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18話【闇の組織】

あまり見直せなかった…………

そして戦闘シーン書くの難しい………

今の攻撃が防がれたのを見て、何が可笑しいのかクリケットは再び不気味に笑い始める。


「クククッ………ヒャハハハハッ!おもしれぇなおめぇ!もしかしたらよぉ、俺は待ってたんだ……てめえみたいなやつをよぉ!」


「うるせえ犬。すぐ終わらせてやるから黙ってろ」


リュウゲンははそう言うと、レイテルから大剣を優しく取り上げ、片手だけで持つ。


「そんじゃ悪い。これ、借りるぞ」


まだ会って間もないですが、この人になら任せられる…………

先程全力で助けてくれたお陰か、何故か私はそう思うようになっていた。


「えぇ、どうぞ。ですが、これを貸すその代わりに、ちゃんとあの男を倒してください」


「おう!まかせときな!」


見た目とは裏腹に、優しそうな笑顔で私に向かってそう言う。


リュウゲンはクリケットの方を向くと、剣をだらっと地面につけるように大剣を持つ。


雰囲気が変わった………?まさかこれが構えなのですか?


「さあ、こいよ犬。武器を持ったからには、殺すつもりでいくぞ?」


「ハッ!やれるものならやってみな!」


クリケットは近くにあった自分の魔剣ではなく、先ほどよりも一回り大きい炎の剣を作ると、すぐさまリュウゲンへと突っ込む。

その間リュウゲンは一向に動かない。


そして剣の届く距離まで近付いたクリケットは、炎の剣を大きく振るう。

だが、その炎の剣はリュウゲンによって宙を舞う。

大剣をタイミングよく下から上に振り上げ、炎の剣を弾いたのだ。


「おもしれえ!」


クリケットはまたも炎の剣を即座に作り剣を振るうが、しかしそれも同じく弾かれて宙を舞う。

そしてその後も炎の剣を作っては弾かれ、また作っては弾かれる。そんなことが目にも止まらぬ速さで続けられた。

さらに、弾かれた剣はすべて黒い球体に吸収されている。


「クソッ!当たれ当たれ当たりやがれ!」


どちらも一進一退……………

それに片手でこのスピードと正確さ、これが身体強化なしですか?身体能力が高すぎる………


「おいおい、まさかもう攻め手がないとか言わないよな?」


「ヒャハハッ!そんなわけねぇッ!どうやら身体強化もできねぇほどに何故だかまともに魔術が使えねぇみたいだなぁッ?なら、これは効くんじゃねぇか!?」


そう言った瞬間、二人を中心として地面に円形の魔法陣が現れる。


「……?」


不味い、あれは…!?


「逃げてください!それは爆発を引き起こす魔法陣です!」


「もう遅い!」


「チッ……!?」


魔法陣による、自滅覚悟の地面からの爆発。

いくら魔術を吸収できるからといっても、ゼロ距離からでは吸収する前にダメージを負ってしまう。

レイテルにも使った手だが、身体強化の一つも未だ会得していないリュウゲンでは、喰らえば一溜まりもないのは明白だ。

そして爆発寸前で逃げる時間がリュウゲンにはない。


(クソッ……もう間に合わないのなら、()()()()()()()()()だけ!)


リュウゲンは爆発までのたった少しの時間を使って少しでも魔法陣の中央から離れるように下がると、大剣を盾と同じ身を隠すようにして構えた。


「爆発しろぉッ!」


その言葉と同時に、魔法陣の中心から全体にかけて爆発が起きる。


「ぐっ……!」


爆発をもろに受けたリュウゲンは案の定吹き飛ばされるが、大剣を盾にする事で何とか爆発による直撃を避けることに成功した。

そして上手く地面に着地し、すぐさま大剣を構える。

その構えと同時に、爆発で生じた煙からクリケットが炎の剣を片手に飛び出してくる。

どうやら服以外は特にかすり傷程度済んでいるようだ。


「まさか無事とはなぁ!?」


その言葉と同時にリュウゲンに斬りかかる。


「痛いから、もう二度と食らいたくないけどな!」


それを後ろに下がって避けようとするリュウゲン。


「ならもう一回食らわせてやるよ!」


リュウゲンが一歩下がった瞬間、先程と同じように発動する魔法陣。


この男、やはり私に見つかる前に地面に魔法陣の細工を……!?


