1話【日常】
ジリリリリリリンッ!ジリリリリリリン!
ヒュイッ…バンッ!
「あっ……」
時計のアラームと同時に起きた俺こと神谷竜玄。
アラームを止めるために時計を投げたはいいが、またもや壊してしまったと朝から絶望する俺。
ここ半年間壊さなかったのに………今日は何かありそうだと予言してしまう。
それもそのはず、だいたい朝から嫌なことあると、必ず厄介ごとが起こっていた。
まあ大体あいつが悪いんだけど……
憎たらしい幼なじみを想像するのを止め、なんとか布団から抜け出し学校の準備をする。
起きて30分後、高校の制服であるブレザーを着て準備万端で家から出ると、家の目の前で(俺にとっては)朝から見たくない存在が俺のことを待っていたのか、猫と遊んでいる幼なじみがいた。
こいつの名前は勇羅光。いかにも正義っていうか主人公っぽい感じの名前だろ?
実際に正義感は異常、さらに主人公気質も備わっている。
まず最初に言っておこう、俺はこいつが嫌いだ。
苦手ではなくて、嫌いだまじ。
嫌いな理由?
ありすぎて困るね。
まず正義感が異常なことや主人公気質っていうところが気に食わない。
とりあえず話し掛ける俺。
「よう、光。俺を待ってたんなら先に行けば良かったのに」
そう言うと、俺に気付いた光は顔をあげる。
おっと!ここでチェックポイント!
一応こいつの容姿は、黒髪の前髪だけちょいアシメ、あとは適当な短さな髪型。
俺ほど高くはないが、一般高校生の身長はちゃんとあり、それなりに悪くない体格だ。
というかいっそ筋肉マンになって欲しい……
あっ、体格が良いってのはそれなりの筋肉があって、つまり細マッチョってことだからね!?
……………………………ゴホンッ……
えー、本題に入って、こいつのなにが問題かと言うと、その容姿がうざったいぐらいのさわやかイケメンだということ。
さらに運動神経抜群や成績優秀という完璧者。
そのハイスペックがうらやましすぎる………じゃなかった。
まあ、だいたい俺が嫌いな理由の予想はついてきたろ?
まあ、とりあえず俺に応答する光。
「あっ…おはようりゅう。一番の親友と登校するのは当たり前のことだよ? 」
一度も親友になった覚えがねぇーー!
「いやいや、意味わからないから。とりあえず置いてくぞ」
「うん!って待ってよ!?」
何故か無性に腹が立った俺は、嫌がらせに早歩きで先に行ってやった。
しばらく光と他愛もない話し(光から一方的に話しかけられる)をしながら歩いていると、後ろから嫌な声が聞こえてくる。
もちろん腹も立ってくる。光にな…
「光~!!」
さて一体この人はだれでしょうか?
正解は俺と光のもう一人の幼なじみの岩瀬春香ちゃんでしたー。ワーイワーイ……なんて思えるかボケぃ!!
と、自分の心の中で可哀想な漫才?をやってしまう。
「ゲッ……」
何が「ゲッ…」だ。ぶっ殺すぞ?
「愛しの春夏ちゃんが呼んでるぞー」
「うっ、うるさい!きっ、聞こえないぞ!」
俺は後ろを振り替える、するといつの間にかあと少しで追い付いてくる場所にいた春夏は、無視されて頬を膨らますと、走りながら体勢を低く両手を前に構えた。
おっ、これはくるか?俺直伝、必殺ダイビングタックル。
「光……さらばだ…」
「えっ?なにが……って…まさか!」
光はまさかと思い、蒼白になりながらも後ろを振り向くと、やはりそこには必殺ダイビング間近の春香が。
「ちょ!春夏!?ごめん!無視したのは謝るから!」
もうおそいでーす!っと、春夏は光に向かって殺人ダイビングを食らわせられていた。
うん、もはやダイビングを越えたタックル……。とりあえずざまあ。
「光~!朝から光と一緒に登校なんて、私なんと言えばいいのやら」
と、光に抱きつきながら、というよりも苦しめながら言う春夏。
命の灯火を消さないために、必死に抵抗していた。
さて、ここでさらなるチェックポイントだ!
俺がこいつを嫌いな理由のさらに続きといこうか。ハッハッハッ!
