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28話【時間稼ぎ】


とりあえず色んな謎は置いといて、話を進めた方が早そうだ。


「あー、もういいや!ごちゃごちゃしたことは嫌いだからな!」


『どうした?』


「いや、なんでもねぇ。それよりも、その力ってのはなんだ?」


『その腕輪の使い方についてだ』


思わず自分の腕に付いている銀の腕輪を見る。

特に変わった様子はない。


「これ、やっぱ武器なのか?ただのブレスレットにしか見えねぇんだけど………」


『その腕輪は特殊でな。他の保持者が持つ武器とは少し異なっている。まさか、小僧みたいのがその腕輪を身に付けるとは、考えもしなかったがな』


「そりゃ、どーも。てか、どういう意味だコラ」


『小僧ほど話しにくいと思った男は初めてだ。だが………小僧が選ばれたのも、それもまた運命というものか…………』


「たくっ、褒めてるのか馬鹿にしてるのか貶してるのかどれなんだよ?」


『さあな。だが、面白いな小僧は』


ここまで話してる限りでは、どうやら感情は持ってるらしい。

交渉できる相手であるのならば、少なくとも悪いことにはならないだろうとリュウゲンは考える。


「んで、教えてくれるのかよ?」


『そう焦るでない。ここは小僧が元いた場所の空間とは別空間であり、時間の概念も違っている。向こうでの時間はほぼ経ってはいないと思っていい』


「うわー、なんか次元が違うわー………さすがファンタジー世界」


『何か言ったか?』


「いえ、なにも」


時間が進まないのであれば、遅刻とか気にしなくて済みそうとか最初に思ったとか言えない………


『では、その武器の使い方だ。小僧にはいくつか特別にサービスしてやるから感謝しろ』


「おっ!まじっすか!?そりゃ助かりますわ!」


『そこで動かず立っておれ』


「おっす!」


リュウゲンは言われた通りに動かずにじっとする。


さて、一体何をする気だ?


すると突然、門の裏から黒い光がリュウゲン目掛けて飛んでくる。

そしてその黒い光は、リュウゲンの身体を貫くようにして中へと入っていく。


「うぉッ!?なんか体の中に入ってきたんだがッ!?」


『そう喚くな。小僧にいま流れ込んだものは、武器を創るために必要な魔力だ。魔力が上がった感覚があるはずだぞ?』


「おー、ほんとだ。なんか魔力か倍になってる感覚があるな」


それに、武器を創るためとかなんとか言ってたよな今。


てことは……………


「なあ、まさかこの腕輪………好きな武器を創ることができる……とかそんな素敵能力でもあるんですかね?」


『察しが早いな小僧。そうだ。その腕輪は持ち主が望んだ武器を創ることができる、原典保持者専用の武器。武器を創る武器だ』


…………………………………………まじかあ!!

なにその素敵チート武器!

俺が望んだってことは、能力つきの武器を創れるってことか!?

それは最強だろ!


「なーなー、武器って一つだけしか創れんのー?」


『いや、いくつでも創ることは可能だ』


んっしゃぁっー!!

それならまじで、俺はこれからこの世界でやりたい放題できるぜ!

いつもついてないとは思ってたけど、ヒカルがいないとほんと運が上がってる気がする!


これで最初っから俺は人生イージーモードで最強になれ………

『そのかわり、創るのに条件がある』


ない………………………………………………そう人生上手くはいきませんよねー、はい。


チート武器を手に入れて、内心喜びまくってたら一気にテンションが………………

いや、まあ、分かってたけどね。

やっぱ、いざ言われるとテンションが…………………


タダだったら、ほんと条件なくタダだったらなあ。


「それで、その条件ってのはなんだ?」


『魔力だ。その腕輪の持ち主の魔力全てを使うことが条件となる』


「はぁ?待てよ………自分の魔力全部ってことは………………それって下手すりゃ俺、死なないか?」


確か、体内にある魔力がゼロになったら最悪死ぬ可能性があるとかないとか本に書いてあったような気がするんだが…………


『そうだな。きちんと分かっているではないか』


「一個武器創るのに命懸けかよ!?」

 

『そうなるな』


「じゃあ、一個武器創る度に毎回生死をさ迷わないといけないのか!?」


『そう言っている』


……………………………俺この世界にきてから、結構命を懸けてるような気がするのは気のせい?

