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プロローグ 悲しき双子にお別れしよう! 

むかーし昔に遡りそれは神様が地上に人間を作って間もない頃の話だった。

ミカエルというそれは美しい大天使と、ラファエルという強く賢い大天使の双子がおりました。

二人は仲むつまじく…皆の憧れの対象となっていました。

「兄さん!!うざったいから離れてって言ってるでしょう!?」

仲睦まじく…。

ミカエルは、兄が腰辺りに纏わりついて離れないという奇行に対して並々ならぬ苛立ちを感じながらもそれを最低限までに抑え込み、割合と優しさの篭っている男とは思えぬ美しい声で兄を窘めました。

「あのエロ野郎のところになんて絶対連れてかせないぞ!!」

窘めにも関わらず、ラファエルは双子のであるミカエルの腰周りを撫で回す。その手つきは兄弟とは思えない、いやらしいものだった。まるで満員電車での痴漢のような…時折手つきに耐え切れずミカエルは、寒気を堪えられず兄の腕の中でぶるりと身震いした。全身に鳥肌が立っている事がミカエルの兄に対しての拒否反応を物語っている。

「仕事だって言ってるでしょ!!全くどっちが変態だっての。」

ミカエルは兄の鳩尾の辺りに軽く拳を入れ兄が少しだけ怯んだ瞬間に手の届かない範囲まで逃げ、溜息をついた。兄貴があほすぎることが本当に嫌になる。


ラファエロがいうエロ野郎というのは創造主。つまり神様のことだ。

神様は男の割には美しく綺麗なミカエルを好いている。

神がミカエルに大して並々ならぬ負の感情を抱いている事をミカエルは理解していた。

でありながらも、神は創造主であり、絶対の存在であるから逆らうことなど出来るはずがない。ていうか倫理観的に、肉親である兄にいっちゃいっちゃべったべったされるよりは神の方がまだマシかなというもはや諦めの領域である。

そして言わずともラファエルはブラザーコンプレックス、ブラコンであった。唯一の肉親であるミカエルに並々ならぬ愛情を注いでいて、大切にしている。

兄の愛情をミカエルは理解してはいるのだが、やはり度が過ぎているため甘んじて受け入れる事はできない。せめて、下心満載で、一緒に寝ようと迫られるのはやめて欲しいと考えている。


ミカエルは兄が諦めて空の方へと興味を移したので、その間に出勤の準備に取り掛かる。ふわふわとした髪にくしを入れていくのを、空を見ていた筈の兄はじっくりと視姦する。

まだ少し寝癖の付いている髪に櫛を通すと一瞬押さえつけられるのだがまたぴよんとはねて戻ってしまう。ミカエルはそれが嫌で、何度も試すのだが結果は変わらない。5分ほど、試した後諦めて他の支度をすることにした。

全てのしたくが済んだころ、見知った顔が目の前に現れた。

「ミーカーエール☆遅いから迎えに来ましたよ。」

子供のように微笑む神様の姿にミカエルは少し苦笑を漏らす。

この人もミカエルのストレスの原因になっているという事を彼は知らない。

いや、もしかしたらミカエル自身も気づいていないのかもしれない。

この平和な変わりない天界での専らのミカエルの仕事は、神様のご機嫌取りである。

神がせっかく整えた髪をくしゃくしゃと撫で回しても、兄にされると相当嫌がる腕の中に入れられるという行為をされても、ミカエルは営業スマイルを徹底している。

兄はそれを快く思っていなかった。苛立ちを覚えながら、神をにらみつけている。

普段ならここで、神は自分の寝床へとミカエルを連れて去るので兄は弟が何をされているのかを知らずに済んでいた。

「らーちゃんー。君の大切なミカエルが普段僕にどんなことをされているか貴方も知りたくてたまらないのでしょう?」

神は意地悪に微笑んだ。ラファエルの顔が紅潮する。それは、怒りからか、考えている事を悟られたことに対する恥ずかしさなのかは分からない。ただ湧き上がるようなどす黒い感情が、ラファエルの体を支配していった。

「ま…マスター?」

ミカエルは神の言葉に怯えたような表情に変わった。その表情がラファエルの怒りに火をつけてしまったのだった。

「てめぇ…。「兄さん!」」

気づくと、戦闘用の弓を手に持っていた。これは、神に反逆した者たちを打ち抜くための弓であるが、普通の弓としても使えるのでそれを創造主である神に向けることは反逆としてみなされていた。我を忘れ、きりきりと照準を神の脳天へとあわせる。すぐに放たれ、神の脳天を貫いた…かのように見えた。…が、その矢は、額に突き刺さらずにぽとりと落ちた。

「反逆ですか。仕方ありませんねぇ…ねぇミカエル。そういえば言ってましたよねお兄ちゃんなんか消えれば良いんだって。」

そこまでは言った覚えは無い…。でも、もしかしたら言っていたのかもしれない。

ミカエルは、どうすれば兄を助けられるか頭を捻って考える。

罪には、罰というが、それでも兄が怒ったのは自分の為であると気づいていたからミカエルは必死だった。

「あの…」

許しを請おうとして、ミカエルが口を開き、ラファエルは2本目の矢を神へと照準を向けたとき、ちょうどそのときだった。

突然天界にひびが入りラファエルはそのひびの中に吸い込まれるように消えていったのだ。

本当に唐突で、瞬間的なことだった。

「!!」

ミカエルが慌ててそこを見る。しかし…そこはただの雲で出来た地面で、何もなかった。

どうしようもない虚無感がミカエルを襲う。

神が優しく声をかけるが、もうそれはミカエルには届いていない。





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