『《セレスティアの涙》は妖精族の亡骸から生える花が幾星霜の時を経て生成した蜜のこと。精霊界の至宝の一つよ』


へぇ~なんか凄そう。妖精と精霊って何が違うんだろ。


『元を辿れば一緒だけどね…妖精は魔力を自然から貰うの。私たちは人から貰うけどね』


なるほど。魔力を貰う対象の違いで一応種族も隔ててるって訳か。興味深いな。


『だけど…精霊も妖精も悪い魔力によって【堕ちたる者】になる可能性があるの。妖精はその割合が高いのよね…』


自然が汚染されると自然と妖精も蝕まれるからか。ってなると難しい話だよな。妖精が魔力に困ることは無いが…堕ちたる者になる確率はずっと高い訳だ。


「辛い事聞いちまったな。お前の仲間を見つけたらなるべく助けてやる」


『ありがとう!でも無理はしないでね。帳が死んだら私も死ぬんだから!』


えっ!?お前も死ぬの!?


『そりゃ契約者が死んだら魔力の供給が出来ないじゃない』


「え、でもお前”火山”で一人だったよな?」


『契約する前は自然から少し魔力を分けて貰えるの。本当に少ないけど。でも契約したら自然は見向きしなくなる。だから契約者とは一心同体。』


えぇ...。俺ってそんな重要なポジションなの?俺の命ってもしかして俺だけのモノじゃない?


『まあ、帳が寿命で死んだら新しく契約出来るけどね』


あ、そうなんだ。なら良かった。いや…良くは無いかも知れないけど。


『でも精霊が成長すればば人間の寿命も延びるけど』


え?なにそれ初耳。


「ど、どれくらい伸びる…?」


『知らない。その人間の魔力次第って聞く。私は帳が初めての契約者だもん』


「お前の初めて、奪っちまったな…」


『なんか言い方がキモい…』


だが…そうか。こいつの命は俺の命。俺の命はこいつの命。もっと大切にしていかないとな。

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