13話【盟約】
「いいです、いいですよリュウゲン君!私の知らない何かをあなたが持っている。未知とは私にとっての至福。思った通り……いやはや、さすがですリュウゲン君」
「さすがって………あれを使っておいて…普通なら死んでるのよ!」
メルルは怒りの表情でルメオへと詰め寄りながら言う。
「ルメオさん。それは一体どういうことですか?兄さんが死ぬかもしれなかったってことですか?」
ユキナも同じく、ルメオを睨みつけるように言った。
「大丈夫だ二人とも。結果的に俺は生きてるし、それで充分だよ」
そう言ってなんとか立ち上がる。
激痛を味わったせいで未だ身体全体に違和感があったが、少しよろける程度で済んだ。
「兄さん……」
「結果的にはそうですね。ですが、説明もせずに魔術を使った私が悪い事は変わりません」
一応自覚はあるのね。
なら、説明しなかった理由は…………
「こんな痛みが味わえると知ったら、俺が逃げ出すとでも思ったのか?」
「わかってたんですか?まあ、一般的な話ですよ」
「説明なしに突然使った理由は分かったわ。それで、どうしてあんな危険な魔術を?」
「ふむ……少し話しが長くなりますが、よろしいですか?」
メルルではなく、リュウゲンに向かってそう言う。
「行く宛なんてないし、時間はたっぷりあるから大丈夫だ」
「………今から話すことは他言無用です。わかりましたねメルル」
他言無用ね……………いよいよきな臭くなってきたぞ。
嫌でも巻き込まれる運命…….ってやつか……
「大丈夫!私、口堅いから!」
「いえ、あなたの場合そうじゃないから言ってるのですが……」
「いやまずいだろそれ」
「まあ、話さないことを信じましょう。では、まずはリュウゲン君………あなたに聞きたいことがあります」
「なんだ?」
「あなたは人間ですか?」
「…ん…?」
一瞬何を言っているのか分からなかった。
「って、何を最初から失礼なことを言ってるのよ!?今度はいくら私でもちゃんと怒るわよ!?」
しかしルメオさんが先にそう言うのだから、何かしらの根拠があって言ってるのだろう。
だとしたら、
「メルルさん、大丈夫だ。きっと、そう思うのも仕方がない結果が出てるんだろ?俺の身体は、他の人と比べると異常なんじゃないか?」
「えぇ、そうです。いろいろと驚く結果は出ましたが、はっきり言ってあなたの存在については不気味ですね。私でもわからないことがある……ということでしょうか」
こいつ、おそらく半分気付いてやがるな。
俺がこの世界の人間ではない事に………
俺を調べた結果からか、それとも長年の研究者の勘か………どちらにしろ話す覚悟は必要になりそうだな。
安易に調べさせたのが失敗。
ここに来て二日でバレるのか…………
「一応、自分の知る限り人間だよ俺は」
「では別の言葉にして単刀直入に言いましょう。あなたは別の世界から来たのではないでしょうか?」
「え……」
「嘘……」
その言葉を聞き、メルルとユキナも驚いている。それも当然だろう。
他にも、俺の正体についての可能性はあったはずだ。
その中からピンポイントで当ててくるとは……まじで油断なんねぇなこの人。
「その答えに行き着いた理由を聞いても?」
「調べた結果と私の勘……ですね。あなたを調べていて分かったことがあります。私が今までで見てきた人達と異なり過ぎている。人それぞれにはオーラ、違う言葉で言えば存在感というものを備わっています。そして人それぞれ大まかにオーラが違っていても、全員に共通するところが一部分存在してるんです。しかしあなたのそれは他とはまるで別………まるで別の生き物か、違う世界の住人です」
「そしていくつか推理し、その中から一番高い確率を選び、一番最初に俺に人間か?と聞いたってわけか。それが違うなら、異世界人と…………」
「そうです。私以外の研究者が見ても、同じ結果でしょうね。まあ、あなたの中にある力が分かるのは、私ぐらいでしょうが……」
やっぱ、そうそう上手くはいかないか。
序盤で出会ったのがこの人という時点で詰んでたな。