しかし、次の罠にリュウゲンは引っかからなかった。

一歩下がると同時に大剣の腹を相手に見せるようにして構え、下がると思わせてからの大剣を前に構えた状態でそのまま体当たりするように突進をする。

そして爆発は、リュウゲンを巻き込む事なく爆発する。


「悪いが、二度目はねぇ。仕掛けた罠があるとわかれば、後はお前の行動から予測するだけだ!」


「くっ……!」


リュウゲンの突進を剣で受けるが、受け止めきれずに体勢を崩す。その隙を狙ってリュウゲンはクリケットの懐に入り、空中に浮かせるつもりで腹部に蹴りを全力でいれる。

するとクリケットは大きく宙を舞った。


「次はこっちのターン」


そう言い、宙に舞うクリケットより高く跳躍する。


「テメェ……!」


「おらよっと!」


クリケットが空中で無防備になったところに、大剣で叩きつけるようにして斬る。

その攻撃を剣を使って防御するが、地面に背中から叩きつけられるのを防ぐ事は出来なかった。


「ぐぁッ……!」


衝撃で地面を陥没させたのを見れば、どれほどの威力だったのかが分かるだろう。


「さて…降参するか、死ぬか選べ犬。今ので、相当ダメージが入ったはずだ」


大の字になりながら、未だ起き上がらないクリケット。

しかし、未だに不気味に笑っているところから、無事なのは確かだ。


「ハァ…ハァ……こう……さん……?おれ…が…するわけねぇ…ハァ…せっかく……楽しくなってきたってのに……」


「悪いがもうお前に勝ち目はない。もうお前の次の手も読んだよ」


「だとしても……どっちかが血を流さない限り終わる事はねぇ……」


そう言ながらゆっくりと立ち上がり、炎の剣を出現させ両手に構える。


「俺の贄となれッ!」


満身創痍とは思えないスピードで駆け、炎の剣を振り回すクリケット。

リュウゲンはそれを全て難なく避ける。


「剣術で勝てねぇのがまだわからないのかよ!」


「あぁ!?だったらこれはどうかなぁッ!?」


リュウゲンが炎の剣を受けた瞬間、地面に転がっていたクリケットの魔剣が怪しく光りだしたと思いきや、独りでに動き始める。


まさかあの魔剣、自立して動くタイプの…!?


そしてその魔剣は狙い定めた方向に刃を向けると、一直線に軽く鍔迫り合い状態のリュウゲンへと飛んでいく。


「これで終わりだぁッ!」


炎の剣を大剣で受け止めているところに、横からの不意打ちによる突然の攻撃。

避けるのは困難……………………そう思われた。


「だから言っただろうが!お前の次の手は分かってるってな!」


そしてリュウゲンの頭部を狙った魔剣を、さも来るのが分かっていたかのように頭をずらすだけで簡単に避ける。


「……なっ!?」


「さて、そろそろ終わりにしよう」


リュウゲンは相手が驚いている所に遠慮なく炎の剣を弾くと、頭上にある黒い球体を鷲掴みするように掴んだ。

すると、頭上の黒い球体が消える。


「何をするかは知らねぇが、やらせるかッ!!」


クリケットは炎の剣を両手に出し、斬りかかろうとする。


「遅い!」


そしてリュウゲンは大剣をその場で地面に落とし、一瞬でフラン・クリケットの目前に迫る。


「その瞬間移動はさっきのッ……!?」


「正解だ。そして、ここで1つ問題。魔術を吸収できるということは、他に何ができるでしょうか?」


今度は反対に、リュウゲンが不気味な笑みを浮かべながらそう問う。


吸収………つまり放出ですか!

まさか、今までフラン・クリケットが使った魔術を全て!?


