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『DRL』機皇退魔陣  作者: 拾捨
地底激震編
22/58

壊天(かいてん)

第一部 最終話。

「淵鏡皇、影響範囲から離脱を確認」

同じ面影を持つオペレーターの報告に、穿地元は頷く。

「それで良い。そうすれば、私も動き易い」


「時命皇、ドリルを展開。こちらに接近を開始」

「『kaiten.tfm』実行せよ。いよいよだ、ここから我々の歴史が始まるのだ」


穿地がキーを押下すると、既に起動準備を終えていたプログラムが動き出す。

直後に始まった回地の変化に、時命皇は歩を止め警戒。

「これは…“変形”しているのか」


螺旋が刻まれた塔の表面がスライドし、展開し

内部に隠された機構が複雑に連動し各部位が次々と移動。

『脚の生えた円柱』とでも言うべき回地の姿は、たちまち巨大な人型となった。


鈍い銀の装甲に包まれた巨神は人型の神殿とも言うべき威容をたたえ

身の丈に及ぶ長大な独鈷を右手に携えている。両端は、巨大なドリルである。

「これが『壊天大王かいてんだいおう』―――私の最高傑作たる、地を穿つ“神”だ」


「神だと…思い上がるな!」

穿地の傲慢な言葉に激昂した時命皇が一息に踏み込む。

その膝は既に破導ドリルを発動している。


時命皇・深中審也は人類ではない。

対峙した虎珠皇と旭が直観により看破した通り、彼は高度な知性を備え自律するに至ったDRL躯体そのものである。


採掘都市で利用されるDRL実用品は

彼から見れば自分の仲間が他種族に物品として加工され利用されているに等しいのだ。

故に、人類のDRL利用を促進する“元凶”たる穿地元は、時命皇にとって仇敵。

穿地を打倒することは、同胞を奴隷状態から解放する大きな一歩を意味するのである。


種の誇りを背に、時命皇は破導ドリルによるとび膝蹴りをみまった。

対する壊天大王は、悠然と左手を正面に向け迎える。

「空間も自在に支配できない者に、壊天大王は傷つけられんよ」


時命皇のドリルは、巨神の左掌の中心に据えられたまま動かない。

絶対破壊の力を持つはずの漆黒の光は、壊天大王の掌中で輝きを失う。

壊天大王はそのまま時命皇を左手で握り締め、再び大地に投げ返した。

地面が砕け、墨色の身体がめり込む。


圧倒的な衝撃に時命皇の躯体が満遍なく軋む。

「私は…斃れる…わけには……!」

「他愛も無いな。だがここで潰してしまうのは惜しいぞ、ああ、興味深いサンプルだ。

よかろう、ひとつ“試練”をくれてやる」


司令室の椅子に身を預けながら自問自答の結論を出した穿地が、コンソールに指を奔らせる。


壊天大王が右手に持つ独鈷の両端が回転を始める。

下方に伸びた切っ先を大地に突き立てると、辺り一面の大地が歪む。

大地ではなく、空間そのものが壊天大王のドリルによって歪められているのだ。


「時命皇、君“も”地獄へ行って来ると良い。健闘を祈る」

空間の歪みが渦を巻く。

渦の中心は時命皇に据えられ、瞬く間に何処かへ呑み込み消し去った。


これが、壊天大王の恐るべきドリル奥義『次元穿孔』だ。

神を自称する傲慢さを裏付ける、文字通り別次元の力である。

「虎珠皇と時命皇の次元座標補足。固定します」

「淵鏡皇も併せて補足し追跡を続けよ。壊天大王はドリルロボとは合流せず、別行動をとる」



ここに於いて、地底を揺るがしたドリル達は各地へ散った。

彼らの穿つ隧道ずいどうは、やがて繋がる時が来る。

この世の理に則るならば

その時目にするのは闇に射し込む光に違いない――――――

地底激震編

―完―



次回より地上編を始めます。

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