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48.派手な公共工事で食い止めましょう

 朝食は和やかに始まり、途中で少し言い争って、最後は王妃殿下に両成敗されて終わりました。罰として今日一日は手を繋ぎっぱなしで過ごすように言われましたの。最高の罰ですわ、ぜひとも今後も同じ罰をお願いいたします。


「罰にならない」


 あら、なぜバレたのでしょう。首を傾げて見上げると、彼の首筋がぶわっと赤くなりました。アレクシス様にとっても罰にならないとしたら、私は心の底から喜びます。仲良しアピールをしながら王宮の庭を歩き、午後になって迎えに来た馬車に乗り込みました。


「すぐに対策を練らなければ」


 難しい顔で考えるアレクシス様ですが、私は妖精王様にちょっと頼みごとをすればいいのでは? と思っていました。それを口にしたら、また手柄の話が復活しそうで口に出来ません。じっと見つめたまま、揺れる馬車の中で腕を絡めました。


「ん? どうした、ヴィー」


「いいえ。何でもありませんわ」


 にっこり笑って誤魔化す。隣り合って座ることに抵抗がないのでしたら、問題ありません。着々と距離を詰めるだけの話ですわ。揺れるたびに胸を押し付けておりますが、真剣に悩んでいて気にした様子がありません。


 お屋敷へ戻ったアレクシス様は、すぐに騎士や兵士を束ねる役職の方々を集めました。見回りに出ている人もいるので、女性の着替え程度の時間がかかるでしょうね。思いついた作戦をどう伝えたものか、迷いながら後ろをついていきます。突然立ち止まったアレクシス様が振り返り、私に優しく話しかけました。


「ヴィー、部屋で休んでいていいぞ」


「ありがとうございます。少しだけお話をよろしいですか」


 頷くアレクシス様と執務室へ入り、手にしておられる地図を広げました。ほんの僅かに隣国と繋がる川、ここを辺境伯家の領地にするのは弊害もあるでしょう。ですから敵を退けた上で、二度とここから攻め込もうと考えないほど、大きな損害を与えればいいわけです。


「子爵家の土地が川の上流になりますよね。ここを崩せば、川の流れが変わります」


 地図の一点を指してから、レードルンド辺境伯家の領地へ指を引っ張りました。接点になっている土地ではなく、その手前で川の流れを変えます。妖精王様なら一晩で仕上げてくれそうですが、今回は人の力を利用しましょう。公共工事は民のためになりますし。


「まさか……」


「はい、川の両側にある山を崩します。これで完全に塞ぐことが可能になります。崩すタイミングを合わせれば、敵を激減させることも可能ではありませんか」


「だが、いや……確かに」


 唸って考え込んでしまいまいした。川が流れている場所は、通常、両側が大きく盛り上がっています。人が作った堤防もありますが、半分以上は自然に出来た崖でした。小山の僅かなくぼみを水が流れて削り、徐々に深くなっていく。そうして川になるのだと教えてもらいました。


 両側に残された小山だった大量の土砂は、意外と崩れやすいそうです。手前で川の流れを変えて、土で埋めてしまう。今後は国境がはっきりしますね。


「この川、水量があまり多くないので、ここら辺にため池を作れば……ほら、今後も水を活用できます」


 外交問題になるとか、陛下に相談せねばとか。呻いておられましたが、騎士団や兵団の団長達と相談する際に提案してくれるそうです。褒めてたくさん頭を撫でてもらいました。今夜もいい夢が見られそうですわ。

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