まあ、誰からみてもわかるように春夏は光に惚れている。しかし、そこが重要なのではなーーいっ!
そう…こやつがさわやかイケメン&優男=モテモテだということだ!
そう、全人類のリア充じゃない男の敵である!!
さらに主人公気質のため、告白されるまで気付かない鈍感スキルまで持っている。
くそ!氏ねリア充!!
あー、ちなみに春夏が光を好きなことに光自身は知っている。理由は、小学校の卒業の時に告白してるからだ。
もちろん光は拒否したが、「私…諦めないから」と春夏はそう言いのこし今に至る。
言っとくけど春夏めっちゃ可愛いからな。
茶髪のポニーテールに美人というより可愛く。普通に見れば美少女だからね!?
うん…またもやツンデレすみません………
つか抱きつかれてる光がうらやましすぎる。
さらに言うが、光が泣かした女は数知れず、惚れる女も増量中。
くそが!お前は人間か!?
ゴホンッ……まあ、少し?暴走したが、これも含めて光を嫌いな理由だ。
2つめ3つめはただの僻みとか言うなよ?
まあちゃんとした理由はあるけどな。それもいつかはわかるはず……
長々としたが、そろそろ会話に戻ろう。
その前に時計をみる俺…やばい………あと少しで遅刻しそうだ。
「ヤバイ時間だ!遅刻する!!」
するとさすがの二人も遅刻はやばいと考え、イチャイチャするのをやめ、俺たち三人は急いで学校に向かうことにした。
そして学校到着~!
ギリギリセーフで学校に着いた俺らは、自分達の教室へと向かう。
一応言っておくと、この2人も同じクラスである。
さて、教室の前にいるのはいいものの、何か嫌な予感が…………
立ち止まる俺に、光が疑問型の顔で話し掛けてくる。
潰すぞ顔………イラッ……
「どうしたりゅう?入らないの?」
「あっ…あぁ……」
とりあえず気のせいだと信じて、俺は扉を開けた。
そして扉を開けた先を見た俺は、絶望?後悔に包まれることになる。
そして扉を開けた瞬間、黒髪の春香に負けず劣らずに可愛い美少女が、春夏のように突進して来ていたのだ。
もちろん狙いは俺じゃなく光だ。
避けないのかだと?………それは無意味なんだよ。
それはすぐにわかる。
このクソ女の名は杉谷真美。
杉谷とか言うクソ女は、「死ね!」と言うのと同時に俺を蹴りで横に飛ばし、そのまま杉谷は体勢を崩さず、本日二回目の光にダイビングタックル。
またもや倒れる光君。
「光君~!やっと来た!」
と、光に馬乗りになりながら可愛いらしく言うクソ女。
光はまたもや死にそうな顔に。
春夏はというと、光と杉谷の横で「何やってるのよ真美ちゃん!!光がケガしたらどうする気!?…って言うか離れなさい!」と杉谷に抗議していた。
つか人のこと言えんのかお前は?
俺は少しふらつきながらも立ち上がり周りを見渡すと、クラスの視線はやはり光の方に向いていた。
たくっ、いてー……杉谷め…少しぐらい手加減しろやマジで。
んっ?避ければいいと思うだろだって?ちっちっち…それができないんだよ。
前に一回避けたんだけども、何故か追撃してくるから意味ねぇんだよ……意味がわからん。もはや嫌がらせだろ。
とりあえず俺はあの三人をほっといて、自分の席である窓側の一番後ろの席に座った。
あの三人もクラス中の視線に気付いたのか、自分たちの席に座る。
ちなみに俺の隣は光、光の前が春夏、俺の前に杉谷という不幸な席。
三人が座るのと同時に、ちょうどいいタイミングで男の先生が入ってきた。
すると、一番前の席の男子生徒が、号令を言う。
「起立!礼!…着席!」
とまあ、今日1日が始まるわけだが、なんだろうな…………
今日なにか嫌なことが起こりそうな気がするんだが………まあ、いいか。
俺は主人公じゃないし、ただの不幸な脇役だからなんだかんだ大丈夫だろう…………と信じたい。
俺は嫌な予感を振り払い、今日1日生きていけますように、と心から祈るばかりである。