第0話 天然?
明日から高校生だ。と、一人意気込む。
俺、阿坂雄一は、明日から高校へ入学する。あまり有名な高校ではないが、俺にとって丁度良い偏差値であったし、ビルで囲まれた狭苦しいところではなく、少し標高が高く、木々で覆われている自然の美しいところだ。ただ、パン売りの車がこないのは少し不便で、それを理由にここへ進学しない人も多い。
そして、姉がこの高校へ通っていたというのがこの高校を選んだ理由の中で一番大きい。3つ年が離れているので俺が高校へ入ると丁度大学生になる。同じ学校でなくとも、先輩がいるのは心強い。
明日から高校生だ。と、再度意気込む。
すると後ろから、クスクスと、ちび○子ちゃんの野○さんのような笑い声がきこえてきた。こんな独特な笑い方をするのは一人しかいない。
「あんたさあ、何一人でガッツポーズしてるの?」
姉、阿坂陽菜だった。
どうやら自分でも気付かなかったが、ガッツポーズをとっていたらしい。
だが、つい数週間前まで中学生だった人にとって、高校生は憧れだったから、仕方のないことだとも思える。
「ああ、あんた、あたしのいた高校へ入るのよね?」
姉がまた笑った。
「あそこね、竜とか、妖精とかいるから気をつけてね。」
「はあ?」
「ツマリソノ、ガッコウノ不良トカ、まどんなノコトデスカ?オジョウサン。」
「何で急に外国人の覚えたてほやほやの日本語みたいなしゃべり方をするのかしら?物語始まって最初の言葉がそれだと、頭のおかしい子と思われるわよ、読者に。」
姉の言っていることは良く分からなかったが、やばそうなので反省はしておこう。
普段の姉ならあまり冗談めいたことは言わないはずなのに今日に限って珍しいな。なんか変な物でも食ったか?
「嫌ねぇ。あんたと一緒にされても困るわ。」
「俺を正体不明のものを何でも口に運ぶような赤ん坊と勘違いしているんじゃないだろうな?」
「・・・」
「待て。回想を始めるな。ぼけーっとした目で俺を見つめるんじゃない。」
姉ははっきり言って生粋の天然野郎だ。そばに誰かいないと正直不安なのだが、これでも学年トップで卒業してきたというからびっくりだ。いやほんと。
「あそこはほんとに面白いよ。」
これは姉の言葉だ。
「なにが?文化祭とか?」
「まあ、おもしろいわね。それにあそこ、丘の丁度森のある部分に建ってるから、文化祭じゃなくて、緑丘祭。」
ほう、それは初耳だ。だが今のしゃべり方だとどうやらビンゴではなかったらしい。
「じゃああれか?校長がズラ?」
「・・・ピンポイントの面白いだねえ。」
「それならお前のことだからオカルト系の、学校の七不思議がほんとうに起きたーとか?」
「それも結構ピンポイントだと思う。・・・あんた、あたしのことをよく天然っていうけど、あんたもそんなに変わらないと思うよ?」
失礼な。
「まあ、最後のやつが一番近かったなあ。」
なんだよ。近かったじゃないか。
「わかった?」
わからない。
「最初にいったと思うんだけど。」
・・・妖精とか竜とかの話か?・・・ほんきだったのか!?こいつ。
「入学してみれば分かるんじゃない?」
「明日するだろ。」
この天然シスターの言ってることが分かるのはどうやら明日らしい。
・・・嫌な予感がする。
はじめまして。
ちょっと非日常を書いてみたかったので書き始めました。
ゆっくりアップしていきたいのでお付き合い願います。〈ペコリ
次からは高校ライフです!