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絶望の正体

「もみじちゃん、このフロアボス倒せばやっと地底湖フロアだね」


アルマが言う。そう…このフロアのボス…ムズラグ=ヴァルを倒せばもう蟲型モンスターを見なくても済む。


「そうね…皆!気を引き締めて!ムズラグ=ヴァルは強敵よ、でも私たちなら勝てるわ!」


レベルも相当上がった。回復役のアルマも居る。タンクをしてくれている秋ちゃんには優先的に強い装備を付けさせている。完璧な布陣。ムズラグ=ヴァルの情報を見ても余裕をもって討伐出来る筈。


目の前に広がる空間。ムズラグ=ヴァルのスポーンする空間。あそこに行けばムズラグ=ヴァルと戦う事になる。準備は万端。皆も気を引き締めたのか顔が険しくなる。


「行くよ!」


ボスフロアに入る。

だが…ムズラグ=ヴァルは何処にも居なかった。


「え?…どういう事かしら」


静寂の空間。話によると入ってすぐに特大サイズのムカデが襲い掛かってくるって聞いていたのだが…。


「もみじちゃん…なんか嫌な予感がする…」


アルマが近づいてくる。確かに…何故だろう。いやな予感が止まらない。

ムズラグ=ヴァルの不在、一体何が起こっていると言うのだ。


「でもさ、ボスが居ないなら次の階層に行けるんじゃない!?」


それはそうかも知れない。


「そうね…皆次の階層に繋がるゲートを探しましょう!」



「無いね…もみじちゃんどうする?」


階層を繋ぐゲートが無いとなると…何か試練をクリアしなければならないという事だろうか。


「うぅん…もしかしたら何か見落としてるかも」


出口は空いている。閉じ込められた訳では無い。そもそも何故出口が閉まらない?ボスフロアは入れば扉が閉まる。何かがおかしい。


「ねぇリーダー、なんかここに落ちてたけど」


「どれ?少し見せて貰える?」


遠距離魔術を得意とする愛理が落ちていた物を持ってくる。


「赤い甲殻?多分モンスターのドロップアイテムだと思う」


ボスフロアに何故ドロップアイテムが?どういう事だろう。

ボスフロアが空いている事、中にあったドロップアイテム。


「もみじちゃんっ!?あれ!!!」


アルマが叫ぶ。その鬼気迫る叫び声に皆がアルマの方に注目する。


「な、なにあれ…」


アルマの指さす方。そこに居るモノ。


「か、カマキリ…?」


確か、レアモンスター枠にカマキリ型のモンスターも居たと記憶している。

だが…あまりに異様な姿をしている。情報データベースで見たカマキリ型のモンスターとはかけ離れた姿。その嫌な予感。


「み、皆!陣形を崩さないで!アルマを最後方に、秋ちゃんは前線で!!」


咄嗟に叫ぶ。が、既にカマキリの姿が消えていた。


(どこ!?どこに行ったの!?)


この一瞬で視界から姿を消した。あまりの出来事に声も出せないでいる。

逃げてくれたのならそれでいい。杞憂で終わってくれるなら、それが一番だ。


だが…現実はそんな甘いものでは無かった。陣形の最後方、すなわちアルマの居る場所。

そこに奴が現れた。


「…えっ?」


アルマの困惑する声。私たちの誰もが目の前に居たカマキリの姿を捉える事が出来なかったのだ。


「も、もみじちゃ...」


カマキリの鎌が一瞬ぶれる。


「あ、アルマっ!!!!!」


嫌な予感がした。ずっと嫌な予感がしていた。


びちゃっ…


アルマの上半身と下半身が別方向に飛んでいく。


「キシャ」


「う、うわぁぁああああ!!!」


パニックの伝染。回復役が一瞬でやられたことによるパニック。


「あ、アルマ…?」


現実を受け入れられずにいる。ずっと一緒に居た。幼いころから。


ずっと私を支えてくれた親友。その親友が一瞬にして殺された。その現実は受け入れるにはあまりに残酷だった。


「り、リーダー!!撤退しなきゃ!!!」


「で、でも!?アルマが!アルマがまだあそこに!!!」


まだ死んではいない。内臓も飛び出ているが、息はある。まだ諦めるには早い。


「アルマはもう助からない!リーダー!!早くここから出なきゃ!!」


助からない?何故…アルマはまだ生きている。


「まだ、まだ死んでない!諦めないで!!」


「あの化け物相手にどうやってアルマを回収するの!?リーダーが居無くなれば私たちまで死ぬかも知れないんだよ!?」


でも!でも!簡単に見捨てるには関係が深すぎるの…。アルマが死ぬなら、私も死ぬ。初めのころはそれくらいの覚悟だった。でも、チームが大きくなるにつれ、そんな事は全く頭にも浮かばなくなった。私たちならいける。そんな思いがずっとあったのだ。


「あなた達は逃げて!アルマは、アルマは私一人で助けるからっ!!!」


そうこうしている内にもアルマの血は止めどなく溢れている。もう時間が無い。


マジックポーチから一番回復効果の高いポーションを取り出す。


「こんのぉぉぉおおおお!!!!!」


カマキリ型のモンスター。見たことも無いそいつは私の突撃を蟻でも潰すかのように弾き飛ばした。


バキッ!!


骨が折れる。多分内臓もやられた。だめだ…レベルが違いすぎる…。意識が遠のく。

アルマ…ごめん。ごめんね、シーカーになんて誘っちゃって…。後悔の念。今さら後悔しても遅いが、後悔せずにはいられなかった。



ムカデ型のボスが居ない。すなわち何者かによって倒されている...

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