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16話【忍び寄る悪意】


夜中の3時前。

王都は静まり返り、出歩く者はほとんどいない。いたとしても、見回りの衛兵くらいだろう。

だがそんな都をお団子を食べながら歩く者がいた。


その者の名はレイテル・ベリツェル。

現十一人いる帝の一人。光王の二つ名を持つ者。


仕事終わりに、好物のお団子を食べながら街を見回るのが彼女の日課だった。


「今日もお団子が美味しい♪あのうざい人のことを忘れさせてくれます♪」


あのうざい人というのは、彼女が所属しているギルドのマスターであり、帝のリーダーでもあるルーカスの事だ。

少し前に長期の任務で帰ってきたばかりの所を、さらに追加で明日から護衛の任務に就く事をルーカスに言われたばかりである。

その為、得意ではない任務を無茶振りされた挙句、休みがない事に対しての不満で苛立っていたが、お団子を食べた事でその苛立ちは一時的に消えていた。


「んっふふ~」


上機嫌にお団子を食べていると、それは起こった。


「……ッ!爆発…!?」


突然と何処からか爆発音がしたのだ。


すぐにレイテルはこの周辺の気配を調べる。

そしてもうひとつあるギルドの方から、一人分の邪悪な気配を感じとった。


「確か今の時期、あのギルドには遠征に行ってる人間が多いはず………」


なるほど。留守を狙って来ましたか。

しかし、狙いは?それにいくら留守でも、あそこの変人ギルドマスターは残ってるはずです。


まさか、そのギルドマスターが狙いですか?


狙いはどうあれ、このまま見過ごすことの出来なかったレイテルは、とりあえず様子を見に行く。


そして案の定、黒鴉と書かれたギルドの入口の前には、土で汚れた黒いローブを着た何者かがいた。

ローブに着いたフードのおかげで顔はわからないが、体格的に男だと判断。


黒いローブの男がレイテルに気付いてないのは、彼女が気配を消しているためである。

帝の中でも上位に位置するほど気配を消すのに長けているおかげであった。


やはり、狙いはこのギルドのギルドマスター。

派手に爆発を起こしたのは、あの人を誘い出すためとしか考えられない。


ここのギルドのマスターは私と同じ帝の一人で、研究者として世界でも有名な男。

その帝を襲うのは、並大抵では考えられないはずです。

おそらくどこかの闇組織に属してる輩。なら、捕らえて尋問するのみです。


彼女はそう考えると気配を消すのを止め、わざとローブの人間に自分の存在を気付かせる。


「誰だっ…!?」


やはり声は男だった。

ローブの男は彼女の気配に気付き、レイテルの方を向く。


「この爆発はあなたの仕業ですね?何者かは知りませんが、大人しく捕まるのならば危害は加えません」


「はっ!誰かと思えば、まさか光王様とはな!こりゃ、いいぜ!当たりじゃねぇか!」


私の顔を知っているとなると、それなりの組織に属している可能性がありますね。

ますます逃がす訳には行かない。


「ほう…私の名を知っていてその態度、余裕そうですね」


「ちげぇよ!俺は興奮してんだ!なんたって俺は殺し合いが大の好みでね。相手が強いほど興奮すんだよ?わかるかいお嬢さん?」


「ただの外道でしたか……………それでは、大人しく捕まる気はないと?」


「当たり前だろうがッ!さあ!俺と殺し合おうぜ!!ヒャハッ!」


そう言うと男の右手が紅く光り出し、一本の剣がそこから現れる。


魔剣ッ…!


