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第29話【アテナ】

まだ途中までしか書いていないところを一度公開してしまい、それも大事な所だったのは申し訳ないです。

色々な事情で、かなり更新が遅れてしまいました。

またぼちぼち再開していきます。

明日か明後日にはもう1ページ書く予定です。


魔術障壁を張ったからといって、闇ユキナが魔術を放たない訳がない。


「やらせはしません!《アストラル・メテオ》!」


詠唱破棄された魔術名の宣言と共に、闇ユキナの頭上に尋常ではない大きさの、まるで隕石のような炎の塊が出現する。

その炎の塊はリュウゲンを目掛けて落ちていき、そして魔術障壁へと衝突した。


はぁっ!?なんだそのアホみたいな魔術!

普通にヤバいんだが!?


衝突しただけで魔術障壁はひび割れてしまい、何とか受け止めてはいるものの、今にも砕け散りそうになっているのが分かる。


もう少し保ってくれ………!


「書いたぞ!あとはどうする!?」


『後は詠唱のみ。今から小僧の頭に送る』


魔方陣のイメージの時同様、直接自分の頭に詠唱の文が浮かび上がる。


「我、理を読み解く者。我、万象を操り、世界を創る者。我、原点にして事象を起こす者。闇を知り、真なる物を追究し、全てを制す。創造せよ、《クリエイト》!」




そして全ての時が一瞬だけ止まり、リュウゲンだけが全てを把握する。


あぁ………分かる……俺の中に、新しい力が流れ込んでくるのが。

これが俺の……初めにして、新しい武具。



その名は………

「《グレイプニル》」



その名を呼んだのと同時に、大量の鎖がまるで盾のように、リュウゲンの頭上を覆うようにして現れる。

それと同時に魔術障壁が砕け、炎の塊が鎖へと衝突する。

そして鎖に触れたと同時に大量の鎖が炎の塊を包みこむと、収縮しその魔術を打ち消した。


「なっ………私の魔術を……」


闇ユキナが放った魔術は、古代魔術の中でも威力だけなら1、2を争う程のもの。

それを呆気なく無力化されてしまったため、驚くのも無理はなかった。


「成功……だな」


そう言い、一つの鎖を手にする。


リュウゲンが新しく手に入れた武具は鎖。

魔力の消費と共に、幾多もの鎖を召喚する事ができる。

能力は二つ。自身が召喚した鎖を自由自在に操れる事。


そして………この鎖は()()()()()()()()()()()()()という事。


これだけ聞くとかなり強力ではあるが、その代わりに魔力の消費量がかなり多い。

一つの鎖を出すのに、10万ほどの魔力を持っていかれる。

さらに言えば、相手の魔術の規模によっては無力化できる鎖の数が変わる。

一本だけでは、今の大規模な魔術は無力化できない。



今の魔術を無力化するのに一千万くらい魔力使ったんだけど!?

あんなんポンポン出されたら、先に俺の魔力が尽きるんですが!


『成功しただけ良いとは思うがな。何はともあれ無事で良かったではないか』


「それもそうか。まあ、ちゃんと俺の欲しいものが手に入ったわけだし。こっからは俺のターンだ」


「たかが武具一つ手に入れただけで何を?それだけ強力なものならば、魔力の消費は大きいと思いますが?」


スゲー、普通にバレてるう。

だからと言って正直に答えるつまりはないがな。


「さて、どうだろうな。少なくとも、あるとないとじゃ違うだろ?」


「そうですね。面倒にはなりますが、私が有利である事に変わりはありません。貴方はここで死ぬ」


確かにその通りだが、そう簡単に事は運ばない。

それにまだ、やっていない事がある。


「ちょうど俺も対等…….とは言わないが、何とかなりそうなくらいの力を手に入れたわけだが。一つ、お前に質問がある」


「………………何でしょうか?」


実は、最初のかなり前の時点から何かがおかしいと俺は感じていた。

そして、今まで闇ユキナと会話をし、戦闘をし、ある程度そうではないかと思えたからこそ言いたい事がある。


「お前は()()()()()


