Season.One 車上班添乗編 Story.3 お元気で!
押忍身新治のオフショットです。後日談として、書き手は詩野忍、話し手は大鷲見美歩、が担当します。
よろしかったら最後までお付き合い下さりますようよろしくお願いいたします。
新くん?色々な方々の所へお届けにお伺いするとキレイな女性の方がいらして何かあったりするんじゃない?ねえ!ねえ?
と、疑いの目を向けるとあっさり白状です。
「ドキドキする綺麗な方はたくさんいらっしゃいました」
「でも、美歩様ほどでも」本当に?
美歩の写真を独身当時はいつも肌見放さず持ち歩いていたらしく。よしよし!です。浮気する気なし?だったよね?
「相互に危ない瞬間は何度もありました」
「夏は目のやりばに困ること多々」
「ご飯今作ったから食べてかない?」と誘われたり。
新くんの声は少し高めの中性的。
「何々様、お届け物です!」声を掛けると、
はーい!と返事されたと同時に出て来られた女性の方のお姿がバスタオル一枚で。
新くんはすかさずドアを閉め外へ、その方は奥に入られ普段着に着替えられ。
声を聞いた時、てっきり女性の乗務員の方だと思いつい。
「見苦しい姿を見せてしまいごめんなさい」と女性の方が。
新くん、「私こそ不躾な振る舞いお許し下さい」でした。あれま!
私、新くんには今まで肩も見せたこともなかったから大丈夫だった?
本当のこと、言ってみん!
「アンタ、かんころもち、食べれるか?」
お届け先でそう声を掛けて下さったのは、80歳台のおばあちゃんでお一人でお暮らしでした。おばあちゃんの故郷の五島列島からの定期便で、かんころもちは特産品だと。
「もう歯がないからもらっておくれ」とおばあちゃん。
それから新くんとおばあちゃんとのお付き合いが始まりました。
送って貰ったお返しは、どう送ったらいい?新くんが代筆です。
新くんからは、お礼に名古屋のお菓子を。
時間が少し空いた時は「五島列島の話し聞かせて!」と話し相手になったり。
おばあちゃんは、周囲の方々に、新くんを息子のようなボーイフレンドができたよー!
って嬉しそうに話されていたそうです。
定期的に診療所へ受診しなければならず、徒歩で一時間はゆうにかかる道のり。を平気な顔をして「アンタに会いたいから元気でおらんと」にこり。
冬の寒い日「ほれ、今日はぶりが届いたから三枚おろしにするで、夜時間空いたら食べにおいで」
新くんは離任がせまり、御礼などの挨拶まわりでなかなか時間を割くことができず、おばあちゃんのお家に着いた時は22時30分過ぎ。そっと寄ってみると、縁側の引き戸がいつでも部屋に上がれるよう半分開いたまま、こたつに入ってテーブルに寄り添ってすやすや。そらゃあそうだよね。それに寒かっただろうに。
テーブルには手つかずのお刺身が。ごめんね。遅くなり。
新くんは、おばあちゃんの肩にそっと近くにあった毛布をかけ、引き戸を閉め、いままでのおこころざしに感謝の手紙と離任の挨拶を添えて。おやすみなさい。
数ヶ月後、おばあちゃんのエリアの店から、この時間までにおばあちゃんの家に来れたら、より必ず来てほしいとの強い要望です。
詳細を聞かず向かったものの、でも嫌な予感。
おばあちゃんの家に到着です。
白い絹に包まれた箱を持った方が「母が大変お世話になりました」
「あなた様にお会いし生きるって楽しいんだって連絡するたびに話し」
「そんなあなた様にいつかお会いできればと」
「でも、こんな形に。でも最後にこんな形でお会いできたことに母は大変喜んでいると思います」
「多忙な方とお聞きしました。貴重な時間を割いてお越し下さりありがとうございました」
新くんとおばあちゃん。この日が最後のお別れとなりました。
「お元気で!」
いかがでした?よろしかったら御意見、御感想を、将来の糧として、書き手の詩野忍、話し手の大鷲見美歩、心よりお待ち申し上げます。本日はお寄り下さいましてありがとうございました。
あったか!ほっこり!でがんばります。よろしくお願いいたします。