久しぶりの故郷
”火山”ダンジョンから帰って来た。あの助けた少女達から色々惜しまれながら帰宅を決行したが…いずれ合う事もあるかも知れない。それがシーカーだ。
次会ったときはあのチームはさらに強くなっている…そんな気がしてならない。
「ガン爺、雫ちゃんただいま」
「おう、坊主。どうだった”火山”は?」
「いい刺激だったよ。それに色々なレアアイテムも手に入った」
本当に実りあるダンジョン攻略だった。いらない鉱石は売却して資金を増やす事も出来る。あのダンジョンは資金面、装備面で神ダンジョンと言えるのだ。
「これ”火山の結晶”ガン爺に頼まれてたやつ」
「おう、火種はあるか?無ければいい機会だ、俺の方で買っておく」
それは申しわけない。あの火種を渡していいのか判断に迷うが…ガン爺なら大丈夫だろう。
「”火種”もある。でも結構アレな奴だからガン爺意外に内緒な」
【赫輝の火種】を取り出す。これは【赫輝】灼炎鳥のドロップアイテムにあった火種。
多分火種の中でも相当上位に入る奴じゃないか?
「これは…使ってみなきゃわからんが…とんでもないモノを持ってきたな」
火種何て俺が持っていても使い道無いだろうし…ガン爺に渡すのが丸いな。
「取り敢えず…色々素材も集めたから、ガン爺に任せるよ」
”火山”で手に入った素材たちを工房に出す。
グラディアス=インフェリオの素材は暫く考えよう。武器は正直なんだって良い。
「武器は何が良い?やっぱ剣か?」
「まぁ...剣だよなぁ」
ロマンだよなぁ...。
「お前が望むなら銃だって用意できるぞ」
うぅん…でも剣の方がかっこいいしな。剣でいいや。素材が余れば銃も作って良いかもしれない。
「素材が余ればお願いしようかな。雫ちゃんは?」
「雫ならリビングで寝てる。会ってやってくれ。お前が居ない間退屈そうだったよ」
ガン爺が不甲斐なさそうに笑う。自分が仕事一筋で構う暇が無いからこその憂い。
雫ちゃんも解っているから文句も言わないし、我儘も言わない。だから俺がその我儘を一心に引き受けてあげなければいけない。
「雫ちゃん~!」
「帳兄ぃ!あそぼっ!」
うぅん!可愛い。別にロリコンではないが、この子の為ならば命だって惜しくない…そう思えてしまう。
「雫ちゃん…今日はプレゼントあげるよ」
そう。俺が頑張って”火山”で得た鉱石…いや宝石。その中でもとびっきり高純度の宝石だ。
そう、紅蓮石のさらに高純度品。紅蓮精晶だ。
「やったっ。でも帳兄ぃが遊んでくれるだけだ良いよ!」
そういう所も可愛いんだよなぁ。
今日は暫く遊べなかった分名一杯遊んであげよう。
。
。
「ただいま帰りました!」
「帳さん!”火山”はどうでしたか?」
いやぁ死闘に次ぐ死闘でもうしばらく戦いは避けたい所だ。
「色々収穫がありました。クリアは出来ませんでしたけど…成長にはなりましたね」
「なら良かったですね!そういえば…最近ダンジョンでレアモンスターの異常発生が多発しているみたいですけど…”火山”では大丈夫だったんですか?」
”火山”だけでは無かったのか。それはちょっと気がかりだな…。グラディアス=インフェリオみたいな化け物が生まれればそれこそ災害そのもの。
「普通にカマキリがめっちゃ発生してましたよ。でも”火山”だけじゃ無かったんですね」
「それが高難度ダンジョンで発生してるみたいです。高レベルシーカーが討伐に向かってる所ですね…」
進化してなきゃ良いな。グラディアス=インフェリオみたいな化け物がぽこぽこ生まれればダンジョンに潜るいシーカーもたまったものでは無い。
「暫くは控えた方が良いんですかね…」
「う~ん、中級くらいのダンジョンは報告されてないので、高難度じゃ無ければってって感じです」
じゃあ次は少し難易度の低いダンジョンだな。それこそ”森”も良いかもしれない。
”森”は特に素材が美味しいって訳でも無いが…そこで採れる”清水”はあらゆるポーションの元となるらしい。いやぁ...ポーションって良い奴は本当に値が張るからなぁ。これを機にポーション作りも覚えようかな。
「分かりました。暫く高難度ダンジョンは控えておきます」
「はい!それと今ギルドからの緊急以来でポーションの素材の買取りを強化しているらしいです」
ほぉ?それは都合が良いな。自分で使わない分が高い値で売れるなら嬉しいぞ。
次のダンジョンは”森”で決定だな。
「唯利さんこれ日ごろのお礼です…」
「えっ!?良いんですか!?」
雫ちゃんにも渡した紅蓮精晶を唯利さんに渡す。こんなんでお礼になるかどうかは置いといて…まあ感謝を伝えるのは大事だよな。
「勿論です。加工してないですけっど…十分綺麗かなって」
「ありがとうございますっ」
唯利さんが凄いにこにこした顔で言う。喜んでもらえたみたいで良かった。
頑張ってピッケル振り回した甲斐があった。むへへ…。
。
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あの後唯利さんに色々な素材を査定に出して貰った。取り敢えず…数千万は固いと思う。
勿論オークション形式なので想定より低い可能性はあるが…素材の汎用性的にそこまで値下がりはしないと思う。
「久しぶりにこの町を歩いてみるのも良いかもなぁ…」
シーカーになってから家とダンジョンを往復する毎日。家にもそこまで帰る事が無いため、殆どをダンジョンで過ごしていると言っても過言ではない。
「この町に来て何をしたのか…ダンジョン探索くらいだよなぁ…」
少し余裕が出来たからこそこの町を見てみたくなった。俺が住んでいる町。
。
「こんな所に公園なんてあったのか」
夜の公園。街灯も少なく、人通りも少ない。この辺りは正直治安が悪い。シーカーは横柄な性格をしている事も多い。シーカーで無い人のことを見下しがちだ。
だから基本的にシーカーが多い所は治安が悪くなりがちだな。だからシーカーには特別な法律も設けられたし、ダンジョン外で使うのは基本的にご法度。
だが、一部には裏でとんでもない事をしてたりする奴もいる。そう…今目の前にいるこの男みたいに。
「へっ!俺に逆らえばどうなるか分かってんだろ?」
カツアゲ、あるいは恐喝。いやぁまさか…俺の住んでる近くでこんな事が起きてるなんてな。思ったより世界は醜いのかも知れない。
普通の人間ではシーカーには太刀打ちできない。スキルの有無。レベルの格差。
因みに俺は今、グラディアス=インフェリオからドロップしたアイテム。《ミゼリア=ナハト》を羽織りながら後ろで眺めている。
「や、やめてくれ!金なんて持っていない!」
嘘だな。こいつもシーカーだ。上手く一般人に扮しているが…間違いない。演技で弱者を演じているだけだ。
「あ?んなもん関係ねぇな!早く金出せや」
凄い!チンピラもチンピラ!ここまでテンプレなチンピラそうそう居ないぞ。
「はぁ…これって正当防衛だよね?」
男の急変。シーカーは見た目では無い。どんだけ弱そうな見た目でも強力なスキルの有無で変わる。ステータスが全てでは無いのだ。
シーカーになりたての猿には分からんだろうが。
ここからは視る必要も無いな。普通にレベル差、スキル差でこの眼鏡君が勝つだろう。因果応報、見た目で判断したお前の負けだ。
ガン爺が頑張って装備を作ってます




