夢???
「「この泉は、ボクの一部っていうか根源の一つなんだ。ここの泉の水を飲むと、ボクと話が出来るようになる。ボクはこの辺りの土地神みたいなもんだからね。この辺りの人はみんな物心付く前に洗礼っていって、この泉に水を飲みに来るのさ」」
「いやいやいやいや・・・」
思わず頭を抱えて、隆一は妖精の言葉を遮った。
「いくら夢でも、俺ってこんな想像力とか願望ないぞ」
「「夢!?何言ってるの」」
リシッャクが首を傾げる。
「「それだけあちこち擦り傷だらけで、結構痛いでしょ?夢なら覚めてるはずだって」」
「いやいや、だからって、いや、納得できないよ」
「「ボクがいるのが何よりの証明だよ。ボクが言うんだから」」
「お前の存在が一番疑わしいんだけど・・・」
「「て言うか、キミどこから来たの?服も靴も変だし」」
言われて改めて自分の体をみた。ふと気がついて、ポケットからスマホを出し、電源を入れた。
「「なに、それ?」」
「・・・」
覗き込むリシッャクを無視してスマホが起動するのを待つ。
やがて作動音を立てて、スマホの待ち受け画面が開いた。そのままカメラアプリを起動して、リシッャクに向け
カシャ
「「きゃあ!!」」
オートにしているフラッシュが光り、画面にはびっくりして両腕で顔を隠す妖精の姿がバッチリ写っていた。
「保存・・・と」
スマホ操作しもう一枚撮ろうと目をあげると、リシッャクの姿はどこにもなくなっていた。
びっくりしてどこかに隠れたのか、それとも夢だからなのか
暫く辺りを探して見るが、リシッャクの姿はどこにもなかった。
仕方なくスマホの電源を落とし、ポケットに戻す。
さて、どうしたものか
さっきのリシッャクの説明だと、近くの人は洗礼とやらでこの泉にくるらしい。という事は、この泉への道をさかのぼれば、人のいる所に着くはず。
そう考えを巡らし、隆一は踵を返した。