ファンタジー要素ある分、なんかさらに増してるような気がするんですけど。


でも確か、魔力が空になっても死ぬのは半々の確率だったはず。

それでも半分か………………マジ命懸けのギャンブルですね。


『小僧、何か忘れてるのではないか?今、小僧に渡したものがなにかを………』


「あっ、そう言えば魔力貰ってたの忘れてたわ。てっあれ?…………その必要な魔力ってのは、今持ってる魔力全てって訳じゃないのか?」


『ああ。今小僧は元々の倍の魔力を保有している状態だ。そして、その状態でも消費される魔力は、元々の魔力分だけと決まっている』


「つまり、消費して残る魔力も元々持ってる魔力分だから、魔力切れで倒れることはないってか?」


『そうだ』


「なるほど。だから俺に魔力を…………確かにサービスだ」


つまり一個タダで創れるってことだ。

確かにそれはお得だな。


でも待てよ。魔力が倍になったってのに、なんで俺は平気なんだ?


確か、普通の人間が持てる魔力は元々持ってる魔力分だけだったはず。

過剰な魔力は人間の身体に害を与え、何かしらの異常を起こす。

この世界に存在する魔物達がいい例だ。

この世界に存在する魔物の半数は、元々は何かしらの生き物が大量の魔力に耐えきれずに変化し、暴走もしくは適応した存在だ。

魔力が人間に及ぼす影響とかのうんちくを詳しく話すと長くなるからそれは後にして、俺の身体に何も異常がないってのが気になるな。

どうなってる?


『何か気になることでもあるみたいだが』


こいつ………俺の顔絶対見えてるだろ。

どこから見てんだよ。


「一つな。さっき俺はお前から魔力をもらったよな?それって少し無理がないか?」


『ふん……気付いたか。冷静でなければそこまでの疑問は生まれん。今までのオリジンマスターは、困惑する者、早急に力を欲する者の二種類だが、小僧は少し違うようだ』


「まあ、実際こうやって普通に喋ってるんだから冷静かもな。確かに普通の主人公キャラなら、お前が今言った反応するだろうし」


『主人公………?』


「いや、わからないなら気にしなくていい」


『そうか。話しを戻すぞ』


「おう。続けてくれ」


『何故、小僧の器が一定量を越えた魔力に耐えられるのか……だったな』


「あぁ。俺はただの人間のはずだぜ?それなのに、突然魔力が2倍になって平気ってのはおかしくないか?」


『普通の人間ならな』


はい、出ました。

この世界に来てから、普通じゃないと言われたのは二度目。

もう清らかな身体ではないということか!そんなあ!


