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83.妖精王様は心が広いのですよ

「妖精王様、いらして」


 マーリン様のお名前を呼んでもいいのですが、緊急事態ではないのでやめました。お名前で呼ばれると、びくっとするそうです。テラスで待つ私に、後ろから布がかけられました。いえ、ガウンでした。


 アレクシス様は呆れ顔ですが、私の髪を何度も撫でます。先ほどエレンに乾かしてもらったので、今はやや湿っている程度でしょうか。


「風邪を引くぞ」


「妖精王様をお呼びしていますのよ」


「室内ではダメなのか」


 尋ねられて、考えてみました。なんとなく外でお呼びするものと決めつけておりました。すでにアレクシス様にバレているのですから、お部屋でも構わないのでは? 


 お部屋の中なら寒さも感じません。頷いて戻った室内で、妖精王様がテーブルに肘を突いておられました。


『我らが姫よ、冷えてしまったであろう』


「いえ、それほどでも。お願いがあってお呼びしましたの」


 アレクシス様がエレンにお茶の用意を頼みました。助かりますわ。扉の前に立っていて、お茶のワゴンを受け取ってくれます。中で私がセットいたしました。


 貴族令嬢はお茶会によく参加します。お伺いした際は手を出さないのですが、家に友人をお呼びしたらお茶を注ぐこともありました。親しい間柄に限られますが。


『次からは部屋の中で呼びなさい』


「分かりましたわ。お茶どうぞ」


 淹れたお茶を差し出し、すぐにアレクシス様にもご用意しました。私も温かなカップを両手で包みます。ソファーに腰掛けた私の隣に座ったアレクシス様は、優しく抱き寄せてくれました。じわじわと熱が伝わって、とても幸せです。


『いい茶葉だ。それで呼び出した理由は?』


「結婚式に参列していただきたいの。出来たら、正面で誓いを受けて欲しいわ」


『……っ、本当に規格外の子だ』


 くつくつと声を殺して笑う妖精王様に褒められたようです。笑顔を向けたら、さらに肩を震わせて笑い続けていました。逆にアレクシス様は目元を手で覆って「どう教えたものか」と唸っておられます。


『教えずとも良いぞ。姫の騎士殿、これも悪くない』


「はぁ……」


 なんとも言えない微妙なお返事のアレクシス様に対し、妖精王様は楽しそうです。答えを待っている私に気づき、美貌の妖精王様は髪を揺らして頷かれました。


『良かろうよ、宣誓の祭壇は妖精達と共に私が立とう』


「ありがとうございます!」


「妻の我が侭を叶えていただき……誠に申し訳ありません」


 飲み干したお茶のカップを置いて喜ぶ私を抱き寄せながらも、アレクシス様はお詫びを口にされました。私の希望は我が侭に該当するようです。私もお詫びするべきかしら? でも嬉しい時は「ありがとう」ですよね。


「妖精王様が参列なさる話は、実家以外にしてはいけない。いいな?」


 口止めまでされてしまいました。私、そんなに口の軽い女ではございませんのよ。実家のお父様、お母様、お兄様とお義姉様くらいです。あ、国王陛下と王妃殿下は数に入りませんよね?

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