このビー玉は渡せない
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
飆靡様です〜。照れてくれたらきっと可愛い。
生まれた時からならず者。疎まれて当然。弾かれて当然。だから居場所なんぞなく、ただひたすら流離い歩く。これが俺の日常だった。クソつまんねぇ日常だった。
そうやって今日も適当に街を歩いていた時の事だった。チビが一人、道端で泣きじゃくっていた。辺りを見ても親がいない。どうやらはぐれた様だった。
別に。助けたって意味が無い。放っておけば良い。けれども泣きじゃくるその様が、俺の幼少期と重なった。
「おい、チビ。ギャーギャー喚くな。うるせーから」
俺が話し掛けると、チビは涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、ピタリと泣き止んだ。
「お兄ちゃん、誰?」
「誰でも良いだろ。んなもん。で、何で泣いてんだよ」
「お母さんとはぐれちゃった……」
そんな事だろうと思った。子供が一人で泣きじゃくる理由なんて、それぐらいしか浮かばない。
……何。ただの気の迷いだ。別に助けようっていう魂胆じゃねぇ。そう自分に言い聞かせながら、チビの身体を自分の肩口に乗せてやった。
「ほら、お前も探せ。お前のかーちゃん」
チビに特徴を聞いたところで分かる訳が無いのだから、神通力を使って勝手に探る。そして数多に張り巡らされた糸の中から、ただ一つを探し出す。
すると、小指にくるくると巻き付いた糸が、一つの道を指し示していた。
「俺は飛ばすタチだかんな。振り落とされんなよ」
そう言って、旋風起こして、舞い上がる。人混み掻き分けてなんて、まどろっこしい真似は性にあわなねぇ。そうしてあっという間に、一人の女の前に足を下ろす。
「お母さん!!」
前には血眼になって探す母の姿があった。整えられた髪は乱れ、息は上がり、それさえ構わず声を上げ続ける。
俺のお役目はこれで御免。チビに『駄賃』と言ったところで、惚けた顔されて終いだと分かっていたから、そのまま飛び上がろうとした時だった。しかしちっこい手が俺の着物を掴んで離さない。
「んだよ。あれがお前のかーちゃんだろ?」
「あのね、お兄ちゃん。これ、御礼」
渡されたのは小さな玉。なんの価値もない。硝子玉。それを懸命にお付けてくる。
「あ゛? 要らねーよ。そんなもん」
「いいから。あげるの」
チビはそれを受け取るまで、断固として俺の着物を離さなかった。渋々受け取って、袂にしまう。
「返さねーぞ。チビ」
「いいの。私の宝物だから、絶対、ぜーったい大事にしてね。それ持ってるとね、また会えるんだよって、お母さん言ってたの」
んだよ。その迷信。流行ってんのか? しかしまぁ、興が乗った。たまには信じて見るのも良いかも知れない。
「飆靡、お前、まだ献上品を持っているのでしょう?」
「これ以上、何もねぇよ!!」
姉貴直々に霊気と言うなの身ぐるみを剥がされ、暴れる事さえ叶わない。これ以上、一体何を奪おうと言うのか。
しかし姉貴は目敏く俺の着物の袂に目を光らせると、そのなまっ白い指で指し示した。
「飆靡、その袂に入っているのはなんです?」
「これは渡さねぇ!! 」
自分でも驚く程の怒号だった。其れは火吹き龍の様な、火力を持って浴びにかかる。浴びせられた本人は、惚けた顔をして、此方を見る。
「まぁ……良いでしょう。けれども飆靡、お前を愛する者に対しても、その様な有り様ではいけませんよ」
そう言って、姉貴は僅かに顔を綻ばせた。全部見た上で、試しやがった様だった。
「お前を愛する者の情は、私にも分かります。少しづつ良い方に変わっておりますね」
「うるせー。話済んだら俺は帰んぞ」
そうして取り残された上様は、また静かに顔を綻ばせた。僅かに羞恥に歪んだ顔は、自らが奪った献上品よりも遥かに価値があった。
刺し殺す話を書いたので、普通に優しい話が書きたくなりました。
久し振りの飆靡様。モデルとなった神様がいらっしゃるので、様付け。
本当の意味で『愛を知らない』方。『知らなかった』方。
幼少期、親元から離されたので親の愛を知らない。
だから受け入れられた際には、滅茶苦茶試し行動しちゃう。
自分がどれだけならず者でも、何もしなくても、『此処に居て良いんだよ』って言われたい。無償の愛が欲しい。
だから色々やって風来坊になり、また色々あって愛情の扱い方を知った方。
でも完璧に扱いを知った訳では無いので、こんな対応。
内心滅茶苦茶嬉しいのに、上手く言葉に出来ない。
疎まれることに慣れていて、感謝される事に慣れてないので、素直に『嬉しいよ』と言えない。
『嬉しくなんかねーよ!! バーカ!!』とか真っ赤になって言っちゃう。
まぁ吐き出したかった言葉はこれぐらいにして。
飆靡様がやた『駄賃』を求める理由。
定期的に姉上様に力の大半を削がれてしまうから。
『お前が力を持つと、振りかざして誰かを傷付け兼ねない。そうなる前に私が預かろう』
という姉上様のご判断。
※姉上様は『飆靡様被害者の会代表取締役』です。
これだけ削がれても、他の方々とトントンなんですよ。
だから元の力に少しでも近づける為に、信者、助けた方から『駄賃』を求めます。
『ふん。お前らが差し出せるのなんて、精々「駄賃」適度のもんだろ?』
※本格的な霊気に戻るには、一人のちょっとした信仰だけじゃ無理なんです。もう雀の涙。
でも『じゃあ、何も渡しませんよ。「駄賃」なんでしょ?』と言ったら、真っ赤になって怒ります。
『要らねーとは言ってねーだろ!! 良いから早く寄越せ!!』って。
ツンデレなんです。もうどうしよもない程。




