第1話 悲しい双子に会いに行こう!
下界…とか地獄とか呼ばれる世界。
まぁー悪い事とかした人が行く世界ね?
仏教では地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上と分かれるけどよくわかんないからね〜…。
そんなどうでもいい話はおいといて。注意これはコメディです。
この人間達から恐れられている地獄の党首サタン又の名をルシファーは赤い血の色の、鬼の皮をなめして張った革張りのふっかふかのソファーに腰掛け、血の飛び散った黒いデスクを前にして日課の号泣中。
「うわぁー…。馬鹿バカ莫迦〜!!神様の馬鹿野郎!!ミーガーエール…会いたい会いたいよぉ…。」
ルシフェルが前回地獄に落とされてからそんなこんなで何千年も経ったある日の事です。
悪魔なんで基本死にません☆
「ルシファー様…そんなお泣きにならないで下さいよ。みっとも無いですよ。」
デスクの傍に立っていた男がルシファーにハンカチを差しだす。
彼は人間であるがいつもルシファーの傍に居る事を許された特別な人間だ。
本来地獄に落とされる筈の人間ではなかったが、手違いと書類ミスで、地獄に落としてしまったからということ、その際ラファ…ルシファーと喧嘩になり、見事勝利したので地獄界最強の男と呼ばれている。生前は、数少ないエクソシストの一家であったため、勝てたのではないかといわれている。
彼がこの世界に来たのは一年前の事。いまではすっかり地獄に馴染んでいる。
地獄を支配している子鬼達とも仲良くなり、チェスなどを教えて遊んでいる。
最近の流行は彼の手作りの遊戯カードである。
ルシファーは涙を拭き、ずり落ちてしまった体を元に戻す。
男のほうをちらりと見ると、嗚咽を漏らしながら会話する。
「何かっひっく…面白いっ情報はっぐすっ…。」
男、は笑いを堪えながら昨日の報告を済ます。
「昨日は何も変わったことはございませんでしたが、A区に新しく入ってきた受刑者が脱走しようとして火炙り・つめはがし・鞭打ち症体感50回コースの刑に処されてましたよ。とても見てて快感でしたよ。泣き叫ぶ声……やはり、良い!!。」
雄介は口元を緩ませる。
「この変態が…。」
ルシファーはぼそりと呟く。聞こえない位の音量を心がけたのだがなにぶん距離が近いため当然男には聞こえていた。
「何か言われましたか?」
対悪魔用に作られている鞭を彼は取り出した。エクソシストってもっとなんか十字架とか持ってそうなイメージだが、この男の趣味で形状が鞭となっている。
悪魔長を務めているルシファーでさえも、狙われたら回避不可能で、猛烈な痛みに襲われるという。
「いや…何でも…。」
ルシファーは首を横に振る。まるでそのポーズは子供がイヤイヤするようだ。
顔は真っ青で滝のように汗をかいている。冷や汗であろう。
男はその表情にまた笑みを見せ、ポケットから手帳を取り出した。
事務が苦手なルシファーのために、秘書代わりをやっているということもあり、様々な情報を持っている。
「そうですか。それと貴方に良い情報がありますよ。ミカエルさんでしたっけ、あの方もう亡くなられてますよ。」
男は、これ以上無い笑みを見せる。この情報を手に入れたのは3ヶ月ほど前のことであったが、この絶望をいつ味あわせようかとわくわくしているうちに月日が経ってしまっていたので、言えずにいたのであった。
予想通り、絶望のどん底のような表情のルシファー。青ざめた顔はもはや白くなっており、生気を失いかけていた。
「そ…そんな…。」
なんとかぼやくように、言葉を口にする。そんなルシファーを横目で見ながら、男は続ける。…男は、そこから先を口にするかどうかは少し躊躇ったのだが、より深い絶望を味あわせられる可能性があり、尚且つ面白いとなれば当然、それを選ぶのが人間というものだ。
「それで、去年まで僕が通っていた学校にミカエルさんが通われているんですよ。まあ正確に言うとミカエルさんの生まれ変わりの方がですが。どうです?行ってみたくないですか?」
男が思ったとおり、ルシファーの反応は、即答であった。
「そんな誘惑…行かないわけが無いじゃあないか!!」
ルシファーはすぐに荷物を纏めると置手紙を残し男の前に戻る。
周りで話を聞いていた悪魔たちはぽかーんという顔になっている。
「お前はどうするんだ?」
向こうに戻ってしまったら幽霊になってしまうのではないだろうか?
「平気ですよ。貴方が僕を人間に戻してくれればいいんですから。」
そういうことか…ルシファーは渋々うなずいた。
ずる賢いというかなんというか。
まぁ何がともあれ人間界へいざ出発!!
