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第7話 悲しき双子の恋煩い

ひっさし振りの投稿となりました。

楽しみになさっている方(いないでしょうがw)

誠にお待ちどうさまです。


寮の屋上でよく似た二人が景色を見ていた。辺りはもう暗くなっていて風が少し冷たいくらいだ。

少し女々しい髪の長い男と、少し男らしい髪の長い女。

前髪は違っているがそうでなければパッと見ただけでは間違えてしまうほど二人は似ていた。

「兄さんまだ忘れられないの?秋月雄介のこと。」

少女は目の前にいるよく似た姿をした少年に向かってつぶやくように言った。

少年は、落下防止のためにつけられている鉄の囲いに手をかけて外を見つめていた。

しばらくの沈黙の後少年は口を開いた。

「あの人は…関係ない。」

少しふてくされたような声だった。

今日の出来事を一つ一つ思い出していたからだ。

「何で止めに来たんだ落葉。」

外を見るのをやめてよく似た姿の少女を睨む。

少女は何でもないような素振りを見せていた。

それが余計でも少年を苛立たせた。

「何の話かしら?」

涼しげな表情を見せる少女。

「だから…秋月弟の話だよ。」

少年の目は泣いた後のように少しだけ赤くなっていた。

辺りが暗くなっていた為少女がそれに勘付いていたかどうかは定かではないのだが。

「ああ。だから言ったでしょ?茜が悲しむから返して欲しいって。」

少女は淡々と理由を述べた。

「俺が聞きたいのはそういうことじゃない!!」

苛立ちのあまり少年は少し喋り方が乱雑になっている。

落葉にそれを指摘され彼は更に怒りで顔を赤くした。

「私が聞きたいのもその話ではないの。私も忙しいから戻っていい?茜が一人で部屋で待ってるの。」

少年は殴りたい衝動を抑える為にぐっと拳に力を入れた。

「茜、茜。口を開けばいつも茜だなぁお前は。そんなに好きか?西藤茜のことが。」

少年の整った顔がぐにゃりと歪む。それは怒りからか寂しさからか。定かではない。

「好きよ。誰よりも何よりも茜が好き。彼女が死んだとしても好きであり続けると思うわ。死なせないけどね。どんな手段を使っても。」

少女は微笑んだ。その瞬間少年は実の双子の妹を殴っていた。少年の拳は少女の頬に当たり少女は笑顔のままよろけた。

「醜いわね冬芽。貴方は人に愛されたことがないからって。私に当たらないで。誰にも必要とされない貴方と私は違うの。」

少女の言葉は精神的に少年を酷く傷つけた。

少年はぼんやりとその場に座り込む。その目は虚ろで今にも泣き出しそうであった。

それは学内最強といわれいつも不良の番長といわれ生徒会長としてこの学校を取り仕切っている人間だとは思えないほどに脆く弱く感じられた。

「それじゃあね、榊君。」

少女は長い髪を翻すと何事もなかったように屋上を後にした。

少女は屋上と階段との境のドアを閉めるとずるずると座り込む。

後から後から出てくる涙をどうすることも出来ずに一人嗚咽をあげて泣いていた。

それは屋上にまだ残っている少年も同じことであっただろう。

何が悲しいのか自分で理解できないままただ悲しみを感じて涙を流すのだ。

『誰にも必要とされていない。』

その言葉は少年に向かって放った言葉であったが同時に言った本人である少女の心にも重くのしかっていた。

しばらくすると涙も枯れ喉が渇いていることに気づく。

少女はふらふらと近くにある自動販売機へと向かい、西藤ちゃんがお気に入りのジュースを二缶買って袖で涙を拭くと自室に戻っていった。

部屋に戻るとふてくされ気味のルームメイトである西藤茜が裁縫をしていた。

ファンシー部で途中まで作っていたうさぎのマスコットがいくつか机の上に置かれている。

それはそれぞれ表情が違いファンシー部員の分と秋月達の分が置かれていた。

器用なものだと感心しながら落葉は茜にサクランボのジュースを渡す。

「遅くなってごめん。お詫びに茜のお気に入り買ってきたから飲んで。茜これ好きでしょう?」

