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ブラックサンタ、恩返し  作者: 社不旗魚
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黄色い線

ある日、目の前に黄色い線の幻覚が見え始めた『私』。その線を越えると幻覚から解放されるというらしいが……。

 最近、目の前に不可思議な線が見えるようになった。黄色い、私の足くらいの幅で、左右にはほぼ無限に広がっている。この奇妙な線が出てくるときも様々で、ある時は朝起きて飼っていた猫を見た時、またある時は職場であるビルの中で、そして昨日は仕事帰り、私の住むマンションの部屋の階の廊下で現れた。もちろん、その線は幻覚のようで、いつかは消える。ただ、消えるときはいつも、その中で私が線の向こうへ足を踏み入れた時だ。


 初めてその幻覚を見たときは、なんだか、いくら進んでもその線は私の目の前で離れて行ってしまい、なかなか踏み入れることはできなかった。……いや、もしかしたら、初めてのことだったもので、勇気が出ず右往左往していただけなのかもしれない。そして線を超えるといつも、形容しがたい快感に全身を包まれたような感触であった。


 この現象が起こり始めたのは、今からだいたい半年前。今の職場で働き始めてからちょうど一年が経った頃だった。変わり映えのない毎日に飽き飽きとした気分が続いていた私にとっては、ある意味で私の退屈を紛らわす幸せの象徴であった。


 ある日のことだった、私は通勤中にまた、あの黄色い線が見えた(通勤中にこの幻覚を見たのはこれが初めてである)。もう慣れたもので、ほとんど条件反射で足を運び、手を前に突き出しながら、それなりの速度を出して線を越えてみせた。どん。と、何かにぶつかった感触がしてから数秒後――今回私が見ていたのは幻覚ではなく、私が毎日見かける駅の『黄色い線』だったことに気が付いた時には、目の前を特急の電車が猛スピードで通り過ぎていた。


 その日、私は何故か逮捕されてしまったのだが、その理由は未だに理解できないでいる。

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