さて………だったらあとは、俺とユキナが安全に暮らせるように交渉するのみ。
それがダメで、俺とユキナの身が危ないようなら隙をみてここから抜け出す。この人相手に逃げられるか分からないけどな…………
「一つルメオさんに聞きたいことがある」
「ほう……聞きましょう」
「ルメオさんの考えが合ってるとするとして、俺を一体どうする気だ?」
「そう………ですね。逆にあなたの望みは?」
「俺の望みは一つ………ユキナと俺の身の安全だ」
「なるほど…………ではこうしましょう。真実を教えてくれるのであれば、私からリュウゲン君の許可なくあなた達に手を出すことはしません。無論、メルル含めこのギルドの者達からも」
「少しの間ですが、メルルの性格も把握した事でしょう?私がこの約束を破れば、彼女が許すことはないでしょう」
「えぇ、血の盟約を使って誓ってもいい。あなた達二人には、誰にも手出しはさせない」
メルルさんなら……まだ信用ができるかな。
それにいずれは俺の事を知る協力者も必要になる。
なら、ルメオさんをいかにして味方に着けるかが大事なはずだ。
仕方ない……異世界から来たとちゃんと言うしかないな。
「たくっ……腹を括るしかないか。そうだよ、その通りだ。ルメオさんの言った通り、俺はこの世界の住人じゃない。こことは別の世界から来た……………異世界人だ……」
そして暫くの沈黙。
「ほっ……ほんとなのね………」
「例え異世界の人だとしても、兄さんは私の兄さんです…………」
ユキナはほんとええ子やな………とユキナの頭を撫でながら「ありがとな」と言う。
メルルも改めてそうだと言われ、まだ実感がなく驚いている感じだ。
ルメオに至っては、何か考えているような仕草をしている。
「だとするならば、リュウゲン君がその二つの属性を持っていても不思議ではありませんね」
「それはどういうことだ?」
「あなたが持ってる2つの属性……二つともただの人間がもてるような属性ではありません。そして魔属性ですが、本来は魔族しか持つことのできない属性です」
「魔族が自分たちだけの属性を持っているなんて、聞いたことないわよ?邪は普通に聞いたことないけど………」
「それも仕方ありません。魔属性をもつ魔族は、かなり希少ですから。魔王、もしくは魔王クラスの潜在能力をもつ魔族しか持っていません。おそらくですが、この属性をもつ魔族は二百年に二人か三人ほどしか存在しないでしょう。それよりも問題は、邪の属性の方です」
どうやら、ユキナが何かを思い出したようだ。
「邪の属性……読んだ覚えがあります。聖と邪の神《予言の書・創世記第2章》…少し前に読んだことがあります」
「ほう……あれを理解したのですか」
「いえ、半分も理解できませんでしたが…」
「少し分かれば充分ですよ」
うん、まったく話しに着いていけない……
「なあ、まったく話しについていけないんだけど……それに俺の質問には答えられてないし」
「そうでしたね。まずはこの世界を簡単に説明してからの方が良さそうです」
「そうしてくれ」
「この世界ベルトリアは、神からあたえられた魔力で作られていると言われています。その神が先程話していた、聖と邪の神です。そして、その魔力を有効活用するために魔法と魔術というものが作られたと言われています」
「魔法と魔術の違いは?」
「魔法は魔族しか、魔術は人間しか使えません。理由は未だ不明です。そしてあなたがもつ邪の属性は、本来神しか持たない属性です」
「神って神様?」
「他に何が?」
そうきましたか。
神の属性…………いらんわそんな力!!
まあ、それなら光は聖の属性を持ってるだろうな。
なんたって、神に愛された存在だろうし!
じゃなきゃ理不尽だ!
あれか?俺の人生に安寧っていう言葉はないのか?
どうみても厄介ごとしか起きないよな!?
見ろよ。メルルさんなんて途中から話しについていけずに両手で頭を抱えてるし、ユキナなんて可愛い…じゃなかった、俺の服をつまみながら何か信じられないような顔して聞いてるんですけど。
つか神より魔王との闘いの方がましだぁ!!
