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【完結】3年ぶりに目覚めたら、いきなり溺愛始まりました!?  作者: らしか


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第五十六話

執務室に戻った私は、何食わぬ顔をして普段通りの仕事をこなした。何が特異な行動をして周りに勘付かれてしまってはいけないからだ。



「リア、そろそろ休憩にしない?」

「そうね、キリがいいしそうしましょうか」


お昼ごろ、ステラに促されてお昼休憩を取ることにした。今日はノーランとジェフも一緒に昼食を取ることになっている。


「今日は午前がピークだったわね。午後はゆっくりできるかしら」

「そんなことを言っていたら忙しくなるんだよ…」


何気ないステラとジェフの会話だが、ノーランだけがどこか表情を曇らせている。


「ノーラン、どうかしたの?」

「…まぁね。ジェフ、人払いを頼める?」

「あぁ、分かった」


ジェフが席を立ち、扉の裏側に控えている使用人と護衛を下がらせた。関係者以外に聞かれては困る話をするのだ。


「聞いてもいいものか、悩んでいたんだけど。ジェフとリア、ディレンスの力を受け取ったよね?」

「えぇっ!? そうなの!」

「あぁ、その通りだ。よく分かったね」


やっぱりね、という顔をしたノーランと心底驚いているステラ。ノーランは大精霊ピシュル様の加護を受けているだけあって他の愛し子よりも精霊の気配等に敏感だ。


「明らかに纏っている力の量が違うからね。今までの倍以上あるんじゃないかな」

「僕たちも実際にどれくらい増えたのか分かっていないんだ」


力の量というものは、目で見て分かるものではない。大精霊で在らせらるピシュル様はお分かりになるらしいが、半精霊である私たちに分かるはずはない。結局のところ、どれくらい精霊術が使えるかで判断する他ないのだ。


「ピシュル様と連絡がついたら、詳しいことをお伺いしようと思っているのだけれどね。いつになるかは分からないわ」


ノーランはなるほどね、と頷いて続けた。


「実は、僕たち2人もディレンスの加護を受けることになったんだ。父上の判断でね」

「いざという時に使える力は多い方がいいでしょう、という話になったの」


元はステラの命を狙っていた信精教団の主であるディレンスから加護を受けることに対し、政治的にも安全面的にもどうなのか、という議論がずっと行われていた。私とジェフは陛下に説明をしたが、最終的な決定はなされていないままだった。ようやく決まったということは、それをピシュル様にお伝えして受け入れる準備ができたということだ。


「私たちも常に側で守っていられるわけではないしね」

「となると、やっぱり早くピシュル様に連絡を取りたいところだね…」


私たちの能力のことも、ノーランたちの加護のことも、ピシュル様と連絡が取れなければ何も始まらない。緊急事態ではないので気長に待つしかないとはいえ。


「名前が聞こえたので来てみましたが…」

「「ピシュル様!?」」


連絡が取れないと思えば、こうして突然現れる。全く、精霊とは気まぐれな存在だ。


「ジェフリーとフェリシア、2人とも無事にディレンスの力を受け取ったようですね。…また後でその件についてはお話ししなければなりませんが」


「ノーランとステラが加護を受けることにした、という話も聞いています。時期はいつになるか分かりませんが、ステラはしばらく延期にした方が良さそうですかね」


ピシュル様は、ふむ、とステラの方を見やって言った。


「それはどうしてですか?」

「私の口から言っても良いものか分かりませんね」


瞬間、ノーランの顔に多くの感情が出て、深く頷いた。

すぐに、ピシュル様と加護の力で意思疎通をしたのだと分かった。


「ノーランから許可を得たので伝えますが、ステラの体には今、新しい生命が宿っています」

「えっ!」

「本当に!?」


あまりの衝撃に、ステラの手を反射的に取ってしまう。

幼い頃から共に過ごしてきた親友の、こんなにもおめでたい事実に冷静でいられるわけがない。


「精霊の加護を受けた人間は、その力を体内で循環させています。常時であれば、どのタイミングで加護を受けても問題はないのですが、胎児がいる場合は少々厄介なのです。胎児に加護の影響を与えてはいけないので、過度な力の増加は良くありません。新たな加護を受けるなどもってのほか。ノーランとステラの子である以上、精霊の加護を受けずに生まれてくるなんてことは考えにくいですが、万が一の異常をきたしても良くありませんから、ステラへの加護は延期にした方が良いですね」


王太子夫妻である2人の第1子、つまりはこのクロサイトの未来である御子を危険に晒すことなどあってはならない。ここは安全択を取るべきだ。


「…い、ろいろと話が出てきて混乱しているわ。とりあえず加護を受けるのは延期にするということだけは理解できたけれど」


「すぐに決めなければならないということもありませんから、ゆっくりと話し合ってください。ステラは人間の中でもしがらみの多い立場でしょうし」


「分かりました。ありがとうございます」


ステラは深々とお礼をして、そっと自分の腹部に手を当てた。


「何だか信じられないわ。本当にここに、私たちの子どもがいるだなんて」

「おめでとう、ステラ、ノーラン。今から会えるのが楽しみだわ」


2人の子どもだなんて、可愛くないはずがない。溺愛している未来が見えるくらいだ。

と言っても、ここからの私たちは多忙を極めることになるだろう。ノーランとステラの子どもが生まれるということが、この国にとってどれほどの重大案件であるかは語るまでもない。王城の人間は、新たな王族を迎える準備に奔走するのだ。



「ジェフリーとフェリシアには別途私から話をしなければならないことがあります。隣の部屋で待っているので、落ち着いたら来てください」


そう言ってピシュル様は扉の向こうへと消えて行った。ディレンスの力を受け取ったことに関する話であることは確実だが、ノーランたちの前で話すことができない理由は見当がつかない。一体、何の話をしようとされているのだろうか。

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