分担
「さて、ゴミ達にはメイ様の身の回りのお世話とメイ様に一般教養を教える二手に分かれていただきます。」
「交互ではダメなのかな?」
「はい、交互にした場合、なんらかの情報の食い違いが生じる場合がございますので。それにしても、そんなこともわからないとは流石ゴミですね」
「いや、質問したの我じゃないんだけど……」
魔王の威厳は既になくなっている。
いや、メイド服の人形に精神を宿らせている時点で威厳も何もないのかもしれない。
「ともかく、ゴミには魔王としての心得も教えてもらいますので早く決めなさい時間がないんですよ分かっているんですかこのゴミ」
「あ、じゃあ私が身の回りのお世話する〜!」
「ということは我は一般教養と魔王としての心得を教えるのか」
「いえ、ゴミにはあと雑務もこなしていただきます」
「ざ、雑務?」
「はい、身の回りのお世話もこれに含まれます」
「じゃ、じゃあ今までのはなんだったの? 我誰よりも忙しくない?」
「何を言っているんですかこのゴミは」
イリスがため息をつきながら言う。
「ゴミなんだから当たり前じゃないですか」
「あるぇ? 我はこれでも一応元魔王だよ? もてなされる側だと思っててもおかしくない重要な客だよ?」
「だまりなさいさもなくば首を切り落としますよ?」
「……」
イリスならやりかねないと思ったのだろうか、魔王は黙った。
「さて、それでは今日から早速取り掛かっていただきますので、よろしくお願いしますね」
「うん、わかったー」
「うむ、了解した。」
魔王の、パパとして、先代としての教育生活がスタートした。
「……で、我は一体何から手をつけ始めれば良いのだろうか・・・」
一人、いや一体のメイド服の人形が突き当たりが全く見えない廊下を歩きながらつぶやく。
「……ま、きっとイリスもフォローしてくれるし、なんとかなるだろう」
そう言うとメイド服の人形こと魔王は、メイの部屋へと足を進めた。
年頃の(といっても見た目だけで実際は成人している)メイにはやや似合わないと思われる部屋の入り口の大きな扉をくぐり、その部屋に足を踏み入れる。
そこには、
「遅いですよゴミ。予定を三分ほどオーバーしています」
イリスがいた。しかも黒スーツに身を包んで、さらにメガネまでかけている。
「……イリスさんイリスさん」
「なんですかゴミ」
「コスプレ、好きなの?」
「……っ!?」
その魔王の一言で顔が一気に赤くなるイリス。
「コスプレってなんですか? パパ」
メイはやはりというべきか、コスプレという単語を知らなかったらしい。
「あー、イリスさん?」
「……なんですか?」
「大変申し訳にくいのですが……」
「早く言ってくださいっ!」
「写真、撮られてますよ?」
「……っ!!?」
顔が赤くなるまでの時間が先ほどの比ではなかった。
「だ、誰ですか!? どこにいるんですか!?」
真っ赤になりながらもイリスは尋ねる。
「……勇者が高速で移動しながら魔法使ってピント合わせて撮ってます……よ?」
「ゆ、勇者さんーーー!!??」
結局その日はメイに魔王としてのノウハウを教えることはなかった。
代わりに、イリスの、魔王と勇者への説教が一日中続いた。
「……あの……」
「……? なに? イリスさん」
「……写真、焼き増ししてくれませんか?」
「今度はちゃんとした機材をそろえて撮ってあげるよ」
「あ、ありがとうございますっ」
久しぶりに書くと作者ですら微妙な設定を忘れることがありますねっと。
そしてやっとこの機能に慣れてきたところかな?
ああ、早く完結させたい。