レイテルは背中にある大剣の柄を右手で掴み、勢いよく大剣を抜刀。

そして両手で大剣の柄を持つと、ローブの男に向かって大剣を構える。


「いいねぇ!その殺気!さすがは帝の一人だ。こりゃあ、マジで殺んないと死ぬなあオレ」


「本気だろうがなかろうが同じです。あなたは、私の前にひれ伏す」


「カッー!言ってくれるじゃねーか!それじゃあ、楽しい殺し合いと行こうか!!」


先に動いたのはローブの男。

男は一瞬で身体強化をすると、一直線にレイテルへと走る。


「ヒャハッ!!」


男はレイテルの間合いへと入ると、躊躇なく剣を振るう。

その動きには無駄がほぼなく、さらに素早い。まるで、洗練された剣技のように、剣を縦横無尽と自由に振るわれる。

レイテルはその攻撃を全て大剣を盾のように使いながら防御し、男の力量を冷静に観察していく。


魔剣持ちとは驚きました。

それにそれなりの戦闘力と言ったところですし…………この者は一体?


すべての攻撃が防御され、これ以上は無駄だと判断したのか、ローブの男は一端下がると、剣を高々と頭上に上げる。

すると、剣の回りを渦巻くように炎が現れた。


最上級の火属性強化魔術…!?

なるほど。最上級が使えるとは…………帝を狙うことだけはあるようですね。

SSランク以上の実力は確実と言ったところ………


ローブの男はそのまま縦に剣を振るうと、剣の回りの渦巻く炎が解き放たれ、蛇のように動きながらレイテル目掛けて飛んでくる。


レイテルは身体強化を身体に施し、その炎で出来た蛇を大剣で三度斬り、炎を打ち消す。

さらに間髪入れずに今度は、炎の蛇が2つに分かれて左右から同時にレイテルを襲う。


「甘い……ッ!」


しかしその攻撃も、大剣を横に大きく一閃する事により二つの炎を打ち消した。


威力も練度もまだまだですね。

まだ覚えたてと言ったところでしょうか?


「ちっ……やっぱ付け焼き刃で覚えた魔術じゃ、かすり傷も無理か。だが、それでいいぜ!本番はここからだからな…!」


ローブの男がそう言うと、剣の回りを渦巻いていた炎がすべて剣へと収束していき、炎で覆われた煌めく剣が出来上がる。


「ヒャハッ!!」


男は楽しげに奇声をあげながら、再度レイテルへと突っ込んでくる。

そして男は走りながら剣を横一線に振ると、炎で出来た斬撃を飛ばす。


「その程度っ!」


炎の斬撃を先程と同じように、真っ二つに斬って打ち消すが、これだけでは終わらなかった。

男は炎が打ち消されたのと同時に上空へと高く飛び上がり、そのまま着地しながら斬り掛かってくる。

レイテルはそれを一歩下がって避けると、今度は追撃で突きを放ってきた。

その突きを大剣で防御すると、次は体を回転させて威力ました斬撃を放ってくる。

それも大剣を盾のように使い、レイテルは防御した。


防御された男は一歩下がり、剣を再度大き振るうと今度はレイテルとの鍔迫り合いとなった。


そこで男は何が可笑しいのか、こちらを見ながら微笑を浮かべている。


「何が可笑しい!?」


「ハッ!この瞬間を待ってたんだよ!」


どういうことです?ただの鍔迫り合いで……………鍔迫り合い?まさか……………


レイテルは男のやろうとしてることが察し、男からすぐに離れようとする………が、

「ヒャハハッ!もう遅い!爆発しろ!!」


男がそう言うと、鍔迫り合いをしていた剣が突然と光り出し、二人を覆うほどの爆発を起こす。

辺り一体が煙りとかし、何も見えなくなる。

そして先にその煙りから出てきたのは、埃だらけではあるが無傷のローブの男だけだ。

まだ煙りが周りに充満しているため、未だレイテルがどうなっているかわからない。


「手応えあり。流石にかすり傷くらい………なっ!?」


「甘い…ッ!」


そして技を食らったはずのレイテルが煙から突如現れ、ローブの男に向かって大剣を一太刀振るう。

反応が少し遅れてしまった男は、左肩に浅いが大きな傷を受けてしまう。


「クッ……!《フレアボム》!」


ローブの男は一旦距離を取るために、すかさずレイテルとの間の地面に向かって上級魔術の《フレアボム》を放つ。

すると男の右手かは炎の塊が放出され、地面に当たると勢いよく爆発。男はバックジャンプ一つで数メートル以上の距離を取る。


「チッ………やっぱ化けもんかよ。あの状態で無傷とはな………どんなことしやがった?」


「あなたと同じですよ?」


「まさか、あの短時間でやったってのか!?」


「そうです。あなたは私とやる前から、自分の体に火の障壁を張っていたのと同じ、私は爆発する前に自分の体に水の障壁を張らせてもらいました。私が水属性に適正がなければ、かすり傷くらいはついたかもしれないですね」