「まさか……てめえッ…!?」


どうやらクリケットも気付いたらしく、今までで一番不味いというか顔をする。


「あんたの考えている通りだよ」


「クソがッ!そんなの食らってたまるかよッ!」


さすがは有名な犯罪者だけあって、不利な格好ながらもその状態で前を向いたまま後ろまで一気に下がり、リュウゲンから距離を取った。


「逃がすかよ犬…」


しかし、無駄だった。

リュウゲンはまたもやクリケットの目前まで瞬間移動したのだ。

状況は先ほどと同じだが、しかし今回は喋る時間などは与えず、リュウゲンは右手の掌をクリケットの腹に当てる。


「自分の魔術でも食らっとけ」


彼がそう言った瞬間、腹にめり込んだ右手から大量の炎が放出される。


「ガハッ…!」


そしてフラン・クリケットは、大量の炎と共に空高く舞い上がり、終いには落下して無防備のまま地面に激突。

そして白目を向いて、完全に意識を失った。


リュウゲンの完全な勝利である。


「ふぅ…………終わった終わった」


そう言いながら、地面で寝ているクリケットのポケットからレイテルを縛っていた紙を取り出すと、それを細かく破っていく。

すると、レイテルが立っている地面に浮かんでいた魔方陣が消え、体の自由が元に戻った。

そしてすぐにレイテルは自分の大剣を回収し、リュウゲンにお礼を言うために彼に近付いた。


「あのぉ………ありがとう……ございます。助けてくれたまでか、倒していただいて。それに、止めも刺さないでいただいたことには感謝して言います」


「いいって、いいって。この犬のこと捕まえるつもりだったんだろ?俺も別にそこまで殺すつもりはなかったからな」


「ほんとは一人で片付けるつもりだったんですが、まさか禁術書を使われるとは予想外でした」


「人の命を使う魔術が施された書か……」


「はい…。奪われていたとは聞いていましたが、まさかやつらが持っていたとは……そういえば足の怪我は大丈夫ですか?」


「大丈夫大丈夫。普通に歩けるから問題ないよ。まっ、俺以外に怪我人が出なかったのはほんと幸運だけどな。それより、ルメオさん………いい加減出てきたらどうだ?」


リュウゲンがそう言った瞬間、突然後ろから誰かの気配が感じられる。

レイテルは咄嗟に後ろを振り向くと、そこにはこの黒鴉(ブラックレイヴン)のギルドマスターである、綺麗な白衣を着たルメオ・フォルカスが微笑浮かべながら立っていた。


「いやー、またもばれましたか。さすがですね」


ルメオ・フォルカス………もしかして、またあの魔術を使って高見の見物をしていたのか!?


「ルメオ・フォルカス!最初からこの戦いを見ていたのですね!?」


「まあまあ、そう怒らずに。必要だと思えば、私も出てましたから」


「あなたはいつもいつもそうやって…………なッ!?」


するとまた突然と、誰かの大きな気配を感じる。しかもはっきりとこちらに殺気を送っているのだ。

二人もそれを感じたらしく、いつでも戦える体勢をとっていた。


「ふむ………やはりやられたか……」


レイテル達はその声の出所、つまりギルドの屋上を見る。

そこには黒フードで顔を隠した長身の男が、静かにはっきりとこちらを見下ろすように立っていた。

低く冷たい、どこか威厳を感じさせる声だ。


この男……フラン・クリケットより遥かに強い………


「なんだてめえは?この犬の仲間か?」


それを聞いたのはリュウゲンだ。


「お前の言う通りだよ少年。そのバカを倒したのはお前だろ?」


「まあな。あんたも一緒にくたばっとくか?」


わざと挑発するような態度で言うが、黒フードの男は気にした風でもなく、ただ冷静にこちらを見ていた。


「遠慮しとこう。3対1じゃ分が悪いからな。だが、そいつは返してもらおうか」


すると黒フードの男は一瞬でクリケットの下まで移動し彼を素早く担ぐと、一瞬でまた元いた屋上まで移動した。


「速いッ!?」

「へぇ……やるじゃねえか…」

「なるほどなるほど…」


それぞれの反応は違うが、そのスピードには全員が驚いていた。


「プリンスの名は伊達じゃないようですね」


「ほう……今ので私を見破るとは……さすがは帝の中で随一の知能をもつ男。私の中では、一番相手にはしたくない男だよ」


プリンス……?