落葉は微笑みながら言った。声が掠れていなかっただろうか?笑顔が不自然じゃなかっただろうか。落葉はそんなことばかり気にしていた。

茜はふてくされ顔で何か言いたげにこっちを見ていたがジュースを差し出したとたんにその表情は一変し明るくなる。茜はあまりにも単純だ。そこが可愛いのだけれども。

「落葉ちゃんありがとう。」

茜は嬉しそうだった。その笑顔を見ているだけで幸せな気持ちになれる。

自分の分のサクランボジュースを開けると軽く缶同士を押し付けて乾杯をした。

一気に中身を煽るとなんだか甘酸っぱくあまり美味しいとは思えなかった。

だが茜が好きなものだからと無理矢理飲み下した。

後味が悪く甘ったるさだけが残る。

茜はそれを美味しそうに飲み下していた。

「美味しいね。」

落葉は微笑んで見せた。茜はにこにこと笑い返す。

そのときが落葉は至福のときだと思っていた。

「そういえば今日ね雄介さんが…。」

茜はいつものようにあいつの話を始める。

私はあいつが、あいつらが嫌いだ。

どうして嫌いなのかといえばやはり純粋できらきらしていてまるで自分とは全く逆の存在のように思えるからだ。特に秋月夜野は。許せない。許せないはずなのになぜか気が付くとすぐそこに居て笑いかけてくる。それがまた許せない。

冬芽の行動には正直驚いた。どうして弟と称して茜を連れて行ったのか、

どうして本人を誘拐しようと思わなかったのだろうか。

きっと聞いても教えてはくれないのだろう。双子といえど知らないことは多い。

相手が何を考えているのかだなんて到底理解できっこない。

多少他人よりかはわかりあえるといえどもだ。

落葉は軽くため息をついた。


「うーむ。」

夜野は腕を組んでじっと目の前のカードを見つめる。

2枚のカードが裏返しにされ雄介の手に収まっている。

それをまるで運命の分かれ目とでもいうように必死に見つめる夜野。

すっかり日が暮れもうそろそろ夜中だといっても良いような時間帯に差し掛かっている。

テレビを見ることに飽きてしまった二人はファンタジー部に置かれていた茜に借りたトランプで二人でばば抜きをしていたのだった。

そうこれはあがれるかどうかという運命を分ける一勝負なのである。

雄介は急かすわけでもなくその様子を少し面白がって見つめていた。

「じゃあ右だ!!」

覚悟を決めたらしい夜野は一枚のカードを引き抜く。

それを見た瞬間彼の顔は真っ青になっていった。血の気が引くというのはこういうことかというほどに。だいぶオーバーだとは自身でも思ってはいたようだがともかく、夜野はジョーカーの方を引いてしまったらしい。

雄介は表情を崩さぬまま次のカードを抜いた。

直前に夜野がシャッフルしてわからなくしたにも関わらず彼が取ったのは夜野の持つもう一枚のほうのカード。ハートのAであった。雄介はゆっくりとそのカードを見た後夜野の方を見た。

「雄介は強いなぁ。やっぱり。」

夜野は苦笑しながら手に持っていたジョーカーを投げ出す。幼稚な絵柄のトランプのジョーカーはひらひらと宙を舞い床に落ちた。雄介はばば抜きの会場になっていたベットの上から降りるとそのカードを拾い元あった箱へと戻した。

「そんなことないですよ。ルシファー様が弱いだけです。」

にっこりと得意の笑みでひどいことをいう雄介。。

夜野は少しベットにねっころがりながらわざと雄介の方を見ずに話をする。

しかしためらいのせいかなかなか話をする事が出来ずそんな自分にイライラし結局悪循環が起こってしまう。

「雄介は…。どう…思ってんだ。」

「何をですか?」

「・・・・・・・・・・・・。茜のこと!西藤茜!あいつのことどう思ってんだよ・・・。」

夜野はいっぺんにそれを口にするとなんだか心が軽くなったというよりは、肺から空気がすべて抜けていってしまうようなそんな不思議な感覚に見舞われた。

雄介は驚いたようだった。

当たり前であろう。そんな素振りなど全く見せていなかったのだから。雄介は人間であるから人の心を読むなんていうことが出来ないしたとえ出来たとしても雄介は決してそれを実行しやしないと思う。何故かという確証はないのだが。