「……!」


その一言で、今までと比べて感情のこもった驚いた表情をする闇ユキナ。

しかしそれは一瞬の事であり、すぐに先ほどと同じ絶望感に満ちた目を向けてくる。


「…………何が言いたいのでしょうか?」


「何って、そのままの意味しかないな」


「私は私。ユキナの一部ですが?」


あくまでもしらを切るつもりか。

なら、容赦はしない。


「ほう……真実を吐く気がないなら、こっちの方で無理矢理暴かせてもらうぞ?」


「……だから、貴方は一体何を言っ「術式発動」…!…ぐッ、あぁぁあぁぁあ…ッ!」


リュウゲンの一言によって突然と闇ユキナが苦痛の表情と共に悶え始め、そのまま耐えきれずに両膝を地面に着ける。

そして、闇ユキナのお腹付近に魔方陣のような形をしたものが浮かび上がった。


「私に……一体、何を……っ!?」


「お前の動きを封じる魔術を施した時に、実はもう一つ別の魔術を仕掛けてたんだよ。それを発動させてもらった」


それは、《リリース》と言う名の魔術。

これも原典に載っている魔術であり、《クリミナル・セロ》と同時に闇ユキナに掛けた魔術だ。

その魔術を施したものに、強制的解放、解除、分離、分解をさせる魔術。

さらに言えば、この魔術に対して抵抗すればするほど、そのものによっての苦痛を与え続ける。

使用条件として、対象に直接触れないと魔術を施す事が出来ず、なおかつ対象が封印されているか、偽っているか、もしくは二つ以上のもので作られているか、あるいは二つ以上の側面を持っていなければ発動は出来ないという条件がある。

たが、発動出来れば強制という絶大な効果をもたらす事ができる。


「抵抗は無駄だ。大人しく、本当の姿を現すことだな」


「まさか………私が、たかが人間ごときに……!?ぐッぁぁぁあぁぁあ…ッ!」


絶叫と共に闇ユキナの全身が眩くほどの光に包まれ、見えなくなっていく。

そして数十秒で光は徐々に薄れていき、真の姿が露わになる。


そこにいたのは闇ユキナではない。

リュウゲンの知らない女性が、こちらを睨むようにして立っている。

まるで天使のような綺麗な白い衣を身に纏い、右手には闇ユキナが使っていた大鎌が握りしめられている。

この世の者とは思えないほど、女神のような整った顔をした白髪の絶世の美女だ。

流石のリュウゲンも思わず数秒間見惚れてしまうほどのものだった。


もしや、マジモンの女神様とか言わないよな?

今まで見てきた女共とは別次元レベルすぎる。


「ふーん……なるほど。それがお前の本当の姿ってことか」


「まさか……たかが人間ごときに見破られた挙句、この姿を見せる事になるとは………いつから気付いていたのですか?」


「こっちの明るいユキナが、分けられたもう一人のユキナがいると言った時からだな。俺がお前の存在を考えるようになったのは」


「…………」


「なに、単純にもう一人ユキナがいるって事はありえないのでは?と思っただけだ。だってそれが本当なら、ユキナは人格を二つ持っているって事になるしな。この数日間ユキナといて、そんな素振りも一切なかった」


感情は一つのものだ。それが分けられて自立行動するとか考えられない。

あるなら、もう一つ人格があるか、別の奴がユキナの中に存在してるかだ。


「それだけの理由で、私が偽物だと?」


「いや、これだけだと足りないな。俺といる間だけいつものユキナになってるだけの可能性もあるしな。じゃあ何で判断したか。それは簡単だ。ユキナの魔力は封印されてるという。だが赤子のユキナが無意識の内に封印をした?そんなの無理だろって話しだよ」


そう、知識のない赤子であるユキナが、無意識のうちに大量にある魔力を封印したというのは無理がある。


「そして考えられるのは第三者による封印。可能性としてあるのは、ユキナの親又はその近しい者になるが、ユキナの話しを聞く限りではその線は薄い。なら可能性は一つ。ユキナの中に別の何かが存在している可能性だ。ここに来て、もう一人ユキナがいると言われた所で俺は確信したって訳だ」


