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56.結婚式を早めるご相談でした

 王妃殿下のお召しにより、王族が私的な客人を持て成す部屋に案内されました。客間のひとつですが、公的には使用されません。私は何度かお母様達と訪れた部屋で、挨拶のカーテシーを披露しました。すでに腰掛けてお待ちのお二人は会釈で返します。


 軍人の敬礼も似合いそうなアレクシス様ですが、ここは私の婚約者であるレードルンド辺境伯閣下の肩書きを取るようです。貴族の習わし通り、片足を引いて優雅なご挨拶をなさいました。軍属の方や騎士様は筋肉が多く、体がふらつかないのでカッコよく決まりますね。


「ロヴィーサ嬢、悪かったな」


 国王陛下からのお声がけに「いいえ」と微笑んで返します。このお部屋にいる時は、地位に関係なく娘のように振舞ってくれとお願いされておりました。きちんと覚えております。それでも礼儀をすべて投げ捨てることはありませんが、お父様に接するように微笑みを向けました。


「うむ……此度の件は、無事で本当によかった。犯人も無事処刑されたことだし、アクセーン王国の侵略も食い止められそうだと聞いている。そなたに何かあれば、国が滅ぶ故……」


「あらあら、そんなことが理由ではないでしょう? 娘も同然の可愛いロヴィーサを襲うなんて、八つ裂きにしてやればよかったのです。殿方は甘いんですから、もう」


 呆れた、そんな口調で王妃殿下がちくりと嫌味を向けます。そんなお二人に驚いた様子のアレクシス様、私はにこにこと笑顔で聞いておりました。だって、いつもと同じなんですもの。仲のいいご夫婦って理想ですよね。


「何にしろ、早く結婚した方がいいと思うの。イーリスに聞いたのだけれど、もう関係があるのでしょう? 早く結婚式を挙げて公表したいわ。いつを予定しているの」


 王妃殿下に畳みかけられ、お茶に手を伸ばしたアレクシス様が、その手を止めました。ぎこちない仕草で私を見つめるので、微笑んでお答えします。慣れないと王族に直接答えるのって、緊張しますものね。


「お母様ったら話してしまわれたのですね。婚礼衣装の絹はすでに手配しておりますし、刺繍や宝石も準備しておりました。あとは縫製だけですので……半年ほどでしょうか」


 私はアレクシス様と結婚すると家族に明言し、そのために準備を進めました。アレクシス様の瞳の色である青い宝石を大量に集め、ヴェールのレース編みは三年前から注文しています。ドレスのための絹も購入済みで、後は形にすれば終わりです。


 デザインはアレクシス様とご相談するつもりでしたが、どうしてもマーメイドにしたいので、ここは譲っていただきました。すでに執事のアントンも、準備に走り回っております。


「あら手回しがいいのね」


「はい、結婚式用のドレスや宝飾品は絶対に必要になるものですし、妥協したくありませんもの」


「すごく分かるわ」


 王妃殿下と手を握り合って、きゃっきゃとはしゃぎます。テーブル越しなのでやや遠いですが、私的なお部屋なのでガラステーブルも小さめでした。


「なるほど、ならば何か足りないものがあれば贈ろう」


「あなた。そういう時は針子の手配ですわ。王宮の刺繍や縫製を担当する者を総動員しましょう。早く結婚式を挙げないと、また近隣国から身勝手な男が押し寄せてきます」


「あ、ああ。妃の言うとおりにしよう」


 お礼を申し上げて、私は笑顔で退室しました。アレクシス様はほっとしたご様子です。何か咎められると思ったのでしょうか。そういう場面では、必ず公的な客間や謁見の間を使いますのよ。


 衣装の完成まで時間が短縮できそうなので、アントンにも準備を急がせなくてはいけませんね。

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