《レクイエム》のプリンスといえば……………


「神速の使い手と呼ばれた男……《血の貴公子(ブラッドプリンス)》のアレス・レイヤードか!?」


「お初にお目に掛かろう。光王の仰る通り、私は《レクイエム》の幹部が一人。アレス・レイヤードだ。私の正体がわかろうが、こちらの作戦はもうすでに終了している。それに、私はこいつを回収しに来ただけだからな」


「さてはあんたら、帝を殺すつもりは最初からなかったな?本当の作戦を帝達には邪魔されないように、帝相手の足止めにそいつを送り込んだ……違うか?」


「察しがいいな少年。まあ、確かにこいつに倒せるとは思ってはいなかったがな。一応幹部なんで、回収するに越したことはない」


「ならばこの状態で、このまま易々と逃げられるとでも思いますか?」


このまま二人とも逃がす訳にはいかない。あまり表に出ないあのプリンスが、今目の前にいるのだ。

逃がす通りはない。


私は背中の大剣に手をかけ、戦闘態勢を作る。


「益のない、無駄な戦いは止めておけ。逃げるだけなら、色々と奥の手がこちらにはある」


「そのようですね。ここは見逃しておくしかないでしょう」


「ですが……!」


「無駄ですよ。彼もおそらくは禁術書を持っているのでしょう。そのなかには、逃走用の魔術も確かあったはずです」


「くっ……………!」


それが本当なら、アレス・レイヤードはいつでも逃げられる。

悔しいですが、本当に見逃すしかないようです。


「いい判断だ。そうだな……帰る前の土産に、このギルドでも壊していこうか?」


「「「…………ッ!」」」


そう言った途端、今みで感じた事のない程の物凄い殺気が辺りを充満した。


あの、アレス・レイヤードすら遥かに越える殺気。

その殺気の元凶は、隣りにいるリュウゲンからだ。


そしてその殺気に、その場にいる全員が硬直する。


()()…………()()()()()()()()…?()()()()()()()()()()()()()()…?」


「……………まさか…私が恐怖を感じているだと……?こんな若者に………ククッ……面白い……」


「…………………」


リュウゲンは殺気を出して、ずっとアレス・レイヤードを睨んだままだ。


「この恐怖に免じて、今日は黙って引こうじゃないか!また、会おう少年!」


アレス・レイヤードは最後にそう言うと、自分の足下に転移の魔方陣を施し、その場から一瞬で消えさった。


「ちっ……こっちは一生会いたくないっつーの」


どうやらアレス・レイヤードが何もしないで帰ったことで、殺気が収まったみたいだ。

先程と同じような、いかにも余裕そうで気だるそうな雰囲気を出している。


もしかしたら、ギルドの中には他にも人がいたのかもしれない。

そう私は考えると、あの場で戦闘にならなかったのは良かったと思う反面、冷静な判断をせずに自分から戦闘を仕掛けようとしたことに少し反省をした。


「良かったじゃないですか。中でまだ妹が寝ていたのでしょう?」


「まあな。でも、そうなってもやられる前に殺るつもりだったけどな」


妹さんがまだ中に!?

