表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】破天荒な妖精姫は醜い夫を切望する  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/113

60.裏切りに傷ついておられないかと

 夜になったら妖精王様に頼もうかしら。でも人の厄介ごとは人が解決するべきですね。国王陛下は外交問題で、今はお忙しいでしょう。ならば、お父様か王妃殿下……少し悩んで、お父様をお呼びすることにしました。


 さらりと事情を書いて、アントンに届けるようお願いします。明日の早朝には届くので、対応してもらえますね。


「今日はお手柄だったな、ヴィー」


 微笑んでくしゃりと髪を乱すアレクシス様に、私も笑顔で頷きました。最近気づいたのですが、アレクシス様は私の頭を撫でるのがお好きなようです。そのためここ数日、髪を結っておりませんの。いつでも好きなだけ撫でていただくためです。


 既婚者になれば外出時は結って出かけますが、未婚ならばそこまで厳しくありません。何より、旦那様のお好みに合わせるのは、妻として当然です。あらいやだわ、照れてしまいますね。


 赤くなった頬を両手で押さえ、アレクシス様と一緒に食堂の席につきました。運ばれてくる前菜が終わったところで、私から切り出します。


「アレクシス様、その……気を落とされませんように」


「何の話だ?」


 きょとんとしたお顔は、本当に気にしていないようですね。一応尋ねられたことにお答えしました。


「ご家族の裏切りに傷ついておられないかと心配しましたの」


「ああ。そうか、ヴィーは家族と仲がいいからそう考えるのだな」


 運ばれてきたメインはお魚、今日は白身魚に野菜をたっぷり乗せて蒸したお料理でした。添えられた酸味のあるソースを掛けて頂きます。


 丸ごと一匹の大皿でしたので、アレクシス様が切り分けてくださいました。料理が差し出され、ソースを掛けます。同じように準備を終えたアレクシス様が、ここでようやく口を開きました。


「俺は家族と食事をした記憶がない。幼い頃は一緒だったかも知れないが……いつも 自分の部屋で食べていた。だからマナーが心許なくてな。辺境伯家を継ぐと決まってから、必死で覚えたんだ」


「ええ、見事な切り分けです。国王陛下の前でも出来ますわ」


 からりと明るく笑うアレクシス様に合わせ、私も冗談混じりに返します。気やすさに安心したようで、ぽつぽつと過去のお話を聞かせてくれました。


 長男は跡取り、次男は予備、だから二人は教育を受けられる。三男は使い道がないと放置された。腕っぷしを鍛えれば騎士や衛兵になれるだろう、と。しかし、剣技を教える師もいない。


「自分で鍛えたんだが、自己流だ。騎士にはなれん」


 騎士は太刀筋が綺麗で、模範演技のような戦い方をします。もちろん強いと思うのですが、傭兵や衛兵に比べたら実戦経験が乏しいのも事実でした。命の危険がない模擬戦しか経験していない騎士は、実戦で竦んでしまうでしょうね。あの日の私のように。


 茶化してそう伝えると、彼は思い出したようで飲み物を吹き出しました。ナプキンで拭く私に、咳き込みながら彼は首を横に振る仕草をして。


「食事中にロブの話は禁止だ」


 どうやら、少年姿の私を思い出すと笑ってしまわれるようで、確かに食事中は危険ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