【絶望の断鎌(ヴェル=シン=サイズ)】
「…冗談だろ。また進化したってのか?」
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《絶望の断鎌》グラディアス=インフェリオ lv 600 ・・・ 帳との死闘を経て新たに進化したグラディアス=インフェリオ。そのステルス能力は何者にも捉えられる事は無く、あらゆるものを引き裂く鎌は死神の鎌すら凌駕する。
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お、おい...《称号》付きになってんじゃねぇか…。
「カテ…イノチヲタツ」
「喋れるようになったのか…ますます化け物じみて来たな」
この戦闘経験値に加え…人の言語を話す知能。既に【赫輝】灼炎鳥を超えている。レベルで劣っていようとも、その凶悪性はあの【赫輝】を凌駕している。
あの鎌は…少し気を付けた方が良さそうだ。
進化によってさらに禍々しくなった鎌。それは称号からも伺える。
元々は炎属性だったが…こいつ、属性が分からない。
進化によって属性を捨ててステルスと切れ味に寄ったか?
「お前の鎌か、俺の【光輝盾鱗】どっちが勝つか」
スッ...とグラディアス=インフェリオの姿が消える。今や魔力反応も何もかもがこの世から消えている。本当に亡霊にでもなったみたいだ。
「だが、俺の未来視は関係ない」
──視界再展開:0.9秒先
──選択肢:
・回避成功率 0%
・防御成功率 100%
回避できないか…ならば俺の【光輝盾鱗】で迎え撃とう。
「【光輝盾鱗】展開。出力70%」
俺の周囲に黄金の鱗が展開される。さっきも見せたシールド。
どうやってこれに対処して見せる、グラディアス=インフェリオ…ッ!!
「キシ…シャァ!!」
突如背後から現れる。
そして…グラディアス=インフェリオの鎌が俺の【光輝盾鱗】と激突する。
先程までなら俺の【光輝盾鱗】に成す術も無かっただろう。
だが…
ミシッ…
黄金の鱗に亀裂が走る。いや…これは…。
「お前もかっ!!!」
この”力”は…”干渉”の力…進化でそこまで至ったのか!?
黄金龍王の力を借りてようやく使える”干渉”…それを奴は自力で習得している。
俺の【光輝盾鱗】が干渉により儚くも光の粒子となる。
己のプライドをかけた戦い…第一回は俺の敗北みたいだ。
何故か…グラディアス=インフェリオが笑ったような気がした。その顔に笑みなど全く張り付いていないと言うのに…。
「第二回戦といこうか…っ!!」
互いに”干渉”の力を用いた戦い。
「【光輝盾鱗】展開、出力マックスだ!」
俺の中に流れる魔力をごっそりと持っていかれる。
魔力と言う概念があるのか知らないが…あいつは純粋な切れ味だ。多分魔力を消費するのは俺の【光輝盾鱗】に対する干渉のみだろう。
「【身体強化煌】、畳みかけるぜ」
身体強化も再発動させる。後は純粋な力比べだ。
「【光輝終輪】っ!!」
終の光輪が再びこの世界に降臨する。が、ステルス状態が進化したことにより追尾は出来なくなっている。
自身で照準を定め、相手に命中させる必要がある。そこは未来視で補おう。
「キシ」
再びグラディアス=インフェリオの姿が消える。
「【エルドラドの瞳】再展開!!」
──視界再展開:1.5秒先
──選択肢:
・回避成功率 0%
・防御成功率 100%
・カウンター成功率24%
「十分だ」
………………視えた。
後方からの不可避の斬撃。俺の【光輝盾鱗】すら砕いたその鎌による斬撃。
「収束しろ【光輝盾鱗】!!」
四方に展開されている【光輝盾鱗】を後方一転に集中させる。
この【光輝盾鱗】の量は幾ら干渉があっても厳しいものがあるだろう。
「…キシ」
そして俺の【光輝盾鱗】に弾かれたことによる反動…。その隙。
「そこだぁあああ!!!!!」
反動によりのけ反っているグラディアス=インフェリオに【光輝終輪】を射出。
「キシ…」
が...グラディアス=インフェリオの鎌に光輪がぶった切られる。
流石は干渉の力。俺の【光輝終輪】(オウリス・フィオール)すらも断ち切るか…。
流石…【絶望の断鎌】だ。
長引くともしかしたらこっちが不利なのか…?魔力の消費はやはり無視できない。
アイツは魔力の消費が少ない分、継続戦闘に向いている。
これは…一気に片を付けないと不味いな。
「出力最大【光輝終輪】(オウリス・フィオール)」
が、奴の姿はもう既に消えていた。
クソッ…視界展開を急がないと…。奴を見失うのは非常に不味い。奴の攻撃をまともに受ければ洒落にならない事になる。
「視界再展か......不味いっ!?」
後ろから唐突な気配。それが意味する事…すなわち防御、回避が間に合わないという事。
視界展開が間に合わなかった…っ!!
「キシァッ!!!」
奴の鎌が迫る。不可避の一撃。あらゆるモノを引き裂くその鎌が俺の背中に今、到達しようとしている。
「間に合わねぇっ!!!」
必死の回避。上半身を死ぬ気で捻る。多分今までで一番反射神経と言うものを活用しただろう。
ブシュゥゥゥッ……!
が…完全に避けきる事は出来なかった。俺の背中から勢いよく血液が噴出する。
「ぐはっ!?」
俺だってそれなりにステータスは高い。【身体強化煌】によるバフもある。
だが…奴の鎌はまるで豆腐でも斬るかのように俺の背中を引き裂いた。
「キシャァァァ」
不敵な笑み。いや、愉悦。モンスターが戦いを愉しんでいる。
「【光輪】も引き裂かれたか…」
俺の背後に構築されていた【光輪】も奴の斬撃により破損している。
不味い…想定以上の強さだ。
やはりレベルが全てではない。その戦闘経験値、戦闘センス。その全てをこいつは持っている。
「そのセンス…このまま進化し続けたらと考えると寒気がする」
”絶望”と呼ぶに相応しい。だが...まだ未来視は使える。後れを取ったが、もう見失わない。
「キシッ」
再び姿が消える。今回は遅れない。
「未来視展開!」
──視界再展開:0.2秒先
──選択肢:
・回避成功率 0%
・防御成功率 0%
・カウンター成功率 0%
嘘だろ?
「不味いッ!?【光輝終輪】最大出りょ…っく!?」
奴の鎌が目前に現れる。早い…っ!早すぎる!
奴は俺との戦闘でずっと成長し続けている。それは現在進行形だ。
バシュッ!!
「ぐぁっ!?」
避けきれずに奴の鎌が俺の眼を引き裂いた。
(こいつっ!?俺の眼を狙って!?)
グラディアス=インフェリオの唯一の負け筋。未来視…それを狙って奴は俺の眼を狙ってきた。
生憎裂けたのは左目だけだが…【エルドラドの瞳】の再展開が右目だけになってしまう。
頑張れグラディアス=インフェリオ!!