残された悪魔たちは、困った長であることを1週間は嘆いたそうだ。
ここは赤薔薇白百合学園高等部1-青組の教室の一角。
「にしてもさー。ここの学校名キモくね〜。」
「分かる分かる。青組とか何だしって感じ〜。」
1-青組のクラスの人間は楽しくお喋りに勤しんでいた。
2人は、向かいの机に座っていて、まさにギャルという感じの格好。
制服のボタンをだらしなく開け、スカート丈はこれでもかという程短い。
2人だけが特別ということでもなく、皆一様に同じような格好をしていた。
やけに力を入れて着崩してみたりする様は少し面白い。
「はいはーい、朝礼始めるぞ〜。」
そのうち、みなにとってみればうざったいだけの先生が教室に入ってくる。
それでも静まる様子はない。
担任の先公は深い溜息をついた。
「先公とかさ…通常変換で出てこないから止めてほしいよ…。」
先生が何か言っていても、生徒達は先生に従う気は無いらしい。
思い思いの反抗の態度を示している。
携帯やったり漫画読んだり…。中には教室内でいちゃついているカップルもいる。
先生が頭を抱えて椅子に座り込んだのを見て、ひとりの少女が立ちあがる。
この不良っぽいのが多い(根は良い子)1-青組の中で一番可愛らしい女子だった。
「皆先生が嫌がってるの分からないの?止めてあげようよ。」
よくいる委員長タイプ。
男子は、彼女の可愛さにでれーっとして大半が一様に席についていったが、引き下がらないのは女子だ。
「何よ、西藤さんには関係ないでしょ!?ちょっと可愛いからってえばっちゃってさ。」
私だって好きで可愛いんじゃない。西藤がそう言おうとしたときだった。
「ミカエル〜!!」
西藤に意味不明なことを発している男子が飛びついてきた。西藤よりも、遥かに背が高く、力もあるためそのままよろけて倒れそうになる。その瞬間教室がざわめいた。
女子は突然入ってきた男の評価に入り、男たちは羨ましいと、自分に置き換えて妄想を始める。先生はもはや、何も言えずぽかーんとしている。
「なっ何!?やめてよ。警察呼ぶよ!?」
西藤ちゃんは必死で腕にしがみついて離れようとしないルシファーを引き剥がそうとする。
「あ、初対面でそんな事すると第一印象最悪ですよ。って聞いてないか。」
ルシファーの側近もとい調教係である男は彼より5メートル離れた所でぼそりと呟いた。
西藤ちゃんがやがて抵抗をやめたころ廊下の方にいた男の方へと近づく。
「雄介。どこ行ってたんだ心配したぞ。」
「貴方に心配される必要はありません。ただ学用品と入学手続きを済ませにいっていただけです。」
教室に、男が入ってくると女子は突然入ってきた美男子に驚きながらも興味津々でひそひそと話し合っていた。あの3人はどういう関係なのだろうか?などと創造を膨らませていく。
「ちなみにそちらの方はミカエルさんの生まれ変わりとかじゃありませんよ。ミカエルさんはこの生まれ変わりは三谷落葉さんといわれる方みたいです。」
「みたにらくは?変わった名前だな。」
ルシファーは必要なくなった西藤ちゃんを押し飛ばすと、腕を組む。
魂が惹かれあって必ずすぐに分かるはずだと思っていたから、ルシファーはちょっと残念だった。
男…秋月雄介は声を潜めルシファーに耳を近づける。
「貴方はここでは秋月夜野と名乗っていただきます。よろしいですね?それと夜野は僕の年子の弟という設定ですから。」
学校というところがよくわからないルシファーは素直に頷くしかなかった。
「そういえば後ろにいるの秋月先輩じゃない?」
ふと誰かが言った。この学園は小中高の一貫校となっていて、中高間では交流も盛んなため、少し上の先輩を知っていてもおかしくはない。
「何言ってるの。秋月先輩は一年前に不慮な事故で突然死したんじゃない。」
また他の誰かが、言った。
雄介は平然な顔をしているが確かにそうだ。
彼はここにいてはいけない。いる筈の無い人間なのだ。
空気の読めるルシ…夜野は、落ち込んでいるのではないかと思い、雄介の方を見た。
だが、驚くほど平然としていたのであった。
「僕は正真正銘の秋月雄介です。まぁ一年間病院で入院していたせいで留年してまい貴方方とは同い年になってしまいましたが。その病院で生き別れた年子の弟夜野にあったんです。ほら夜野前に来て挨拶しなさい。」
というちょっと無理のある説明で皆納得した。
どうやらこの学校の知能はかなり低そうだ。
ルシファーいやこの後からは夜野と呼ぼう。
