第5話 悲しき双子でケーキを作ろう!
今日は、楽しいケーキ作り…だったはずだ。
ここは放課後の調理室(許可を取って使っている。)
前回の流れから飛んでケーキを作ることになった。落葉と茜の指導でケーキ作りを…。
だが、夜野の目の前に広がっているのは炭。炭炭炭炭炭s・・・
「はははっケーキってなかなか黒いもんだなー。それじゃあ一口味見をっと・・・ってマズっ」
雄介は横で声を抑えて爆笑している。茜と落葉は、呆れてぽかーんとしている。
「そもそも分量から間違ってるんですよ。砂糖を1キロに小麦粉10gって貴方は一体何を作りたかったんですか?なんかよく分からない物体いっぱい入れてますし。オーブンの温度500℃?茜の話ちゃんと聞いていたんですか?」
責め立てる雄介の声はいつも以上に生き生きとして感じられた。
「じゃあお前の分を見せてみろよ!お前だって酷いんじゃ・・・。」
「僕のですか?」
ふんわりと仕上がった普通の色をしたスポンジケーキは茜もいうこと無しのお墨付きであった。
「雄介さんうまーい!!さすがー!」
「秋月さんは、筋がいいみたいね。」
落葉も、すこしむっとした表情で言う。
「…これがケーキというものか。」
夜野はその隅々を舐めるように見て(途中で雄介に首を引っ張られたりして)ケーキというものを観察した。
「…スポンジケーキをそんなに嬉しそうに観察する人を僕は初めて見ましたよ。」
呆れ顔で雄介が言うまで夜野はスポンジケーキを見つめ続けていた。
「落葉のケーキは!みせてっみせてっ」
夜野は子供のようにぴょんぴょんはねる。
「ん。」
コアラ型のスポンジケーキが茶色くコーティングされ目の位置に丸いチョコが乗っている。
「すげー…茶色いコアラ?さすが落葉ー可愛いぞー!」
夜野が、にこにこしながら褒めるが落ち葉の表情は硬くなっていく。
雄介がそっと夜野に耳打ちする。
「茶色いコアラなんていませんよ…あれは、ゴリラです。」
「なるほど!」
雄介の冗談を飲み込み、いいなおす夜野。
「可愛いゴリラだな!落葉!」
「もういい…秋月弟なんて知らない・・・。」
少し寂しそうな表情で、エプロンを外す落葉。
「くまさんだよねー^^」
自分のケーキのデコレーションが終わった茜が落葉をみて言う。
ぱああああっと落葉の表情がほんの少しだけ変化する。
「うん。」嬉しそうだ。そのままぎゅーっと茜を抱きしめる。
「うぁー落葉ー///苦しいよおお」
「愛の力ですね。」
うんうんと頷く雄介。
「え!?俺は!?」
全員無視。