「はぁー………もうなんかめんどい…」
「あー、そう言えば王宮のほうで勇者召喚の儀がありましたね。何か関係が?」
うん、全てを把握。
「多分召喚される勇者、俺の知り合い。というか、俺と一緒にここに飛ばされたと思う」
と、やけくそ気味にさらっと情報を渡す。
「ほう……実は今の話しは国家機密なんですけどね。私には今日勇者召喚を行うとしか言われていなかったので、具体的な内容は聞かされていません」
やっぱあいつ勇者召喚に呼ばれてたのかよ。まあ、わかってたけど。
てか国がそれを秘密にする訳はなんだ?なんかありそうだな。
「国家機密……って、それ話して良かったのー!?」
慌て叫びだすメルル。
国家機密を扱ってる時点で、ルメオさんが只者じゃないのは把握した…………
「まあまあ、彼と関係あるみたいですし、いいじゃないですか。それにですね、勇者召喚は三百年に一度魔王が現れるという伝承により、三百年に一度勇者を召喚するというのがこの世界での決めごとらしいんですが……実を言うと私、すべての勇者物語は5国の自作自演だと思っていたんですよ。リュウゲン君の存在で、勇者召喚は本物だと分かりました」
「5国?この世界は5つの国で出来てるのか?」
「3つの大陸と5つの国でできてますよ」
元の世界と国の数も全然違うな。さすが異世界か……つか国少なすぎだろう。
「なるほどな、とりあえず最初に戻ろう。メルルさんの質問、まだ答えてないよな?普通は人間には使わないってどういうことなんだ?」
「そうです!いくらリュウゲン君が特別な属性を持っていても、あの魔法陣は危険過ぎる」
「まあ簡単なことですよ。その2つの属性は、通常では人間に宿ることはない。そして私はこう推測しました。彼の体はその魔力、属性を持つだけの、もしかしたらそれ以上の人間離れした何かがあると思いましてね」
「それが外れていたら?」
「最悪駄目だとしても、後遺症程度に治められましたよ。結果大丈夫なんですから、いいでしょう」
「まっ……まあ、そうだな…結果的には……」
「いや、良くないから!リュウゲン君、あの魔法陣って、普通は死体に使うものなのよ?死体はもう死んでるからいいけど、普通の人なら一歩間違えたら即お陀仏なんだから」
だろうな、とは思ったよ!
「でもまあ、無事なんだし」
「説明しときますが、あなたに使った魔法陣は東洋の死体用魔法陣を私が改良したものです。普通の魔法陣だと、一瞬胸に針が刺されたような痛みだけなんですが、通常のだとさらに詳しく奥まで調べることが困難でして………そのため、この死体用に使う診察魔法陣を使わせてもらいました」
「なるほどね、だからあんなのを使ったのか…………ちょっと話しが逸れるけど、魔法陣ってのはそういうものにしか使えないのか?」
「いろいろとありますよ。本来魔法陣とは、魔法に劣る魔術を補助するために考えられたものですので」
なるほどねぇ。
ほとんど基礎知識がない状態だと、話しに付いていくのがやっとというかギリだな。
ユキナは大体分かってるみたいだし、こりゃあこの世界についてきっちり勉強しないといけないか………
「そういう訳で、あなたは特別な属性を二つ宿している。それともう一つ………」
「もう一つ?」
「いえ、やはりなんでもありません」
何か言おうとしていたはずだが、何故か何もなかったかのようにルメオは振る舞う。
「ん?なんだよ。ほかに何かあるのか?」
「とりあえずは以上ですね。それ以外は我々と変わらない人間です。あとは、身体能力が異常に高いというくらいです」
この異世界でもやっぱり異常なほど高いのかこの身体………
「身体能力については、実は元の世界の10倍以上跳ね上がってるみたいなんだよ。それについて何か分かるか?」
「そうですね………あなたが元いた世界に魔術、いえ魔力もしくはマナは存在していましたか?」
「いや、多分ないな。全部空想の産物として認識されてるよ。基本的に科学で成り立ってからな」
「なるほど、科学ですか………この世界では余り発展していないですね。では仮説になりますが、おそらくリュウゲン君がいた世界はマナがほとんどない世界だったのでしょう。そのため、その世界ではマナによる身体の影響を人々は受けられなかった。しかし、マナが溢れるこの世界に来たことにより、リュウゲン君の身体がマナに適応するための魔力の器を作り、異常な程にマナを取り込んだ可能性があります。そして、身体