夜野が少し興奮気味で前に出ようとすると、さっきぶっとばされた西藤ちゃんが夜野のシャツの襟を掴んだ。その表情は委員長らしからぬ…いや、可愛い女の子らしからぬ怒りで歪んだものだった。
「あの…さっきいきなりぶっ飛ばされて流石にカチンと来たんですがその辺の説明をしっかりとしてもらえませんかねぇ…?」
「○×△★!?」
何故怒られたのか、さっぱり分からず言葉になっていない夜野。
そこへ仕方ないなぁというように、雄介が割ってはいる。
「先程の稚拙な弟の無礼な行動僕が代わって謝礼します。」
滑らかな口調と作り笑顔。
「は…はい…。」
これに落ちない女はいないだろう。と思った矢先、今度は雄介のシャツの襟が・・・つかまれることはなくその手は空を掴んで落ちたのだが威勢たっぷりの声で西藤ちゃんは言う。
「ってそれで済むと思ってんのかおらぁ。」
西藤ちゃんキャラ崩壊。
「あっ…茜ちゃん…(退」
クラスでひそかに結成されていたファンクラブの一人が、おずおずと後退する。
茜が押されたときに外野で夜野に心の中で、悪態をついてはいたが、実際に言葉に出すことができないへたれ野郎である。
西藤ちゃんの名前はちなみに西藤茜ちゃんです。
はっと我に返る西藤ちゃん。
「あっやだわ私ったらつい…。」
今更…今更だろう。
クラスのみんなが、そう思っていた。対抗している女子の一部のグループは少し親近感を覚えたようであったが…。
これで西藤ちゃんのこのクラスでの地位は無いに等しくなった。
ドンマイ西藤ちゃん!
んで放課後
朝の一件では終わらず、夜野と雄介は屋上に呼び出しされていた。
「それもこれもあんたのせいよ!!」
勿論西藤ちゃんに。
「何が…?」
「プリティアイドル茜ちゃんの名をあんたが汚したんじゃない!」
アイドルにはあるまじき性格の悪さを見せる西藤ちゃん。
よほど本性をさらしてしまった事が悔しかったのでしょう。
ていうかアイドルだったんですか。
「黙れ、狩るぞ。」
なんとなく真顔でそんなことを呟いてみるルシ…じゃなかった夜野。
「この学校はエクソシストの末裔が多いですから無闇に姿をさらすと獲って食われますよ。」
夜野の表情が凍る。エクソシストこえぇ…。ていうかこの学校設定が謎だ…。
その会話を聞きながら西藤ちゃんは苦笑いをする。
「私はエクソシストじゃないから…平気よ?でも狩らないでね。」
警戒丸だしで、腕をXにしている西藤ちゃんの姿に夜野は声を上げて笑った。
「よし。お前面白いから俺の下僕にしてやるよ。」
「うん。断る。」
即答。つか当たり前です。
「当たり前ですよ。貴方にはこの人間界での常識をとりあえず身につけてから学校に来させるべきでしたね。」
地獄ではこんな会話が当然だったようです。力が全ての世界です。
「人間界とか…あんたら異常な人?ていうか本当にあの秋月先輩なんですか?」
西藤ちゃんが首を傾げる。その表情は、興味半分恐怖半分である。
「…協力してくれるとおっしゃるのなら喋っても構いませんが?」
この人の笑みは肯定のみを選ばせる…なぁ…。
と西藤ちゃんは考えました。
「・・・・・・・・・・・・・・はい…で協力って何ですか?」
雄介はそっと西藤ちゃんの頬に手を沿え口の前にもう一方を指を立て持って行く。
「誰にも内緒って約束してくれますよね?」
「もっ勿論です!!」
西藤ちゃんの顔は沸騰寸前というほど赤くなっている。
駄目だこいつ。
「三谷落葉さんという方をご存知ですか?」
「はい、私の部活の友達ですから。」
とてもあっさりー。
「良かったですね。こんなにもすんなり行くとは思っても見ませんでしたよ。チッ…。」
雄介はそっと夜野へと囁くように言った。
「おいお前今舌打ちしなかったか?」
「耳の錯覚ですよ〜。」
「あの…先輩…耳は錯覚って言いませんから。」
西藤ちゃんは遠慮がちに的確なつっこみをする。
「あ、雄介さんでいいですよ。同学年なんですし。下ぼ…じゃなかった茜さん。」
「え!?今下僕っていいかけませんでした?…………えっと、それで雄介さんはどうして落葉ちゃんを?」
「それはそいつがミカエルの生まれ…ムゴガェ」
言いかけたところで雄介によって口をふさがれた。ついでに鼻までおさえられているので息がままならない。
「諸事情ありましてね…。」
ミステリアスな雰囲気をかもしだす雄介。だんだん腕の中の夜野は、酸素不足で赤くなっていく。
「あの…。」
西藤ちゃんは遠慮がちに雄介に何かを言おうとした。