【光輝断理・終光刃(オウリス・ラグナヴェール)】
「キシ」
再び姿を消す。駄目だ…再展開出来ないっ!!!
どこに現れる!?奴の攻撃を受けてはならない。
「クソがっ!!!!」
死に対する恐怖か、あるいは獣の勘か...。上空に向かい跳躍する。
先程まで俺が立っていた所。そこは奴の鎌により引き裂かれていた。
そして、俺の位置を再確認し、再び奴の鎌が迫りくる。それは不可避の斬撃。避ける事はもう出来ない。防御する事も無理だ。絶望…その一言。
”冷静になれ。帳…お前はこの程度で諦めるのか?”
エルドラドは言ったぞ…”我が見届けてやる”と…。
ならば…敗北は許されない…そうだろう?エルドラドの最初にして最後の臣下。それが俺だ!!!
「全部持ってけ!!!!!!【光輝断理・終光刃】!!!!!!」
俺の中に流れる【光輝】の魔力…その全てを使った今使う最大威力の大技。
俺の魔力、その全てを一点に集める斬撃の最終奥義。
””””””その斬撃が今…グラディアス=インフェリオの【絶望の断鎌】と衝突する”””””””
「キシャァァァァ!!!!!!」
「いい加減にくたばりやがれっ!!!!このクソカマキリが!!!!!」
バシュゥゥッ!!!!
光と闇の波動が正面衝突し、地面が、空が、空間が、ギチギチギチィィィ……ッ!!!と悲鳴を上げる。
鎌と刃が擦れ合い、火花とともに”火炎”が空間を焦がす。
”火炎”ではない、“因果”が爆ぜている。”干渉”による因果の衝突。
どっちの”因果”が勝つか。最後に立っているのは”因果”が勝った方。
「──ギィッ……!!」
「……こっちは、背負ってんだよ──”希望”をな!!!!」
ギャリィィンッ!!
断鎌が軋む。
軋んで、歪んで、砕かれて、”否定”された。
「……終わりだぁああああ!!!お前の“絶望”は──ここで、終わらせる!!」
最後の閃光。
やつの鎌により破損した【光輪】が最大加速で旋回し、帳の”光刃”が完全に《ヴェル=シン=サイズ》の胸を断ち割った。
ズブゥゥゥゥッ……!!!
巨躯が崩れ、双鎌が砕け散り、光の中に溶けて消えた。
その瞬間、空間に張り詰めていた緊張すらも崩れ去るように、静寂が戻る。
「はぁっ...はぁっ…!!!」
最後に立っていたのは俺。あいつの”絶望”と俺の”希望”。打ち勝ったのは俺の”希望”だ。
「…もう限界…………だ………」
立っている事すらままならない。背中の傷、左目の傷。そして…限界を数回超えたことによる代償。
その全てが今俺を襲う。
(護りきる事は出来た…な)
俺の意識はそこで途切れた。
。
。
。
(なんだこの空間…俺は死んだのか?)
目の前に広がる空間。えも言われぬ気持ち悪さが胸中を支配する。
(あれは…女の子…?)
誰かの記憶か?それにしても知らない少女だ。
その見すぼらしい恰好。多分…位の高い身分では無いだろう。
だが…その美しい銀髪に整った顔立ち。それに…エルドラドと”対を為す”ような【灼銀の瞳】。
(クソっ!!ここは何処だ?)
自身の体が無い事もそうだ。死後の世界にしては気持ち悪いぞ!
(うん?あれは…)
少女が駆け寄った先に居た人物。
…似ている。その金色の紋様広がる肌。全てを見通す【エルドラドの瞳】。その存在を象徴するかのような【光翼】。
「エル君っ!!おかえりなさい!」
えぇっ!!!アレまさかエルドラド!?めっちゃイケメンやん!!
「セリア…いい加減その服を変えなさい」
「えぇ~だってエル君が拾ってくれた時のやつだしぃ…」
「拾った訳じゃ…ほれ、今から仕立てに行くぞ」
「エル君が選んでくれるの!?ならいくっ!!」
なんか…幸せそうだな…。互いに信頼し合っている関係だ。
「セリアッ!隠れろ!!」
だが…そんな平穏も長くは続かなかった。
「失礼する。私は王直属の近衛騎士シャレバと言う。銀髪の髪と瞳の少女を見なかっただろうか」
「いや、見てないな。生憎最近は魔術の研究に明け暮れていてな」
「虚偽は極刑であるぞ」
「私が嘘をついているとでも?」
「いえ、本当ならば謝罪しよう」
「なら早く帰ってくれたまえ。私は研究で忙しいんだから」
「失礼した。では見かけたら連絡をするように」
そう言って部屋に入って来た男が出ていった。どこかの王国か。王直属の近衛騎士とか言ってたもんな。
「もう出てきていいよセリア」
「うぅ…なんで私のこと…」
「キミも僕も龍種だからね。…いやキミは純粋な龍種では無いけど」
龍種って…完全に人の見た目だが…擬人化って奴か?
「もういやっ!こんな力も…こんな世界もっ!!全部きらい!」
「落ち着いて。セリアは僕が”護る”から」
ひゅ~。それはもうプロポーズみたいなものだろう。
「エル君……でもエル君が”護って”くれるなら安心だね」
「僕はこれでも”龍種の王”だったからね」
だった?まあ良いか。
「エル君の嘘つき~王様だったらこんなぼろぼろの家にすんでないよ!」
「ボロボロって言うな!これでも頑張って作ったんだ」
へぇ...エルドラドにもこんな時があったんだなぁ。
セリアと言う少女がこれからどうなっていくのか…少し気になってしまった。
「さぁ...今日は休むよ」
そう言ってランプの灯を消す。
(待ってくれ!まだ、まだ見させてくれよ!!!)
ランプの灯が消えたと同時にこの世界が崩壊していく。ここから先はまだ見せないとでも言うかのように。
一応...だれないように戦闘シーンを圧縮してるんですが...戦闘シーンってもっと長く書いた方が良いですかね...。書いてる時は長すぎるなぁって思うんですけど、いざ投稿するってなるとやっぱ短いか?と言う気持ちになる。