「ちっ……まさか鍔迫り合いの最中にやったのかよ。尋常じゃねえなスピードだな。俺でも5分はかかるっつーのに」


しかしこの自分の属性の障壁を体に張る技術、少なくとも習得するのに通常は五年、帝級の素質があるものでも一年は掛かる高等技術。

これが出来るということは、確実に名の知られた犯罪者だという事がわかる。


おそらく万が一の逃走経路も備えているはず………なら念のため正体を先に暴く必要がありますね。


「さあ、どうしますか?あなたは火の属性。私は水の属性を持っています。属性だけでも相性はこちらが有利ですが………それでも戦いますか?」


しかし、何が可笑しいのか男は不適に笑い始める。


「ハハッ…おもしれえ……おもしれえよ!やっぱこうでなきゃなあ!俺が圧倒的不利?いいねえ!!最高だろ!だって久しぶりに自分の血が見れるんだぜ!?やべーよ!止まんねーよなあ!?ヒャハハハハッ!!」


イカれてる………殺すことに快楽を覚えた人間の成れの果てがこれですか……本当にイカれてる。


「そんじゃあ、楽しい楽しい殺し合いの続きと行こうか!!」


そう言ってローブの男は空へと飛び上がる。

そろそろこの無断な戦いを終わらせるべく、レイテルも飛び上がって大剣で攻撃を繰り出す。


その後は空中での斬り合いとなり、地面にはほとんど足を着けない戦いとなった。

それが2、3分ほど続くと、一旦強く打ち合った後、お互いに大きく離れる。

どちらもダメージはない。


少し舐めていたようですが…………しかし、この程度なら何度も見てきました。

それに、敵もそろそろ何か仕掛けてくるはず。ならば、それを全て正面から叩き落とすのみ。


「ひゃッヒャッヒャッヒャッヒャッハ!!いいねえ!?これだよ楽しみだったのは!」


しかし、いい加減うるさいですね。同じことを何度も何度も……本当相手するのが面倒です。


「あぁん?無視かよ!?こんなゴミカス野郎と話す必要はないってかぁ?」


ほんとうるさい。うるさいのはあのウザイ人だけで充分なんですが…………………


「うるさい。大方このギルドマスターを狙っていたみたいですが、あなたの力量じゃ無駄です。あの人には勝てないですよ?」


「ほう…言ってくれるじゃねえか……」


この感じ、やはり何か奥の手があるようですね。

強化薬か禁術か……いずれにせよ使われる前に倒すだけですが…………


「確かに勝てないかもな?だが、俺が何の策もなしにくるとでも?」


やはりですか………

なるべく無傷で捕まえたいのですが……禁術なら厄介です。手加減なしで、やるしかないですね。


無駄だろうとは思いながらも、レイテルは本気を出す前にもう一度降伏を促す。


「どんな策を用意しても無駄です。降伏してください」


「言うねぇ。本当はあの研究者に使えって言われてたんだがな……この際だからあんたでいいや」


敵ははっきりとした殺気を私に向ける。この殺気は奥の手を使うという意味だろう。


だが、やらせはしない!


「その前に…斬る!」


私は相手に奥の手を使わせないために駆け出す。男が目では追いつけない速さで、瞬く間に相手との距離を詰めた。そして致命傷を与えるつもりで剣を振るが………………


すると、変化が起こった。


「…なっ…!うご…かない…!?」


男を斬る寸前で急に体の動きが止まったのだ。そしてそれと同時に、二人の周りの地面に円形の魔法陣が現れる。


まさか、これは禁術書の魔方陣!?