「ハァー………それで?俺のどこがそこら辺の奴らと違うんだ?」


『原典保持者達は、普通の人間とは魔力の器が少し異なっている』


「原典保持者………じゃあ、他のオリジン・マスターも俺と同じってことか………」


『いかにも……小僧だけではないから安心しろ』


「まあ、二度目だから慣れてるよ」


『二度目……?』


「あぁ、気にしないでくれ。さっ、続きをどうぞ」


『……なら続けるぞ。原典保持者が持つ魔力の器は、一般の人間よりも三倍のゆとりがある』


…っ!まじかよ…………

つまりそれって……


「つまり俺の場合、最大で三億分の魔力が持てるってことか!?」


『そうだ』


「わーお。意外と原典保持者ってのはすげぇのな」


どこか他人事のように言うリュウゲン。


『原典に選ばれし者は、皆そうだ。選ばれた時点で、その原典保持者の魔力の器は勝手に変わっていく仕組みになっている』


「なるほどな………じゃあ、闇の原典に書かれてたあの魔術にも合点がいく」


実は、俺が読んでいた闇の原典書の最後のページに、二つほど謎の魔術があったのだ。

謎というよりは、これ大丈夫なの?という感じなんだけど。


『そうだ。小僧が今思い浮かんだ魔術こそ、本物の原典保持者にしか扱えない魔術』


そして今の3倍の話しを聞いたら、合点がいった訳ですよ。

まあどんな魔術かは、使うときが来てからのお楽しみで。

一つ言うなら、二つある魔術の内の一つは一個の街なら普通に消し去る事ができます。はい。


まさにチート……………………まあ、毎度の如く連続使用は命に関わる系なんだけど。


『さて、長話しはここまでだ。この門が顕現できるのも、無限というわけではない』


「おっ!じゃあ、いよいよ教えてくれるのか?」


『ふむ…………だが、ここではない』


はい?んじゃあどこでやるねん。

ん?………………………まさかとは思うけど…………


『全ては実戦あるのみだ。今から元の場所へと戻るぞ』


考えたくなかったことが当たったー!!

ちょっと待て!何回でも言おう、待てと!

いや、戻るっていうのはどの戻るだ?鎖が当たる直前のことか?それともユキナの精神世界にか?


頼む、後者であってほしい……………


『戻れば、ここに来る直前の状態だろう。心しておけ』


さいですか……………………

いや、待て待て待て待て急展開すぎるだろ!!


「ちょッ…!?心の準備が…!」


『いくぞ小僧』


待ったあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!



―――――――――――――――――――――



「………っ!戻ったのか!?」


気が付くとそこは、巨大な木に囲まれた広場。

そして案の定目の前には…………


「やっぱりですかい!!」


そう、大量の鎖が目前にと迫ってきている。

先程と同じ避けられない状況。


『落ち着けい!小僧』


すると突然、目前まで迫っていた大量の鎖が全て目の前で弾かれる。

まるで不可視のバリアがリュウゲンの目の前に張ってあるかのように。


「………っ!弾いた……!?」


そう驚きの声を上げたのは、闇ユキナだ。

リュウゲンも同じく内心で驚いていた。


「まさかおまえがやったのかこれ?」


『いかにも。あの小娘が使っているのは、古代魔術の中でもたちの悪いものだ。さすがの私でも、そこまで鬼ではない』


ゴーストの声は直接リュウゲンの頭に話しかけてるようで、他の二人には聞こえてはいないようだ。


つまり独り言激しい人状態!


「まあ、助かったわ?」


『礼はよい。それよりもまずは、奴の攻撃を防ぐことに集中しろ。この不可視のバリアは、小僧の魔力を使っているのだからな』


「どうりで俺の魔力が知らないうちに減ってる訳ですかい!」


何の承諾もねぇ!まあ助かったけど!


『まあ、落ち着けい。それよりも、きちんとあやつを警戒しろ』


いつのまにか闇ユキナは先程の大鎌を携えており、リュウゲンを攻撃する気満々だ。


「まさか、あなたがほんとに原典保持者だったとは迂闊でした。その魔導器は一体どこで?」


「さあな。教えると思うか?」


「無駄な質問でしたね。それを見たからには、決着を急がしてもらいます。全力でいきます…!」


この腕輪を警戒している?


『来るぞ小僧』


ちっ!また接近戦かよ!


『戦いながらその魔導器の使い方を教える。まずは奴の攻撃を回避しろ』


「イエスボス!」


闇ユキナの横一線の初撃を半歩下がって避けたリュウゲンは、すぐさま闇ユキナから離れるようにして後ろへと、前を向いたまま一気にジャンプ。

今のリュウゲンの身体能力のおかげで一瞬にして離れることに成功するが、相手も逃がさないとばかりに詰めてくる。

とりあえず闇ユキナの攻撃から逃げることを優先したリュウゲンは、相手の間合いギリギリを見極めて一旦立ち止まってからの横へと一気にダッシュ。

闇ユキナからある程度距離を離す事に成功する。

そして、なるべく半身を見せるようにして走ると、あとは鬼ごっこのような構図が出来上がった。


これなら、少しの間追い付かれない自信がある。

俺は隙を見せないようにして全力で逃げればいいだけだ。


「さてさて、この間に教えてくれるなゴースト」


『ふむ……思ったよりもやるな小僧。確かにこれなら、多少の時間は逃げられる。小僧の身体能力ならな』


「まっ、つっても直ぐに追い付かれるけどな」


『では、少し口調を早める。しっかり聞いておけ』


「あぁ、頼む!」


『まずは小僧にやってもらうことがある。その腕輪に今小僧が持ってる魔力の四分の一を流せ。戦闘中にそんなことをやりながら魔力を流すことは難しいかも知れないが、あらかじめ魔力を流していなければその武器が発動することはない』