ただ、雄介は夜野の目をじっと見つめた。

「西藤さんの事?どうも思っていませんが?もしかしてルシファー様は西藤さんのことが好きになってしまわれたのですか。それでも僕は別に構いませんが。」

雄介はゆっくりと息を吐く。手に持っていたトランプのカードの箱をもてあそぶようにしながら。

「ちがっ・・・。」

慌てて否定しようとするが言葉が出てこない。

だがここでしっかりと否定しないと雄介は勘違いしてしまうだろう。

「俺が好きなのは…ミカエル…いやっ落葉だけだっ!」

その言葉に嘘は無いと。嘘はないであろうと言える。

現にこんなにも彼女を愛しているのだから。その気持ちは決して…たとえこの命が奪われてしまったとしても変わりはしないだろうと思う。

「そうですか。明日も学校ですし早く寝ることにしますか。それではおやすみなさい。」

そういうと雄介はルシファーに断ることもなく電気を消した。暗闇の中で目が見えないというわけではなかったがそれでも少し暗いのがいやだなぁと思いながら自分のベットへともぐりこんだ。暖かく柔らかい感触がルシファーを包み込む。

そのまどろみの世界の中でルシファーはふいに思った。

自分が居なくなって地獄はどうなってしまったのだろうかと。

今までそれを考えることは無かった。考える余裕も無かった。

だがはっきりと突きつけられたその現実は目の前に問題としてある。

幾ら長だからといって何もしなくていいというわけではない。

君臨しなければならないという義務を押しのけて今俺はここにいる。

俺が天から落とされてしまうまでは地獄は全くの無法地帯となっていた。

地獄に落とされた人間たちは夜な夜な悪魔達の餌食となり、そして奴隷にさせられていた。

死ぬか死なないかのぎりぎりのラインで行われる永久に続く苦痛。そんな世界だったそうだ。

俺が来たことによってその制度が変わったというわけではなかったがきちんと法に定めて施行させるようになった。皆は元気だろうか。

変わらない毎日がつまらないと感じていたのに今は少しさびしくさえ思う。

なぜなのだろうこれがホームシックというやつなのだろうか。

俺はいつ地獄に帰るのだろう。

一体どうしたいのだろう。

いつまでも落葉が振り向いてくれることなく誰かヒトリのことを好きになって結婚して…そうしたら俺はどうすればいいのだろう。

自分のわがままの為に地獄をほっぽり出してほとんどの事務作業をやってくれていた雄介まで連れてきて…。なんと迷惑な話なのだろうか。

どうしてこんなことをしていて許されるのだろうか。

沈黙の中ルシファーは…考え込んでいた。

雄介は既に寝息を立てて深い眠りに落ちてしまっている。枕に顔を突っ伏して布団をぎりぎりまで被った状態で眠りこんでいる。呼吸の度に規則正しく布団が持ち上がるのを見るとすこし笑いがこみ上げてきた。

(なにを弱気になっているのだろう。)

まだきちんと笑えるではないか。昔、ずっと昔まだ自分が天使であった時のことを思い出す。双子の弟であるミカエルが大好きで大好きで堪らなくてしかしミカエルは自分を兄弟以上には決して見てくれなくて悩んだ時があった。酷く酷く悩んで仕事も手につかなくなり周りからものすごく心配され引きこもるようになりミカエルを困らせて…あの時は一回も笑えなかった。「笑う」ということが出来なくなってしまったというよりも笑うということ自体がどんなことであったか、どんな感情であったかということすらも分からなくなってしまったという感じだった。それに比べてみれば今自分の悩んでいることなんてちっぽけなのだと思った。

今は、きちんと誰にも文句を言われることもなくミカエルを「好き」だと。恋愛感情で好きであると伝えることが出来るのだ。

どれだけ自分が待ち続けたことだろうか。この夢を叶えることが出来ないはずがない。

神から見放された俺への神からの最後のプレゼントなのかもしれない。

ルシファーは少し気が楽になり布団を頭まですっぽりと覆いかぶせると途端に眠気が襲ってきてそのまま眠り込んでしまった。







季節も巡り寒くなってきましたね。

コートが無いと寒くって帰りに震えて震えて…。

そんなことよりも今日で忌々しいテストが終わったのですよ。

やったーwという感じですね。これでしばらくは小説執筆やらなんやらに力を注ぐことが出来ます(笑)


それでは皆さんまた今度。

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