ローブの男の右手を見ると、紙らしきものを握っている。

それを見たレイテルは、とある禁術書のことについて思い出す。


不味いです。この人を完全に舐めていました。

あの禁術書を持ち込んでくるのはさすがに予想外です。このままではやられる………どうする……?


男はレイテルが完全に動けなくなったのを確認すると、またニヤニヤと笑いだす。


「むやみに突っ込んできたあんたが悪いんだぜ?自信を持つのはいいが、自分より下の人間をなめるのは、今後止めといたほうがいいかもなぁ?まぁ、次があればな。ヒャハハッ!」


そしてローブの男はゆっくりと魔方陣から出ると、狂喜したかのように高らかに笑いながら剣を振り上げる。


このままじゃ不味い!

せめて致命傷は外す!


私は限界まで魔力を練り上げ、体内の至るところに張り巡らせ、その魔力を体の表面に張る。


「呆気ないもんだな?正義の光王様も。これなら、他のトリニティ・キングも案外簡単かもな?ヒャハハッ!」


「くっ………」


動こうとするが、やはり動けない。

しかしこれで、限界まで身体の強化された。私はこの身体で受け止める覚悟をし、ローブの男を睨む。


これで、致命傷は避けれるはずです……そのあとは私が倒れるまでに終わらせる!


「あぁ?何だよその目は?いいよ、死んじゃえよ!」


そして、剣が彼女の目前へと迫る。


「…………ッ!?」


だが、突然横から石ころが二人の間に飛んで来ることで、剣は斬る寸前で止められた。


いまのは石……?まさか他にも人がいたのですか?

しかしそんな気配……………ッ!?いるっ!


その気配は、爆発で壊れたギルドの入り口から感じられた。

そしてローブの男は怪訝な顔をしながら、そのままの姿勢で顔だけを入り口へと向ける。


「あぁん?」


レイテルも横目でギルドの入り口を見ると、そこには黒髪の少年とも青年とも言える男が、私ではなくローブの男をまるで見下ろすかのように立っていた。


「よぉ、犬っころ。犬が遊んでるみたいだから来てみたけど、お前駄目犬だな。犬は犬らしく、主人の言うことは聞くもんだぜ?」


この人は一体?

もしかして黒鴉(ブラックレイヴン)の者ですか?

もし新人であるならば、不味い。

あの男は新人が倒せるような相手じゃない!

何とか言って、逃げさせるしか……!


「なんだよなんだよなんだよ!!なに邪魔してくれちゃってんの!?俺が犬?てめえ、絶対殺す…!」


「黙れ犬。ワンワンうるさい」


なにを言ってるんですかあの人は!?

本当にこのままでは不味いです。

なんか、ローブの男がやる気出しちゃってるんですけど!?


「ちょっ、ちょっとそこのあなた!」


「あっ、俺?なんか用か?」


緊張感のない返事が帰ってきた。


「今すぐにでも、早く逃げてください!ブラック・レイヴンの新人さんみたいですが、そこの男は新人が勝てるような相手じゃありません!死にたくないなら逃げて下さい!」


「嫌だ」


「なっ…!?」


まさかの即答に驚いてしまう。

しかもまるでだだっ子のような言い方だ。


「嫌だじゃありません!くっ……あなたが逃げないのであれば私が………」


レイテルはこの魔方陣から抜け出すべく、体を無理矢理にでも動かす。


「無駄だ!動ける訳がない。まっ…頑張って動ごいても、拒絶反応が起こってものすごい痛みを食らうだけだけどな!」


ローブの男の言った通り、突然身体中に激痛が走る。それも、常人なら失神するほどの痛みだ。


「ぐッ…あぁぁぁぁッ!!」


意識が飛びそうになるが、何とかこらえる。


「無理はするなよ美人さん。主人の言われた通りに任務をこなせないような犬ごときに負けるつもりはねぇよ」


「てめえ。殺すだけじゃもの足りねえみたいだな…」


ローブの男は、またもや犬呼ばわりされて気が立ったのか、黒髪の男に殺気を向ける。

一方黒髪の男も引く気はないようで、さっきからローブの男を見下ろすような態度で突っ立っている。


というかあの変人ギルドマスターはなんで出てこないんですか!?

