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【完結】破天荒な妖精姫は醜い夫を切望する  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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85.あなたを愛していますわ

 艶の美しい絹へ刺繍を施しました。水色と銀を撚り合わせた刺繍糸で、たっぷりと全身に花模様を入れます。花の中央部分や蕾の部分へ青い宝石を飾りました。


 王族ではないのでティアラは使用しません。代わりに妖精姫に受け継がれる髪飾りで、柔らかなヴェールを留めました。金髪は結っております。うなじに溢れる後れ毛が色っぽいからですわ。だって、シベリウス侯爵夫人カミラ様が、そう仰ってましたもの。


 お母様お薦めのデザイナーに作らせた装飾品を身につけ、王妃殿下が選んでくださった化粧品で準備を整えます。鏡の中には、普段の二割り増しくらい美しい顔がありました。


 肌に乗せたパールの粉がいい感じですね。にこにこしながら最終点検をして、エレンに「本当にお美しいです」と褒められながら振り返った。鏡に映る私の後ろに、立ち尽くす正装姿のお父様。


「お父様、綺麗でしょう?」


「ああ、本当に綺麗だ。幸せになりなさい」


「はい、ありがとうございます。お父様」


 お母様やお兄様夫妻は、すでに式場でお待ちです。もちろんアレクシス様も同じでした。入り口までお父様にエスコートされ、そこから先は一緒に腕を組んだ夫と歩くのです。


 式場として用意した広間の扉を開き、人々の視線が集中しておりました。お父様が「頼んだ」と私の背を押します。アレクシス様は敬礼し「ありがとうございます」と返しました。


「ヴィー」


 名を呼ばれて、笑顔で軽く首を傾げます。しゃらんと耳飾りが音を立てました。


「アレクシス様、とても素敵ですわ。私も頑張りましたの。英雄であるあなた様の隣に立っても見劣りしないよう」


 まだ続く言葉を、アレクシス様が指先で止めます。唇に触れた指が離れると、赤い色が白い手袋に移っていました。


「ヴィーの隣に立つ権利は、俺が欲しいくらいだ」


 いくつもの国を救った英雄、アレクシス・レードルンド辺境伯閣下。私の大切な旦那様です。彼に釣り合う妻になれるよう、私、全力で頑張りますね。


 赤い絨毯が敷かれた祭壇までの道を、並んで歩きます。一歩ずつ、進むたびに思い出が過りました。初めて出会った日のこと、ドラゴン退治で竦んだ愚かなロブを助けたお姿、必死で看病した時の気持ち……。


 ちらりと仰ぎ見たお顔は、前を向いています。大きく傷が残った頬に今すぐ口付けたくなりました。


 私の愚かさを受け止めた傷は、どれほどアレクシス様を苦しめたでしょう。その分だけ、私が幸せで埋めて差し上げたい。


 無理やり王命で婚約を決めたのに、拐われた私を助けてくださった。ヘンスラー帝国の侵攻を退けた二度目の活躍……どれだけ心躍ったことでしょう。どんなに美しい顔でも、魅力的な体を持とうと。あなた様が娶ってくださらなければ、価値はないのです。


 あなたを愛していますわ、アレクシス様。


 視線に気づいたのか私を見たアレクシス様と、誰もいない祭壇の前で立ち止まりました。

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