に取り込まれた大量のマナが身体に馴染み、強化されたのではないかと……私は考えています」
「マナってのはそんなに生物に影響を与えるのかよ……」
「えぇ、与えますよ。マナを何かのエネルギーだと思ってるもらえれば簡単です。そのエネルギーを取り込むために身体が変化し適応したわけです。魔物がいい例ですね。元は動物達がマナを取り込んだ姿が魔物になります。取り込んだ代わりに、色々失う訳ですがね………これ以上は後にしましょう。さらにマナについて詳しく話すと、きりがなくなってしまいます」
「それもそうだな…」
「では、とりあえずリュウゲン君の現状はおおよそこれで分かったかとは思います。では、これからについての話しをしましょう」
「これから?」
「えぇ、これからの事です。まず私のギルドに入ってもらうのは、最初からの目的でしたのでそのまま続行です。といっても、このギルドに入る以外に選択肢はありませんしね」
確かに、おれの身元がバレてしまった以上、このままここで仕事するしかない。
俺たちに手は出さないとは言うが、それもただの口約束だ。まだこの人のことを分かりきった気にはなれない。
逆にこの人を利用するのが一番だ。
「仕事がないと食っていけないからな。しばらくはここで働かせて欲しい」
「えぇ、それは許しましょう。ですが、それだけでよろしいのですか?気付いてるとは思いますが、あなたのその力は特別なもの。その力の事を誰かに知られれば、利用もしくは排除する輩が現れるのは確実でしょう」
「だろうな。でも、なんとかやっていくしかない。汚い手を使ってでも、何とかするしかない」
「大丈夫よリュウゲン君、そこは私が何とか「メルルは黙っていなさい」……ルメオさん…」
「あなたはいつも甘い。だからこそ、ここにいるしかないのを忘れましたか」
「でも……この子達が………」
そして、メルルはしょんぼりするように何も言い返せなくなる。
「メルルの言おうとした事は忘れなさい。では、もう一度言います。あなたはそれでやっていけると本当に考えていますか?」
「分かってるさ………きっとその場しのぎにしかならない。結局どこか遠い未来で、どうしようもなくなってしまうだろうってのは思いついちまう………」
「では、どうするのです?」
この人は何が言いたい?
何か言って欲しい言葉があるのか?
何を俺に求めている?
……………ん?………求める?………………俺に?一体何を?
……….まさか……俺にルメオさんと交渉しろってのか?
この人と交渉出来るような持ち札なんて俺には……いや、一つあるぞ………………
ルメオさんが自分で言ってたじゃないか、未知とは私にとって至福、だと。
なら、俺が渡せるものは一つ。俺自身の知識だ。
この世界の科学は、ルメオさんが言った通り俺から見ても発展していない。
未知、すなわち知識を至福とするルメオさんには、未知なる科学の世界は魅力的な筈だ。
それにもういくつか切り札がある。
「ルメオさん………あなたと交渉したい」
そうリュウゲンが言うと、待っていたと言わんばかりに、ルメオが嬉しそうな顔をする。
「素晴らしい…!よくぞ、その答えに行き着きました…!では、あなたが私に提供できるものは何でしょうか?」
「知識だ。俺の世界ではさっきも言った通り科学で全てが成り立っている。その俺が持っている科学の知識を全てルメオさんに教えることが出来る」
「私が満足できるほどの科学の知識を、あなたが個人で提供できると?」
俺は科学の教科とかは嫌いじゃなかった。だからといって、俺の頭の中に専門的な知識が豊富にあるわけじゃない。
だからここで切り札一つ目。
「俺の頭の中だけの知識だけじゃ辛いだろうな。だが、俺がこの世界に飛ばされた時に一緒に持ってた筈のバックには、その知識をふんだんに詰め込んだものが入ってる。それを見つけられた際には、ルメオさんに全て提供しよう」
そう、俺の頭には無くても、一緒に持ってた筈のバックにはノートパソコンが入っている。それもソーラー充電器も一緒に。
パソコンの中には、無駄に色んな教材や知識のデータを詰め込んでいるため、そのパソコン一つで大方の知識を得る事が出来る。
さらにもう一つの最期の切り札だ。
