第3話 悲しき双子に恋しよう!
朝、鳥が囀り朝日が差し込んできてとても気持ちがいい。
瑠璃はそんな中で二度寝をしていた。
こっちにきてから二週間ほど経ちこの学校にも大分慣れた。
暖かくて気持ちがいい…いつまでもこうしていたいと思いながら。
「ルシファー様。起床時刻ですよ。」
バッチーン☆
「イタァァァァ!!」
対悪魔用の鞭を握り締めた雄介はニコニコしながらルシファー(瑠璃)が涙ぐんでいるのを見て笑っている。
「お前…。」
「朝食の時間ですよ。食堂で摂るか部屋で摂るかどちらがよろしいですか?」
「うーん…食堂まで行くか。」
もそもそと起きパジャマから制服へと着替え始める。
「…ルシファー様、逆です。」
ズボンを頭から被っていたルシファーは背中に跡が残るほどの痛みをもう一度食らう羽目になった。
「ぉっおぅ…。」
痛みに耐えながらルシファーは再び着替え始める。
慎重に着方を間違えないようにして…。
ここ赤薔薇白百合学園の寮の食堂は中高一貫になっている。
「繭希〜。こっちの席で食べようぜ〜!!」
「あ、大将〜なんかあっちも空いたよ〜?」
「…あ、久しぶりですね。里有君。」
雄介が里有に近づく。
笹木里有。学院長の孫である。
「あ雄介さん!お久しぶりです!えっと一年ぶりでしたっけ?お元気でしたか?」
里有は礼儀正しく頭を下げる。
「ミカエル!君はまさにミカエルのようだね!」
そんな里有に瑠璃異常反応。当然抱きつきます。
確かに男の割に可愛い里有とは似ているかもしれないのだが…。
「あの…どなたでしょうか…?」
「すまないね。僕の弟の瑠璃っていうんだ。僕が留年してしまったから同学年なんだけどね。」
雄介はそういってさらりと流す。
「里有、早く行こうぜ。」
英単語帳を手にしている里有の友達篠田繭希は里有を引っ張っていく。
「それじゃあすみません。僕はここで…。」
「はぁ〜。里有君かぁ…。可愛かったなぁ♪」
「ルシファー様。あの子は僕の大切な後輩なんですから手を出したりしないでくださいね。」
どういう意味だ?という風に瑠璃は顔をしかめる。
「なんだ?俺が男に手を出すとでも思っているのか?」
雄介は無言のままふっと微笑んだ。
「それじゃあ料理取って来ましょうか。食べるものなくなってしまいますよ。」
瑠璃がトレイをとろうとした時、手が誰かと触れた。
ふわりと甘い匂いが漂ってくる。
「ん?」
顔を上げるとそこには三谷落葉が居た。
「手どけてくれない?はっきり言って邪魔。」
そういうと落葉は瑠璃の手を跳ね除けトレイをとった。
今日も一段とさばさばとしている。
「落葉ちゃん〜おはよう。」
西藤ちゃんが手を振ると落葉は微笑みながら手を振り返す。
「雄介さんと瑠璃君もおはよう〜。」
瑠璃は西藤ちゃんに近寄り小声で尋ねる。
「あいつって笑ったりすんだな…。」
人であるから感情があるのは当たり前のことではあるのだが彼女に限ってはその感情を上手く出しているところを見たことがなかったから素直に嬉しかったのだ。
「落葉ちゃん意外とああみえて乙女なとこあるからね〜。」
西藤ちゃんは静かにうなずいた。彼女は知っているのだろう。
何度も彼女の笑顔を見たことがあるのだろう。
瑠璃は自分も落葉の笑顔をもっと見たいと思った。
それは恋愛感情からであり、弟を思う兄の気持ちでもあった。
「どうかされましたか?まさか西藤さんに心を奪われたんですか?」
雄介が不思議そうに尋ねてくる。ただ内心そんなことさらさら考えていないのだと思う。
だって口が笑っていたから。
「いや…そうじゃなくて…その…笑顔が似てたんだよ…ミカエルに…。」
落葉の見せた微妙な笑みが…。
雄介は盛大に溜息をつく。
「そうですか良かったですねぇ…。」
言葉とは裏腹にもの凄く面白くなさそうだった。
さっきまでの微妙な笑みはなんだったんだろうかと思わせるほどに面白くなさそうだった。
ようするに雄介は気まぐれなのだろう。
まぁなにがともあれ地獄のトップであるルシファー現秋月瑠璃は弟の生まれ変わりに恋をしてしまったのだった。