「そりゃ無理難題ありがとう。つまり元の二分の一の魔力を流せってことだろ?普通なら集中しててもかなり時間がかかる量だぜ。しかも逃げながらとなるとなお時間がかかる」


『フン……………できないのか?』


へぇ…………出来ないとは言わせないってか?…………………


「ハッ!おもしれぇ……!この短時間でそんぐらいのことやってやんよ!」


『よく言った。それでこそ原典保持者だ。今から始められるな?』


「OKだ」


リュウゲンは言われた通り、右手につけた腕輪にかなりのスピードで魔力を流していく。


今は逃げてるだけなので、接近戦をやりながらじゃないだけましかもしれない。


『上出来だ。次にその魔導器の発動条件だ』


「発動するのに条件なんてあるのか?」


『あぁ。発動条件は三つある。一つ目は魔力を腕輪に流しておくこと、つまり今やっていることだ。二つ目は生み出す武具の知識と想像力が必要になる。そして最後に三つ目………その武具を生み出す際の目的意識だ』


「目的意識?……武具を創るには、なにか目的がないと創れないのか?」


『あぁ、そういうことだ。そして、最後の三つ目こそが一番難しい条件になるだろう。何せ嘘はつけないからな』


「……どういうことだ?」


『頭では目的があると考えても、それと自分の本音が必ず一致するとは限らない。この腕輪は、装着者の心の内をも見抜く力があるからな』


なるほど。嘘はつけない……か。

分かりやすくこいつの言いたいことを例えるなら、『頭ではこうしないといけないと考えていても、本音はそうしたくないと思っている』、そんな感じの状態では武具は創れないぞってことだ。

単純に心の迷いさえなければいいんだろ?


「なら、今ならその条件をクリアできる自信がある」


『ほう…………ならば、話が早い。条件はあと一つ。あとは、どんな武具を創るかはもう考えておるな?』


「あぁ。どんなものでもできるのか?」


『そうだ。そして小僧の想像した武具には、必ず自動的にその武具と状況に見あった能力がつくはずだ。まあ、そんなことはあとでいい。腕輪の状態はどうなってる?』


「もうそろ終わるぜ」


『なら、一旦相手との距離を離れられるか?』


「任せろ!このために、取って置きの魔術を使わないで残しておいたんだ」


今まで闇ユキナの攻撃を避けながら逃げ続けていたリュウゲンは、突然急停止して闇ユキナを迎え撃つようにして待つ。


「っ…!?」


急に逃げることを止めたことに驚いた闇ユキナだが、直ぐに冷静なり大鎌を構え直す。


距離僅か数メートル。


だが、リュウゲンはまだ動かない。


「終わりです……!」


「こいよ……」


今度の闇ユキナは逃がさないとばかりの気迫だ。

そして、リュウゲンから見て斜め右からの降り下ろし。

闇ユキナの顔が目の前にある距離だ。避けることは難しい。


「…だめっ!お兄ちゃん!避けて!」


「この距離では避けられません。ここでさよならです」


「避ける?違うね。俺はその攻撃を受け止める」


そしてリュウゲンは、僅かな動作と共にその攻撃を食らった。


「……なっ!?」


鮮血が辺りを飛ぶ。たが、まだリュウゲンは生きている。

それもそのはずだ、大鎌はただリュウゲンの左肩を貫いているだけなのだから。


「ちっ………最初から急所を外すして、受け止めるつもりでしたね?」


「あぁ……当たりだ……そうでもしなきゃ勝てないからな………」


「お兄ちゃん!!傷が…!」


そう光ユキナに言われて、ちょうど肩に激痛がやってきた。

急所ではないしろそれなりに大きな傷だ。全身が痛み、肩になかなか力が入らない。


「………大丈夫だ………グッ………」


こんなもん、慣れっこだ……………今はユキナの動きを止める……!