「そして、最後に俺をあんたに提供できる。言ったよな?俺自身が未知の存在だって。解体とかは勘弁だが、それをしなくても興味を持てる部分が俺の身体にはいっぱいあるんだろ?」
「……クッ……クハハハッ…!そう、そうです…それでいいのです…!それでは、あなたは私に何を求める?」
そして、メルルさんの言った言葉が本当ならば、口約束での交渉では終わらない。
「一生涯の俺への絶対協力と保護。そして、それを血の盟約によって交わしてもらう」
メルルさんは、血の盟約を使って誓ってもいいと言った。
つまり、何かしらの魔術でその約束事を絶対的なものにする事が出来る方法があるって事だ。
「……ッ!素晴らしい、本当に素晴らしい….!私の想像以上だ…!その盟約……謹んでお受けしましょう」
「……ふぅ………それで、その血の盟約ってのはどうすればいい?」
「これを……」
どこから取り出したのか、小さなナイフを一つリュウゲンへと渡す。
「右手の手のひらを、私と同じように切ってください」
そう言い、ルメオは自分の左手の手のひらを薄く切り、血を垂れ流す。
リュウゲンも同じように、自分自身の右手の手のひらを切る。
「血が流れた方の手で握手をし、握手をしてる手に魔力を集中させてください」
言われた通りに握手をし、魔力を右手に集中させる。
「ここに盟約を結ぶ。全てを見通す精霊よ。我らの言葉に力を与え、その盟約を結ばせたまえ」
ルメオがそう言った瞬間、握手をしている手が輝き始める。
「これは………」
「リュウゲン君……あなたが先ほど言った、私に望むものを言ってください」
「あっ、あぁ………俺が望むのは、一生涯の俺への絶対的協力と保護」
「私があなたに望むのは、あなたの持つ全ての知識と、あなたの身体の未知の解明への協力。絶対たる盟約により、誓いは命へと繋がれる。我、ここに盟約を結ぶ」
「リュウゲン君も、ルメオさんが最期に言った言葉を」
「我、ここに盟約を結ぶ」
メルルに言われた通りそう言うと、心臓が一瞬だけ何かに掴まれるような感覚に陥る。
その後、手から放たれていた輝きが少しずつ失われ、数秒後には完全に消えた。
そして、二人は握手していた手を離す。
「これで完了です。血の盟約により、私達の魂に先程の取り引きが刻まれました。これを反故にする場合、命を持って罰せられます」
やはり、そういう類のやつか。
だがこれで、俺とルメオさんはお互いに裏切る事の出来ない、信頼できる協力的関係となったわけだ。
「これからよろしく頼むよルメオさん」
「こちらこそ、よろしくお願いしますねリュウゲン君」
「ずっるーい!私も!私とも結ぼう!私だけ仲間ハズレとか嫌なんだけど!」
と、何故か頰を膨らませて言ってくる。
何か羨ましかったようだ。
それを頭が痛くなるようなものを見るかのような顔をするルメオ。
「はぁ………メルル。全くあなたは何を言っているのですか。そんな理由で軽々しく盟約は結ばないでください……」
「えー!やだやだ!私だけ蚊帳の外だったじゃないの!」
「子供ですかあなたは………」
「まあまあ、親切で美人なメルルさんなら、盟約なんて結ばなくても助けてくれるだろ?」
「ま、まあ……それくらい当然よね。ほんと、お姉さんとしては当然のことだもの。ねー!ユキナちゃん。困った事があったら、この親切で美人なお姉さんに何でも言うのよ?」
「え、えと……はい……」
突然話しを振られ、困ったように苦笑じみにユキナは答える
チョロいなこの人。
意外とバカなのでは……?とここでは明言しないでおこう。
そして、俺はルメオさんとの盟約によって、この世界に来て二日で強力な味方を得ることができた。
今後の事を考えても、かなり一歩前進したという感じだ。
この関係を、出来るだけずっと良いものにしていきたい。
さて、後はここに泊まらせてもらって、ゆっくり休む………
「では、話しもまとまった所でギルドのランクテストです。私と模擬戦をしてもらいましょう」
……………………
ですよねー
最初に、ランクテストするとか言ってたし……
説明回の後は肉体言語のお時間ということですね。分かりますう。
いや、魔術が使えない俺は、激しく不安しかないんですが……………
でもまあ、この世界の人にどれだけ自分の力が通用するか試すにはちょうどいい。
きっとルメオさん強いんだろうな………
そしてリュウゲンは疲れと空腹を何とか抑え、厳しいテストになるだろうと覚悟をする。




