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【完結】破天荒な妖精姫は醜い夫を切望する  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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64.胸元が開き過ぎではないか?

 メランダル男爵家の騒動は、貴族の間で眉を顰める案件として広まりました。跡取りが予備を含めて二人消えましたが、最終的に家が無くなるので問題ないですね。じっくり追い詰めましょう。


 ひとまず今は、お兄様の結婚式が優先ですわ。オリアン洋裁店から届いたドレスを着用し、髪を半分だけ結います。本日の主役はカルネウス侯爵令嬢ミランダ様です。次点でお兄様ですわね。


 結婚式は花嫁が一番美しくあるべきイベントですので、少し地味めの服や装飾品を纏うのがマナーでした。家宝であっても、最上級の宝石を纏うのは礼儀知らずと見做されます。普段の装いより豪華に、けれど夜会ほどの煌びやかさは嫌われる。とても難しい選択でした。


 小ぶりな青い宝石を連ねた細いネックレスを二連にして、耳飾りも同じデザインで。それから絹の手袋で肘の上まで覆いました。レースは縁だけです。全体をレースにすると華やか過ぎますので、気を使いました。


 親族席なので、当事者のお義姉様はもちろん、来賓の方からもよく見えるのです。肩を隠すショールを用意し、ドレスを纏えば終わりです。靴のヒールも低めを選びました。


「お綺麗です、若奥様」


 エレンの褒め言葉はいつものことなので、ありがとうとお礼を返しました。アレクシス様は準備が出来たかしら。先に玄関ロビーで待つべき? 迷った私を見透かしたように、ノックの音が響きました。


 執事アントンが呼びに来たと思ったのですが、アレクシス様ご自身でした。


「とても似合っている。素敵だ、褒め言葉が足りないな」


 どうしようと呟くアレクシス様の手前で、くるりと回りました。ふわりと裾が広がるドレスに目を細めた後、本当に綺麗だと付け足されます。もっと美辞麗句を尽くした褒め言葉を聞いたことがありました。でも惚れた殿方の不器用な褒め言葉の方が何倍も嬉しいものですね。


 目の前に距離を詰めた途端、ぼっと顔が赤くなりました。具合が悪いのでしょうか。心配になった私が首を傾げると、彼は目の位置に手を置きました。


「そ、その……やはり、胸元が開き過ぎ……いや、ヴィーが着たいならいいが、人前に晒すのはちょっと……」


 もごもごと聞き取りづらい声に、私は声を立てて笑ってしまいました。だって、この衣装、事前にご存じだったではありませんか。あの時、母も言っていました。


「私が襲われたり攫われないよう、アレクシス様が守ってくださいね」


「もちろんだ!」


 先ほどまでの話し方が嘘のように、きっぱり断言してくれます。こういうところ、本当に大好きですわ。少しショールで胸元を隠して、一緒に歩き出しました。階段を降りて玄関を抜け、用意された馬車に乗り込みます。執事や侍女に見送られて、私達はエールヴァール公爵家に向かいました。


 今回、結婚式も敷地内で行うのです。急遽、古いチャペルを直したと聞きました。きっと私やミランダ様の安全を考えてくださったのでしょう。


 チャペルや披露宴会場の広間は騎士が、外側を兵士がきっちりと守るそうです。ですから、こっそり傭兵を連れて行かなくてもいいのですよ? アレクシス様が安心してくれるなら、傭兵の配置許可を貰うべきでしょうか。


 降り立ったエールヴァール公爵家の屋敷は、長く離れたわけではないのに懐かしく思いました。ああ、私の自宅はもうレードルンド辺境伯家なのですね。見慣れた執事や侍女に微笑みかけ、他の招待客より先に屋敷に足を踏み入れました。


 お義姉様にお祝いのご挨拶をしなくては。それに、お兄様達にも。青空に白い雲、少し暑くなりそうですが、良い一日になりますように。

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