表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/113

37.失礼極まりない手紙は箔を付けてお返しします

 お返事を出す際は、国王陛下が二重封筒にしてくれます。我が家の封蝋を使わずに開封状態でお渡しします。国王陛下が目を通し内容を確認した上で、王国の封蝋をした封筒で送る手順でした。箔付けと呼ぶらしいですね。


「なので、中身だけで結構ですわ。私もお手伝いしますね」


「いや、ヴィーはやめなさい。いいか? 絶対に手を出すな、口も出すな。よいな?」


 そこまで念を押されたら「はい」と答えるしかありません。ヘンスラー帝国の王子殿下に妃になるよう命じる正式書類が送られてきた時、「誰が嫁ぐかバーカ」を懇切丁寧にかみ砕いて返信したのがいけなかったようです。あれ以来、私は手紙に携わるのを禁止されました。


 なんでもヘンスラー帝国から正式文書への返答に抗議がきたらしいのですが、お父様が先手を打って公開しましたの。国王陛下の許可なく、公式の命令書を……読んだ他国の方々が味方になってくれ、お話は一時的に鎮静化しました。


 あの時のお父様は「寿命が縮まった」と胸を押さえて苦しそうでしたわ。私の大切な家族をこんな目に遭わせる王子殿下には絶対嫁がないと決めましたのよ。


 この話は後でアレクシス様にも教えて差し上げましょう。どれほど皆様が無礼で失礼で非礼か。少しばかり見栄えのする顔と豊満な体を求め、紳士らしからぬ態度で接したか。語り尽くせぬほど事例がございます。


「昨日の誘拐騒動だが、国として対処する。くれぐれも、いや絶対に、妖精王を頼るなよ?」


 まあ、お父様ったら高度な駆け引きをなさるのね。それは妖精王を頼って、隣国の王家や公爵家を壊滅させろと仰っているのと同じですわ。アレクシス様がおられるから、気を遣われたのかしら。


「ええ、承知しておりますわ」


「お前のその笑顔が一番怖い。可愛いのに……なぜだ、育て方を間違えたのか」


 お父様がぶつぶつ言う間に、冷めたお茶が交換されました。このお屋敷の侍女さんは優秀ですのね。後で褒めておきましょう。笑顔で小さく頷くに留め、私はエレンと自室に戻りました。というのも、夜に妖精王にお願いするためには休む必要があるのです。眠くて起きていられなければ、呼び出すことも出来ませんからね。


「お嬢様、旦那様のお話をきちんと理解なさいましたか?」


「エレン。あなたの新しい旦那様はアレクシス様なのよ。公爵様とお呼びしなくてはいけないわ」


「あら、本当ですね」


 しっかり者のエレンでも間違えることがあるのね。ベッドに横たわり、久しぶりに彼女の子守唄を強請りました。昔はよく聞かせてくれたのですが、大人になると強請る機会も減ってしまって。やや擦れたハスキーな歌声に目を閉じ、私は意識を手放しました。





 リラックスして眠ったせいか、予定通り真夜中過ぎに目が覚めます。テラスに続くガラス扉を開き、肌寒い夜風に両手を差し伸べました。


「いらして、私の妖精王マーリン様」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