「つまり最初から分かって………」


「そうなるかもな。それにもう一つ理由があるぞ。こっちのユキナは俺を兄と呼ぶのに、お前一回も俺のことを兄どころか名前すら呼ばなかっただろ?」


「………………………」


「無言は肯定とも言うが?」


「誤算でした………貴方を少し舐めていたようです。本来、貴方にはこの姿を見せずに退去してもらう予定でしたが、致し方ありません。ユキナには悪いですが、貴方の命を確実に頂戴致します」


そう言うと大鎌を構え、今にも襲いかかるような殺気をリュウゲンに放つ。


「おいおい、真の姿になっても好戦的なのは変わらんのな。その前にいくつか質問がある」


「それに答える義務が私にあるとでも?」


「冥土の土産って言うだろ。そんなに俺を殺せる自身があるのなら、別に質問に答えたっていいじゃないか」


「いいでしょう。貴方の言う通り、どうせここで死ぬのです。その質問に答えましょう」


見事なまでのフラゲをどうも。

大体こういう時は、後々形勢が逆転していく………訳だが、そうであると信じたいところ。


「何故ユキナの中にいる?目的はなんだ?」


「私は遥か太古の時代の者。私の名は《アテナ》。肉体を待たない私は、自分と同等の器を持つ者の誕生を、生と死の境目から幾千もの時を掛けこの子を見つけ出しました。私の目的はただ一つ………機が熟した彼女の肉体を器とし、自身をこの世に受肉させること」


「なるほどねぇ………つまり、身体を乗っ取るつもりって事でいいんだな?」


「えぇ、そう言うことになります」


「もう一つ最後に聞こう。ユキナの身体に受肉した場合、ユキナ自身は一体どうなる?」


「完全に受肉すれば、ユキナの意識は完全に消える事になるでしょうね。これでも彼女には悪いとは感じています。ですが、私の目的の為の犠牲になってしまうのは致し方ありません」


