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66.一緒にダンスを楽しみました

 義姉のミランダ様に指輪を見せていただきました。とても美しい宝石です。青なのですがややくすんだ色ですね。これは瞳の色に合わせたのでしょうか。光が当たると中央に綺麗な光が生まれました。


「素敵ですわね」


「ええ、ルチルと呼ぶらしいの。光の意味よね」


 ミランダ様は物知りです。お母様も加わって、指輪のデザインで盛り上がりました。薔薇なのですが、庭に植えられる大輪の改良品種ではなく野薔薇なのです。小さな葉と蔦が宝石を抱き、縁に零れる形で小ぶりな薔薇の花が宝石を押さえていました。


「ああこれは……」


 隣で覗いたアレクシス様が納得したご様子なので尋ねると、すぐに教えてくれました。この野薔薇は棘が鋭く塊のように丸まって育つそうです。鳥や獣が近寄れない内部は空洞になっており、小型のリスやネズミなどが逃げ込んで巣を作る植物でした。


「お兄様の独占欲かしら」


「ヴィー、合ってるけど包んでね」


 独占欲は、夜這いと同じで人前で口にしてはいけないようです。今後は気を付けましょう。でも私なら、夫になる殿方に独占欲を示されたら、とても嬉しく感じますわ。


「独占してくださるなら、それも愛の証拠です」


 ぽっと頬を赤く染めるミランダ様に、私もお母様も「素敵」と呟きました。ちらりとアレクシス様を見ると、慌てて目を逸らしました。先ほどまで食い入るように見つめてくださっていたのに。


 披露宴は豪華に、贅沢に、けれど傲慢過ぎない程度に。微妙な調整が為されていました。珍しいワインを揃えているのに、本数を限定して開封します。ワインセラーにはこの数倍のワインがあるというのに、わざと出し惜しんで謙虚さを演出したのですね。


 ミランダ様の案と聞いて、見習わなくては! と拳を握りました。部屋に戻ったら日記帳に忘れず書き記さなくてはいけません。


「ヴィー達は泊まっていくかい?」


「朝まで楽しんだら帰りますわ」


 お兄様は「なら気を付けてくれ」と笑って、お義姉様のところへ戻られました。少し酔っておいでですが、大丈夫でしょうか。あ、お母様が水を飲ませています。お任せしましょう。


「アレクシス様、踊りませんか?」


「踊り……苦手なのだが」


 口では渋っておられますが、あれだけ剣術が得意なアレクシス様なら心配ありません。一緒にホールの中央で踊り、くるくる回りながら笑顔を振り撒きました。ここは宴会の中心地、注目が集まる場所です。私とアレクシス様の婚約にあれこれ言わせないために、仲の良さを派手にアピールしなくては。


 アレクシス様は予想以上にお上手なリードで、私は背に羽が生えたような軽さで踊りました。


「こんなに楽しく踊れたのは、久しぶりです」


 幼い頃にお父様にダンスのお相手を頼んだことがあります。あの頃を思い出します。体格差を利用して、ふわりふわりと抱えてくれて、あの経験でダンスが好きになりました。アレクシス様も「楽しかった」と笑っておられたので、嬉しく思います。


 人目を集めながら三曲も踊って、親族用に用意された席でしっかりお食事もいただきました。お祝いの場で飲食しないのは失礼ですもの。お父様達がご用意なさった料理はどれも美味しくて、近くに家族がいて、大好きなアレクシス様とゆっくり過ごせました。

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