リュウゲンは右手に魔力を集め、魔術の発動を始める。

その行動に素早く気付いた闇ユキナは、大鎌から手を離しリュウゲンから距離を取ろうとするが…………


「……ッ!?」


だが、リュウゲンはそれを許さない。左肩からくる激痛を我慢し、左手で無理やり闇ユキナの右腕を掴む。

もう左腕を動かす力は確かにない。だが、掴んで逃がさないようにするぐらいはできる。

握力だけなら、そこらへんの奴には負けない。


そして無茶な痛みに耐えながらも、闇ユキナに笑顔を向ける。


「さて、今度は俺が言う番かな?逃さないと………」


リュウゲンは右手の手の平で闇ユキナのお腹に触れると、二つ魔術を発動させる。


「こっからは俺のターンだ………罪深きものに恐怖の祝祭を……《クリミナル・セロ》《リリース》……」


「……なっ!?体が動かないッ!?」


そう。この《クリミナル・セロ》という魔術は、闇の原典魔術書の中で、唯一敵の行動を封じることのできる魔術。

《リリース》という魔術はあとで説明するとして、この《クリミナル・セロ》は一日一回しか使えないあげく、なおかつ相手に触れなければならないということで使いどころは難しいが、発動できればどんな相手をも一時的に動きを絶対的に封じることができる代物だ。

ここまで言うと、使えたらかなり有効な魔術に見えるが、しかしこの魔術にはもうひとつ弱点がある。


それは…………………………………


肉体的な動きを封じられたことにより、焦ったような顔をしていた闇ユキナだが、その顔はすぐに不気味な笑みを浮かべる。


「確かに、体はまったく動いてくれませんね。ですがこの魔術…………」


ちっ!……やっぱ気付くよな!


リュウゲンは肩を抉っていた大鎌を取り外し、バックダッシュで急いで闇ユキナから離れる。


「どうやら、私の体の動きを封じることはできても、魔術は無理なようですね」


そしてその言葉と同時に闇ユキナの背中から、どす黒い闇の渦が刃となってリュウゲンを襲おうとする。

闇ユキナの言った通り《クリミナル・セロ》は、体の動きを封じるだけであり、魔術は普通に使えるのである。

冷静な人間であれば、すぐに気付く事が出来るだろう。


だが、ユキナからの物理的な攻撃を封じられれば、リュウゲンにはそれで充分だった。

そして、闇ユキナの魔術の発動と同時に、自分を軸に半径一メートルの無属性の障壁を張り巡らせる。


「……魔術障壁!?」


さっすが俺!練習なしのたった一回で、無属性の魔術障壁を成功させるとは!


「余り舐めるなよ。相手が魔術しか使えないなら、対魔術用の障壁を展開すりゃあ、それなりに時間は稼げるんだよ」


さて、だからといってたっぷりと時間があるわけではない。障壁を壊される前に腕輪の力を発動させる。


「これで時間は稼いだ。どうすればいいゴースト?」


『あとは簡単だ。今から小僧の頭にある魔方陣のイメージを送る。その魔方陣を、自分の血を使って腕輪をしているほうの腕に描け』


ちょっ…待て。

ただでさえ少し動かすと超絶激痛が起こる左手で描けと?

泣いていい?


『泣き言を言うな。左手を捨てたのは小僧だ』


「お前………俺の中にいるからって、心読むなよ……」


『気にするな。それでは、魔法陣のイメージを送るぞ小僧』


普通に気にするわ!

まあ、いいや…………


「頼むゴースト」


『了承した。いくぞ…!』


ゴーストの掛け声と同時に、リュウゲンの頭の中に直接魔法陣のイメージが送られてくる。

そして、すかさず自分の血を使って、その魔法陣を右手の甲に描いていく。

























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