「そうか……………つまりお前は、俺の敵って事でいいんだな?」


「私から彼女を守ると言うのであれば、そう言う事になりますね」


ユキナをどうこうするというのであれば、それは明確なる俺の敵。

敵は排除する。


「ならば………容赦はしない」


その言葉と同時にリュウゲンが先に動く。


「…ッ!速い…!」


本気になったリュウゲンは、ルメオやフラン・クリケットで使っていた移動方で、一瞬にしてアテナの横まで移動。

そして、持っていた鎖をアテナに叩きつける。


肉体を持たない。つまり幽霊のような存在であるアテナには、この鎖で叩かれるのは、普通に傷を負うよりも効果的であるはずだ。


だが、いつのまにか貼られていたのか、三重に施された結界によって阻まれ、それを確認した瞬間リュウゲンは一瞬にして後退する。


いくら事象を無効化出来るとはいえ、三重に施された結界をたった一つの鎖で一回殴った程度で無効化する事は出来ない。

幾度も攻撃すれば結界を破る事は出来るだろうが、そんな時間を与えてくれる相手ではない。

真の姿になった今。闇ユキナだった時よりも厄介になっている可能性もある。

そう考えたリュウゲンは、一度引く事を選択した訳だ。


そして後退するのと同時に数十本の鎖を連鎖的にだし、アテナの周りに展開している結界を無効化する。

結界が消えたのを確認し、もう一度アテナの目前へと瞬間移動したリュウゲンは、鎖を鞭のように使いながら攻撃を幾度も繰り出す。

リュウゲンのスピードに少し遅れ気味ではあったものの、アテナは冷静に攻撃を見極め、その鞭のような攻撃を大鎌で受けて防御していく。


「これが貴方の本気という事ですか。やはり、貴方は危険な存在ですね。まさかここまでの戦闘力を持つとは驚きです」


「防御しか出来ない状態で、そんな呑気な事言ってる余裕があるとはな!」


この女に容易に魔術を使わせてはいけない。

遠距離からの物量による魔術合戦になった瞬間、それは俺は敗北だ。

ただでさえこいつの使う魔術を一つ無効化するのに大量の鎖を使う。

高威力の魔術をポンポン使われた時には、それら全てを無効化して処理する事は不可能だ。

弾数で言えば、圧倒的な差があるのだ。


その為、こいつとは常に接近戦で戦い、規模の大きな魔術を使わせる暇を与えてはならない。

攻略方は一つ。この女の隙を接近戦で作り、グレイプニルで縛り上げること。


そしてグレイプニルは、俺から半径10メートル以内であれば自由に出し入れする事が可能であり、詠唱も必要としていない。

魔力をそれなりに消費するため、弾数に限界はあるものの、使い方次第ではかなり強力な武器にもなる。


数度の攻撃を受け流された所で、リュウゲンは鎖を頭上から数本出しアテナへと放つ。

しかしそれだけでは終わらず、アテナの刺客である後方からも数本の鎖を同時に出し、前と後ろからの同時攻撃を接近戦をしながら繰り出す。


「甘いです。魔力感知で、後ろからの攻撃は気付いています!」


「くそ、まじか…!?」


アテナは言った通り、大鎌を大きく回転するようにして一閃するだけで、リュウゲンの放った全ての鎖を弾き返す。

それと同時にアテナはリュウゲンから素早く後退し、人間一人飲み込めそうな程の大きさの炎の塊を、無詠唱でリュウゲンへと数発放つ。


あっ、まずい。これはまずい。

この炎の魔術がまずいんじゃない、問題はその後使われる魔術。


リュウゲンは全ての炎の塊を、持っているグレイプニルで一つずつ消していくが、その間にアテナは詠唱を始めていた。


この炎の魔術は単なる時間稼ぎのもの。

大きな魔術を使うための、詠唱のための時間稼ぎ。


「やらせるかっ…!」


しかし全ての炎の魔術を処理した時には、すでにアテナの詠唱は終わっていた。


「もう、遅い……我が世界、《アイス・ヴェルド》」


唱えた瞬間、この場の気温が一気に下がったのを感じたリュウゲンは、危機感を感じとりアテナへと近づくのを止める。


「これは一体………」


「ようこそ氷の世界へ。この場は全て私の領域となりました。貴方にはもう勝ち目がありません」


「ハハハッ………まさか、気温が下がるだけのもんじゃないよなさすがに………」


それだけならとても有り難いが、そんな訳がなく…………


「えぇ、その程度の効果しか持たない魔術ではありません。こういう事です」


アテナの頭上には、いつのまにか数百という数の人間大の大きさ氷の塊が作られており、それらが全てリュウゲンの方を向いて宙に浮いている。


「なんなんだよこの数は…………」


『《アイス・ヴェルド》……古代魔術ではあるが、その中でも1、2を争うほどの力を有する領域魔術の一つだ。その場を自分の領域とし、領域内では自由自在に氷系統の事象を操る事が出来る』


その領域内では氷を自由自在に作り操り、この感じじゃ気温さえもあいつの意思で変えられるってことか?


『その通りだ。いわばこの領域内では、絶対的な存在となったと言ってもいい』


いや、それは本当にやばいな。

なんかやばいしか言ってない気がするけど、これは本当の本当にピンチなのでは?

容赦しないとか自分で言っときながらこの始末…………恥ずい…………


「貴方のその鎖は、確かに強力ではありますが、無限に使えるわけではない。そしてこの魔術はその場の空間全てを範囲としているため、その鎖ではどうする事も出来ず、このように無限とも言えるような力の前では無意味。後は時間の問題です」


「あぁ、流石に俺もこれを全部どうにか出来るとは思っていない。それに、これを全部どうにかした所で、もっかい同じのを簡単に作れるんだろ?」


それも無限に。

なら、また一瞬でアテナのところまで移動して接近戦をやればいいって事になるが、それも難しいだろう。

俺のスピードに一瞬追いつけはしないものの、フラン・クリケットのように反応できない訳ではなかった。

さっきも少し遅れてらいたものの反応されたし、何度も使えば俺のスピードにも慣れてきて対処も楽になっていく。

さらに言えば、極め付けはあの頭上ある大量の氷。

あいつと接近戦しながら、頭上から無限のように降り注いでくる氷の塊も同時に処理するとかはっきり言って無理だ。

流石に持って数十秒。


『絶望的状況だな小僧』


せめて俺にも、無限に魔力があるとかなら対抗の手段はあるのに……………ん?