私もまだまだですね………戦闘にならなかったのは本当に不幸中の幸いです。


「すみません!下手すればギルドでの戦闘になってました。妹さんがいるとは知らず…………申し訳ないです……」


リュウゲンに向けて、深々と頭を下げる。


「いっ、いや……別にいいって。言ったろ?あいつがいざギルドを壊そうとしても何とか殺るつもりだって。だから気にすんなよ」


「ですが………!」


レイテルは抗議しようと頭を上げてリュウゲンを見るが、何故か困ったような反応をされる。


「まあほら、結果的に他に一人も負傷者はいないんだし。結果オーライってことで、な?」


「ですが、それでは……助けてもらったまでか、危うく妹さんまで危険に巻き込む所だったんですよ?」


「だから大丈夫だったんだから気にすんなよ」


「しかし私は…………」


「あー!もう!」


「えっ……?」


リュウゲンは突然とレイテルの両肩を掴み、真剣な顔を近づける。


かっ…顔が近い………!


「いいか?よく聞け?もし俺に恩を感じてるなら、その俺が気にするなって言ってるんだ。気にするな。いいな?」


「わっ、わかりました……」


突然の接近に動揺するレイテル。

普段から異性と間近に触れ合う事がなかったため、耐性があまりなかった。


「よし、それでいい」


彼は微笑しながらそう言う。

やはり見た目とは違い、何とも優しそうな笑みだ。


さっ、さっきよりも近くなってる…………


「ん?どうした?」


「いえ……そっ、その……いつまでこうやっているのかと…………」


「あぁ、わりぃ。そういえばそうだったな」


彼はそう言うと両肩から手を離し、レイテルから少し距離を取った。


それを何故かレイテルは名残惜しく感じてしまい、終いには妙なモヤモヤ感も同時に発生し始める。



後々の話だが、このあと自分のギルドのギルドマスターに、このモヤモヤの正体を暴かれ、そしてその正体を知ることになるのは少し先の話だ。


「ほう……なるほど」


ルメオは何か分かったような顔をし、レイテルのことを見る。


それを何故か不愉快に感じた。


「なっ、なんですか…」


「いえ、別に。いつものあなたらしくないと思いましてね。まあ、気にしないでください。あなたのその不思議な気持ちは、多分あのバカが教えてくれますよ」


彼が言うバカとは、おそらく私が所属しているギルドのギルドマスター、ルーカス・マルディのことを指すのだろう。

何故かこの人は、いつも彼のことを昔からバカと呼ぶのだ。なので、この人がバカといったら、大抵は私のギルドのギルドマスターのことを指している。


しかし、そんなことはどうでもいい。

今、この人は私の感じてるモヤモヤの正体を知っているのだ。

聞かなければ!


「あなたにはわかるのですか!?この変な気持ちがッ…!?」


「変な気持ち?」


それを言ったのはリュウゲンだ。

何の話?と言いたげな顔をしている。


「いっ、いえ!あなたには関係ないです!」


何故か恥ずかしくなってしまい、強きで彼にそう言ってしまった。


「おっ、おう……」


不味い。今、彼の顔を見るのは不味い。

そう私の心が告げていた。


「ほら、落ち着いて下さい。とりあえず今日はここまでにしましょう。あなたはギルドに戻って足の手当てでもしててください。カウンターの方に色々揃ってるはずです」


「わかったよ。そんじゃな、美人さん」


リュウゲンはそう言って片手を振りながら、ギルドの方へと帰っていく。


そして少しの沈黙………………………………


「びっ…………びびび美人さん!?」


「反応が遅すぎますよ。それに、戦闘中あなたの事をそう何度も呼んでた気がしますが…………」


また突然と言われたせいか、顔が熱いのが自分でもわかる。おそらくかなり赤くなってるはずだ。


しかし彼がもう行っててくれていたのは幸いでした。

こんな入り乱れて身体中火照った姿を彼に見られてたら………恥ずかしくて死ぬ!

なんなんですかこれは!助けられてからでしょうか?彼を思うと、このへんなモヤモヤが収まらない!


ルメオ・フォルカスは、先程から何故か呆れたような顔をして私を見ていた。


「はぁ……まったくあなたは、どれだけうぶなんですか?まあ、しょうがないと言えば仕方ないんですがね…」


落ち着きなさい!私!

このモヤモヤは確かに気になりますが、今はあの襲撃のことについて話し合わなければ!

それが、最優先事項です!


