振り出しに戻る
泉を背に道を戻り、先程抜けてきた浜辺へと続く藪の前を通りすぎる。
幸い、道は無くなる事もなく、15分ほど隆一は歩き続けた。
ふと遠くの方に物音を感じ、曲がりくねった道の先に目を凝らす。
緩やかな登りの先が、また下りになっていて、どうもその下の方に、なにかいるらしい。
ガヤガヤとした気配も徐々に伝わって来る。
「お、人がいる・・・・!!!???」
坂の上に立った隆一の眼下に、小さな小屋の集落が広がっていた。
だが、それだけで絶句するほど驚くようなことはない。
隆一が言葉を失ったのは、その集落のあまりに現実離れした様子・・・
トタンやガラスなど一切ない小屋。まぁそれだけなら田舎の港にないこともない。ただ、いくらなんでも、集落丸々そんな家ばかりなんて事はあり得ない。
まして集落の中を闊歩するのは、身長120㎝くらいのやたらと小柄な身体紫がかった土色の肌、尖った耳。毛皮の服を使った貫頭衣に、手には錆びだらけの剣・・・。
パッと見て5体ほどの小人が、集落の中をうろうろしていた。
しゃがみながら道端の木にあわてて身体を隠しながら
「・・・・ゴブリンってやつか!?」
混乱しすぎて麻痺した感情とともに、隆一は我知らず呟いていた。
ゲームや小説、漫画などで描かれているモンスターそのままの姿。
物語の序盤で大抵出てくる雑魚モンスターの王様、ゴブリン。
ただ、実際に見てみると、武器を手に持った見るからに危険な小人の集団。
まして自分と敵対的なのか友好的なのかもわからない集団と、いきなり殺し合いなんか出来るはずもない。
隆一はそのままこっそりと後退りし、気がついたら最初の浜辺に寝転がって荒い息を整えていた。