無限の魔力?…………あるじゃないかそんな魔力。


「なぁゴースト。もう一つ今から武具を作るって言ったら可能か?」


『小僧まさか…………いや…可能ではあるが……一日に二度作るなど、今まで試した者は一人もいない。小僧の身体にどんな負担が掛かるかどうか……』


「可能ならそれでいい。その後のことはその後の事だぜ」


『そうか………小僧がそういうのであれば任せよう。たが、肝心の魔力だが…………』


その肝心の魔力だが、一つだけ心当たりがある。

これは賭けと言ってもいい。武具をもう一つ作る以前にかなり危険な賭けだ。

たが、もうこれしか方法がない。

今の俺の手持ちの力では、この状況を突破できない。


だったら、どちらにしろやるしかない………!


「この状況でまだ悪足掻きを?無駄な事を……」


「そうだな。確かに無駄な足掻きかもしれない。だがそれは、俺が諦める理由にはならない」


「………………?」


リュウゲンの様子に何を企んでいるのか分からないアテナは、怪訝な顔で警戒心を露わにする。


『本当にやる気か小僧。魔力を枯渇させるほうがましな程の確率だぞ』


「分かってるそんくらい。でも、これしかもう方法がないんだ。危険でも何でも、可能性があるならそれに賭けるさ」


覚悟を決めたリュウゲンは持っていた鎖を消し、構える。


「さて、全力疾走の時間だ」


「何をするつもりかは知りませんが、無駄な足掻きはもうよしなさい」


「無駄かどうかは………まずやってみない…となっ!」


その言葉と同時に、リュウゲンはある方向へと全力で疾走する。

アテナに向かってではない。

それとは真逆の方向、中央にある光の柱に向かって。


「なっ………まさか貴方の狙いは……!?」


この場で心当たりのある魔力といえば一つ。


それはユキナの本来の魔力だ。


そしてあの光の柱はおそらくユキナの魔力。

だからこそアテナはここで俺を待ち構え、魔力の封印を解く事を防いでいたのだ。

その魔力の封印を《リリース》で強制的に解き、その魔力を自分に取り込み、もう一つ新たな武具を作る。


全力疾走の俺に、一瞬でも遅れを取った時点でもう間に合わない。

出来ることがあるとすれば…………


「させはしません!」


光の柱の前に、何重にも氷が重なった分厚い氷の壁が現れる。

それと同時に、氷の刃が全方向からリュウゲンに向かって放たれる。


それもリュウゲンには計算の内だった。

氷の壁にはその壁を消せるだけの大量の鎖を放ち、氷の刃には残りの魔力をあらかた使い、強度の高い魔術障壁を張ることで防ぐ。


あの柱に触れられるなら、残りの魔力は尽きてもいい。

あと必要になるのは運だけだ。


そして氷の壁を突破し、リュウゲンは光の柱に触れた。


「これでユキナの魔力は解放される!《リリース》術式発動!」


魔術が発動すると、リュウゲンの視界は光に包まれる。

魔力が解放され、この場から霧散しようとしてるのが分かる。


完全に霧散する前に、リュウゲンはその魔力を限界まで取り込もうと魔力を操作し吸収していく。


「ぐっ……」


頼む!保ってくれ俺の身体……!


身体が拒絶反応を起こし、悲鳴をあげている。

痛みが全身を駆け回り、破裂しそうだ。

ルメオに魔方陣で身体を調べられた時と比べものにならないほどの苦痛だ。


本来他人の魔力を取り込むという事は危険な行為だ。

自分とは違う血液型の血を輸血するようなものであり、かなりの確率で拒絶反応を起こし、魔力が同化出来ずに死に至るのだ。

だが、稀に他人の魔力と同化し得るケースもある。

かなり確率は低く、血の繋がりのないリュウゲンとユキナでは、さらに確率が下がってしまう。

しかしリュウゲンは自分の身体の特異性を信じ、それに賭ける事にした。


普通ではないこの身体なら、ユキナの魔力と同化するまで保つのではないかと。


くそ…………意識が、無くなっていく………頼む………同化してくれ…………!





























































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