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32.元求婚者達からの大量のお手紙

 誘拐事件は、思ったより早く広がりました。なぜか私への手紙が大量に届き、裏返すと心当たりのある方々の封蝋が施されております。


「こちらはすべて、求婚者だった皆様ですね」


 運んだエレンも呆れ顔でした。これは中身も察してしまいますわ。そのまま捨ててもいいのですが、明日はお兄様がドレスの職人を連れて来ます。その時にまとめてお渡ししましょう。


 処理に困るお手紙は、いつもお兄様にお渡しして片付けていただきますの。次期当主であるお兄様が返信をしてくれるからでしょうか。その後は礼儀正しいお手紙になりますので、とても助かっていました。


「エレン、今回はお兄様にお渡しするとして……今後はアレクシス様にお渡ししていいのかしら。でも辺境伯家の女主人としては、自ら処理するべき?」


「お嬢様は余計な心配をなさらず、そのままお尋ねになればいいのです。新しい旦那様も、公爵家の坊っちゃまも、ご協力してくださいます」


 淡々としたエレンの話で、母に「あなたは少し……いろいろと足りないのですから、余計なことを考えずにレオナルドに任せなさい」と言われたことを思い出しました。そうですね、私は世間知らずです。勝手に判断せず、殿方にお任せしましょう。


 開封もせず、手紙を机の上に積み重ねました。崩れてしまうので、洗濯物を入れる籠に詰め直します。これでいいわ。お渡しするときにバラバラになったら、拾うのが大変だもの。


 朝の支度が終わった直後から手紙を積み直し、少し疲れました。でも今日明日はアレクシス様がずっとお側にいてくれる約束です。疲れくらいで眠る気はありません。


「朝食に行くわ」


 エレンに案内されて、ワンピースの裾を摘みました。屋敷内で着る用なので、飾りは少ないシンプルな服です。ただ生地の手触りが好きで、お気に入りでした。外出しないと示す意味も兼ねて、宝飾品も付けていません。


 食堂に入ると、ほぼ同時に後ろからアレクシス様にお声がけされました。


「おはよう、ヴィー。よく眠れたか?」


「はい、アレクシス様。おはようございます。ぐっすりですわ」


 心臓が強いとか、ぼそっと聞こえた気がします。昔から誘拐未遂が多かったせいか、多少のことでは動じなくなりました。以前は誘拐されながら、国境まで眠り続けたこともあるんですのよ。あの時はお父様が駆けつけてくれましたっけ。


「アレクシス様、今日は」


 私の声に重なる形で、アントンがノックしました。タイミングが悪いですね。何をして過ごすか相談したかったのですが。


「なんだ?」


「エールヴァール公爵閣下がお見えです」


 アレクシス様と顔を見合わせました。お父様が? お兄様に話を聞いたでしょうに。でも心配性なのはいつものことです。頷くと、アレクシス様が客間へお通しするよう伝えました。


 ちらりと時計を確認し、私はお父様を食堂へお誘いするようお伝えします。たぶん、朝食を食べておられないわ。アレクシス様が命令を変更し、お父様を交えて朝食を頂くことになりました。


 レードルンド家の料理は美味しいから、お父様もきっと満足なさるに違いないですわ。

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