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【完結】破天荒な妖精姫は醜い夫を切望する  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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44.横抱きで登場して度肝を抜きます

 先に下りるアレクシス様の手を借りて、最後のステップを踏んだところで……ふわりと体が浮きました。横抱きにされた私は咄嗟に腕を彼の首に回し、落下を未然に防ぎます。びっくりしました。


「……どうした、さっさと案内してくれ」


 アレクシス様の声のトーンが低くなり、ちらりと視線を向けた先で侍従や迎えの方々が固まっているのが見えました。私はアレクシス様の傷の上に唇を寄せ、軽く触れるキスを送ります。それから聞こえるように声を掛けました。


「アレクシス様ったら。皆様は私が甘える姿に驚いているんですわ。お屋敷の使用人達と違い、ご存じないんだもの。許して差し上げてね」


 こう言っておけば、私の我が侭にアレクシス様が付き合ったように聞こえます。それにお屋敷ではもっと甘い雰囲気で過ごしていると吹聴することも出来るでしょう? 噂を広めるなら効果的に。シベリウス侯爵夫人は本当に実戦的なことを教えてくださり、助かっております。


「ど、どうぞ。こちらです」


 王宮の侍従は、伯爵家以下の嫡男以外が勤めます。優秀なはずの彼らが、ここまで驚くなんて。確かに、国王陛下に御目通りする令嬢が抱き抱えられて登場するのは、かなり珍しいと思いますが。


 謁見の間ではなく、王族が私的な客を迎える客間へ通されました。美しい木目を誇るオーク材の家具は、柔らかな赤みかかった色です。ずっしりした印象を与えますが、手触りは柔らかく触れると心地よいのが特徴でした。


 ローテーブルの周りのソファーは臙脂(えんじ)色のベルベットが使用され、高級感が漂っています。その上に下ろされた私は、スカートの裾を手で直して座りました。国王陛下と王妃殿下はまだ到着されていません。こういった場では、上位者が遅れてくるものですから。


「アレクシス様、手を握っていてください」


「構わないが……」


 握手のように握ろうとしましたので、指を一本ずつ絡めて繋ぎ直しました。そこへノックの音がして、国王陛下と王妃殿下が入室されます。一度立ち上がって会釈を行いました。公式の場ではないので、カーテシーは不要です。アレクシス様は騎士の敬礼を行おうとして、絡まった指に阻まれ……迷った末に会釈でご挨拶をしました。


「ああ、畏まらなくていい。腰掛けてくれ」


 促されてアレクシス様と目を合わせ、大きく頷きます。こういった席は私の方が経験がありますので、リードさせていただきますね。アレクシス様と一緒に座り直し、国王陛下と王妃殿下は向かいに腰を下ろされました。


 本日の国王陛下は公式の行事があったのか、きちっとした服装です。紺を基調とした服に裏地が赤のマントが鮮やかですわね。王妃殿下は紺色に金刺繍の入った美しいマーメイドドレスでした。お二人とも私的な時間を過ごす服装ではないので、謁見に立ち会われたのでしょう。


 対する私は柔らかなイエローのドレスにいたしました。レモンのような白っぽい絹ですが、艶がとても美しいのです。アクセサリーはすべて銀で青い宝石にいたしました。アレクシス様のくすんだ銀の髪をイメージして、艶消し加工をしてもらったのです。


 青い宝石もすべて、空色の瞳に合わせてトパーズやアクアマリンを中心に揃えました。グラデーションにしたのは、アレクシス様の瞳の色が夜と昼で違って見えるせいです。どちらでも合わせられるので完璧でした。ちなみに宝石を発注したのは、押しかける前ですわ。


 絶対に嫁ぐと決めた以上、他の色の装飾品には興味がなかったんですの。

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