この騒ぎに気付いてない訳がありません!


まあ、そんなこと思ってても仕方ありません。この人が引かないというなら、私にも考えがあります。


「どうしても逃げないんですね?」


私は黒髪の男にそう話しかける。


「まあな。面倒だが、引く気はない」


「なら、その男の持ってる紙を燃やすなり破るなりしてもらえますか?」


黒髪の男にそう言うが、先に反応したのはローブの男だ。


「ハハッ!さすがは光王様。禁術書のことは知ってるみたいだな 。だが、その男に俺が遅れをとるとでも思ってんのか?」


「それはわかりませんが、私たちの戦いを見て出てきたということは、それなりに自分の実力に自信があるということ。禁術書の紙を破壊するだけなら、出来る可能性が高い。ただ、そう考えただけです」


それを聞いて黒髪の男の方が微笑を浮かべる。


「なるほど。その状態で冷静だなんて、あんたやっぱすげえな。あの犬が持ってる紙を破棄するとどうなるんだ?」


黒髪の男は、ローブの男を指差しながら言う。

レイテルがそれに答えようとするが、先にローブの男が喋り始めた。


「おもしれえ。なんだか面白そうだから俺が教えてやるよ」


ローブの男はそう言って、複雑な魔方陣が書かれた手のひらサイズほどの紙を黒髪の男に見せた。


「この紙はな、《魔の禁術書》っていう書物の知識を使って作った魔方陣だ。その効果はいま見てる通りだよ。解除方法はこの紙を燃やすなり破くなり、原型さえなけりゃ解除される。まっ、その代わり帝だろうが絶大な効果は得られるがな!ヒャハハハッ!」


そして魔の禁術書………その材料は恐らく人間……………


「おいおい。そう睨むなって!おめぇの思ってる通り、材料は人間の血肉。この紙作んのに、善良な人間10人以上殺したかな?そうそうそういえば、逃げ回るやつを殺すのは結構楽しかったぜ?」


「外道が………」


楽しそうに笑うローブの男に、私は殺気と一緒に睨む。

そして、今まで聞き役だった黒髪の男は、無表情のまま口を開いた。


「そうか……敵なのにいろいろ説明あんがと。敵にノコノコ情報教えるなんて、駄目犬なだけじゃなくやっぱ馬鹿犬なんだな」


「あぁッ!?てめえは死ぬってのは決まってんだ!あとはどう殺すかだけ。ちゃんと苦しませて殺してやるから安心しろよ?」


「つー訳で美人さん。悪い……先に謝っとくわ。あんたは俺に犬が持ってる紙だけを狙わせて、自分が解放されたらすぐにでも倒すつもりだったみたいだけど………もしかしたら紙をどうにかするより先にアイツがくたばるよ」


この人は一体何を言って………


「へえへえへえ!言ってくれるじゃねえの!てめえじゃかすり傷もつけられねえよ!つー訳で、その勇気に面して、この世で最も苦しい炎の刑にしてやるよ!」


「どうぞ好きにしてくれ…」


ローブの男はそれを聞いて腹が立ったのか、その余裕な態度が気に食わないのか、すぐに自分の剣の周りに先程の炎を纏わす。

そして、間髪いれずに剣を大きく振った。

すると、剣からさらに炎が放出され、その炎が人間を丸飲みできるほどの大蛇に変形すると、炎の大蛇は黒髪の男に向かって突進していく。


「ヒャハッ!死ねやくそがぁぁぁあ!」


不味い!私の時よりも大きい!


レイテルは体を動かそうとするが、やはり動こうとしても激痛が走るだけでまったく体が動かない。


このまま見守るしかないのか!?


そして、その炎は今にも黒髪の男を飲み込もうとしていた。









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