とりあえず彼のことを頭の隅に入れ、なんとか冷静になる。


「ふぅー……すみません。こんな乱れたところをあなたに見せるなんて……みっともないです」


「まあ、冷静になってくれたのでよしとしましょう。とりあえずは、今はもうお互いに帰りましょう。おそらく明日の朝一番に、あのバカが帝の緊急召集を行うはずです。詳しいことは、その時話しましょう」


「サボらないでくださいよ。いつも何かと理由をつけてサボるんですから」


そう、この人はいつも帝の会議には出席せず。何かと理由をつけては逃げ回るのだ。

うちのギルドマスターに聞いたところ、「あいつにとっては会議ほどつまらないものはないらしい。だから出席しないんだよ。つかしてくれない」らしい。

月に三度以上は帝会議をやっているというのに、彼は3ヶ月に一、二回しか出席してくれない。

曲者揃いの帝の中でも、とくに変わってるのだこの人は。


「わかってますよ。今回はきちんと出席しますから心配しないでください。少し、気になることもありますしね。それに、襲われたのはここだけではないはずです。ですからあなたも早く自分のギルドに帰って、他に襲われたと思われる場所の対処をしてください」


「分かりました。あなたがちゃんと出席するなら何も問題はないです。どうせあの人は、すべての雑用を私に任せるでしょうし。私も早く帰って、状況を確認したいところです」


「大変ですね。例の勇者の護衛も、確かあなたの仕事でしたね」


「えぇ。全部終わらなかった場合は、あなたの言うバカにも仕事はやってもらいますからご心配なく」


ルメオは白衣に着いたポケットから、片手で覆い隠せるぐらいの小さなビンを取り出すと、レイテルにそれを差し出した。

ビンの色が茶色いため中身は見えないが、ラベルらしきものには『これを飲めば、元気100倍!』と書いてある。


まさかこれを飲めと?


「そんな大変なあなたに、どうです?新しく作った栄養ドリンクなんですが、誰も飲んでくれないんですよ」


この人はまったく…………


「そんな怪しいもの、飲める訳がないでしょう!どうして、私なら飲んでくれるって毎回思うんですか!?誰も飲まないなら、私も飲まないのは同じですよ!」


「そうですか。それは残念ですね。今回は、気性の荒い魔物の血を材料にした自信作なんですが、やはりだめですか」


そんないかにも怪しいもの、誰が飲むんですか!?

この前は虫系の魔物から栄養剤を作ってましたし………はぁー…………………

私の周りには、まともな人間がいないのですか?


「とりあえず今はもう帰りましょう。飲んでくれなかったのは残念ですが、あの子も待ってますし、あなたも早くお帰りなさい」


「えぇ、わかってますとも」


「それでは、また」


ルメオはそう言うと、その場から突然と消える。


彼がよく使う、透明になる魔術だ。

彼が自分で発明したオリジナルの魔術のひとつであり、彼しか使えない魔術になっている。

その天才的な所は、私も尊敬はしている。

性格が変でなければもっといいのだが………………


「生粋の変人ですからねあの人は……とりあえずは、ギルドに戻りますか」


そして帰ろうと思ったとき、レイテルは頭の隅にいた黒髪の男のことを思い出す。


「あっ…………」


あの人のことについて聞くのを忘れていました!

名前もまだ何も聞いていないですし………………

個人的な興味もありますが、あの人の戦闘力は目を見張るものがあります。

12人目の帝の素質もありますし。

あの強さで、顔も名も知られてないのはどこか引っ掛かります。


ルメオ・フォルカスはもう行ってしまいましたし、朝の帝会議の時に聞くしかないですね。


そう考え、一度レイテルは自分のギルドの様子を見に戻ることにした。




余談だが

その帝会議で竜玄のことをルメオに聞こうとしたレイテルだが、ルメオに上手く竜玄の話しだけは誤魔化され、結局は聞けずにいた。

だが、勇者のギルドカードを作ってる間に色々あったのはお分かりのとおり、その時ルーカスが聞いてきてくれることになったという話しは、もうちょい先の時間の話だ。























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